リメンバーおにぎり大河『花燃ゆ』総評再録・前(武者)

『花燃ゆ』総評 八大地獄・前編

 2015年末、武将ジャパンに掲載したものです。あちらでは非公開となりましたので、再掲します。
 実はこの時点で、明治維新150周年と重ねて幕末大河を作ったら、駄作間違いなしだと予測していました。それは的中しました。それどころか、2019年はさらにひどい出来になり、2021年にもおそろしい運命が見えてきた。戦慄としか言いようがない惨劇です。
 もう、大河ドラマは戦国時代以前だけでよいのではないか? まともなものは海外のVODに期待するしかないのか? そもそも大河は、2030年に存在するのか?

 そう暗澹たる気持ちになる、せわぁない総評。誤字脱字等を修正しつつ再掲します。もう過ちは繰り返したらいかんのじゃけえ、のう!

リメンバー毒おにぎり、ノーモアスイーツ大河

 こんにちは、武者震之助です。おにぎり大河の本年でしたが、今年の一皿は皮肉にも「おにぎらず」だったそうです。

 さて、今世間には『真田丸』の風が吹いています。公式SNSアカウントの開設だけではありません。時代考証を担当する戦国研究者がツイッターで作品についてもつぶやき始め、ゲームメーカーの老舗にして最大手コーエーテクモも協力を表明。戦国に関わる者たちが続々と名乗りを上げています。ご当地はもちろん、あまり関係ない土地ですらのぼりが立っているという報告も。
(※加筆:そもそも真田幸村死後400年のアニバーサリーイヤーは、2015年。どうして一年後に倒されたのか?)

 一年前のことを思い出してみると、本作に関してそういうことはあったかというと、ありませんでした。むしろ逆風、沈没船から逃げるネズミのような素早さでドラマから遠ざかる専門家の影がチラホラと感じられました。その道のプロであれば、この作品はまずいと危機感が働いたのでしょう。郷土史家がNHKからオファーを受けたが断った、という話も聞こえてきました。
(※加筆:群馬編は、逃げられそうにない人を集めていましたっけ。長州研究第一人者は、むしろ批判するブログを更新するという……)

 放送開始前から失敗は予見されていたわけで、こうして逃げ切った方は賢明でした。今にして思えば、踏ん張る踏ん張らない以前に「おまえはもう死んでいる」状態だったのでしょう。

 昨年は実施した事前予測の答え合わせですが、今年は実施しません。全て当たっているし、当たっていないと言えます。私は駄作になることまでは予測できましたが、ここまでひどいとは流石に予測できませんでした。なぜこうなったか? 分析するべきだと判断しました。

 それではここから、本作を貶めた本当の悪は何か。拙いながら推理することにしました。名付けて「『花燃ゆ』八大地獄」。本作を炎熱地獄のように燃え上がらせた要素を八つあげていきたいと思います。

◆等活地獄「地方の声は捕らぬ狸の皮算用なのか?」
◆黒縄(こくじょう)地獄「減点はあれど加点要素にはなれない出演者たち」
◆衆合(しゅごう、しゅうごう)地獄「幇間マスコミ」
◆叫喚地獄「スカスカのスイーツ狙い、初動を破壊した広報担当者」

等活地獄「地方の声は捕らぬ狸の皮算用なのか?」

 本作最終週、こんなニュースがありました。
◆「花燃ゆ」終わる~地方創生に暗い影 http://www.data-max.co.jp/271215_12_dm1934/(現在リンク切れ)

(引用)
 安倍総理は地方創生を掲げて景気浮揚に必死に取り組んでいるが、「花燃ゆ」が低視聴率で終わったため、お膝元の観光ブームに暗い影が漂うことになった。 籾井会長の今の心境は、『かくすれば(花燃ゆを放映すれば)かくなるもの(低視聴率になるもの)と知りながら已むに已まれぬ大和魂(お友達付き合い)』ではないだろうか。籾井NHK会長の責任は重いものがあると言えよう。
(引用ここまで)

 そしてこちらも。
◆視聴率ワースト危機『花燃ゆ』 井上真央が後始末させられるhttp://news.livedoor.com/article/detail/10947980/(※加筆:思えばこのドラマから数年間、井上さんはキャリアが停滞しましたっけ)

 あくまで個人的な意見ですが、これはちょっと防府側が甘い気がしました。そもそも美和の人生をたどれば防府が出てくることはラスト1、2話と想像はつくわけです。確かに舞台にならなかったことはひどいと思いますが、たとえ舞台になっていたとしても、大河観光は大赤字を出していたことでしょう。

 ただし、脚本家の小松氏には前科があります。『天地人』において、原作にも出ていて当初当然出ると思われていた前田慶次、最上義光らをスルーし、兼続人生最大の見せ場である長谷堂合戦をただのキャンプファイアにした、そんなやらかしが過去にあります。防府は見通しが甘かったと先ほど書きましたが、この件を考えるともう小松氏の時点で駄目だったと言わざるを得ません。大河ファンならば小松氏の前科にもう一件加わったことを、忘れないようにしましょう。
(※加筆:黒島結菜さんと大島優子さんを救った『アシガール』はえらかった)

 これを読んだ方のコメントには、「地元が大河に口を出す方がおかしい」というものがありました。今回だけではなく、「地元民が大河で地元の英雄を悪く描くなと抗議したため、大河がどんどんおかしくなる」とか「誘致合戦の過熱が大河をつまらなくしている」といった意見が定期的にあがります。女性視聴者を意識しているから側室が出せない、隣国に配慮して朝鮮出兵を描けない、感情的で史実と違うだけでブチ切れて文句をつける武者震之助みたいな了見の狭い歴史オタクが重箱をねちねちつつくから駄目、という意見もありますな。

 結論から言うと、これについてはイエス・アンド・ノーではないかと思います。
 否定する根拠は『花燃ゆ』を見ればいいじゃない、で終わります。ファンが多く地元で愛される長州の志士たちを楫取の引き立て役の雑魚として描く! 群馬で今も崇敬される寿を無茶苦茶に描く! 女性視聴者の嫌いそうな要素を集めて煮詰めたようなヒロイン美和! あからさまなアドビフォントや考証なんてしたかどうかあやしい衣装ッ!
(※加筆:このあと、一部朝ドラや大河でも同じミスをするのを目撃する羽目になるなんて思いたくなかった) 

 ここまでの地雷を、視聴者のことを考えたら設置するわけがない。視聴者の神経を逆撫でするか、あるいはそうしないかは、制作者の良心、プライド、誠意任せです。そんなもの何ソレおいしいの? というスタッフが救っていることは、今年十二分に証明されたと思います(ただし二年前につけられたクレームを真に受けた結果が今年というのはおそらく黒。これについては後述します)。

 じゃあイエスはどういうことか? 大河が観光に影響するなんて時代遅れだとは言い切れないのです。
 今年九月、会津若松城下、会津祭りでのこと。八重の衣装に身を包んだ綾瀬はるかさんがパレードの車に乗り、笑顔で笑顔を振りまいていました。
◆「八重」笑顔の出陣 会津まつり藩公行列に綾瀬さん | 県内ニュース | 福島民報 https://www.minpo.jp/news/detail/2015092425522(※加筆:綾瀬さんは、このあとも会津まつりに参加。「はるか」という桜を会津若松城に植樹しました。会津まつりには、子役時代の鈴木梨央さんも参加しています。『真田丸』の出演者や時代考証担当者も、草刈正雄さんはじめ、上田真田祭りに参加するようになりました。現松平家当主も、『八重の桜』には感謝しています。一方で『西郷どん』は、現島津家当主が苦言を呈する事態に。愛は、反応を見ていればわかります)

 祭りの参加者はは18万3000人と過去最高を記録しました。放映から二年経っても、大河は人を動かすコンテンツなのです(ただし会津は観光地で、中でもこの祭りはもともと動員数が多い点には注意)。また『八重の桜』が制作された理由に、震災以来観光産業に打撃を受けた会津地方を救うというものもありました。その点では『八重の桜』は仕事を果たした、優等生的作品と言えます。

 ここで補足を。『あまちゃん』の久慈市、『八重の桜』の会津地方、ともに震災ではインフラ面では深刻な被害を受けていないため、震災復興にはふさわしくないのではないか、という意見を見かけました。インフラが深刻な被害を受けた地域では、ドラマを放映する程度では復興の手助けになりません。被害が比較的軽微で、観光業を活性化すれば復興の目的が達成できる地域だからこそ、久慈市と会津が取り上げられたのだと思います。
(※加筆:反対に、ヒロインルーツから福島削りをされたのが2018年朝ドラ『まんぷく』)

 「だからといって、そんな地元の都合で大河をねじまげられては困る!」と思う方もおられると思います。しかし敢えてここで、地元の人に指をくわえてみていろ、黙れと言うことは大変失礼だし、大河にとってよいことどころか悪いことばかりですだと主張させてください。

 想像してみてください。地元の歴史をコツコツと積み重ねて調べている郷土史家の前に、大河スタッフがどかどか踏み込んで捏造の歴史を日曜八時からバラまいたせいで「あんなつまらない奴の研究をしているんですかぁ?」と言われたりして、いちいち訂正しなければならなくなるということを。そんなことをされたら一言言いたくもなりませんか。

 そしてこうした郷土史家をないがしろにすることは、大河のクオリティを確実に落とします。誤解されている方もいると思いますが、郷土史家は「地元の英雄を絶対に格好良い超人に描かなければいけないクレーマー集団」ではありません。そういうのはむしろフィクションの像を信じているファンでしょう。むしろ誤りを正すいわば「道案内の役目」も担っています。『八重の桜』では会津のマイナス面もたくさん出てきましたが、あれは脚本の山本氏が捏造誇張したものではなく、郷土史家が「会津にも反省点はあるのではないか?」と研究分析した結果をふまえたものです。
(※加筆:会津戦争死体埋葬論に終止符を打ったのも、会津の郷土史家研究の成果。一方、山口県は歴史研究のブラックボックスが存在しているとの指摘がある)

 郷土史家が作品のクオリティを高めることはあっても、逆はありません。むしろ知られざる歴史の姿を、視聴者に提供してくれるのです。

 それなのに本作は、スタートから郷土史家の意見を丸無視。地元では2018年という明治維新百五十周年の年に狙いを定めていたのに、3年も前倒し。
(※加筆:2018年が長州ならば、あの薩摩大河もなかったかもしれないのに……)
長州という幕末最高難易度の素材なのに、あまりに時間がなさ過ぎました。しかも地元が主役に長州ファイブを提案しても、女性でなければ駄目と断る。それでは伊藤博文夫人・梅子はどうかと提案しても断る。松陰の妹なら寿がよいと折れて提案しても、断る。地元の道案内を無視して、軽装ハイヒールで登山をおっぱじめようとしたようなものです。ここまで地元の意見を無視するならば、長州を題材にする必要はなかったのではないかと思います。そしてこの結果ですからね……本作の舞台になった土地の方が気の毒でなりません。

 しまいにはこんなことまで書かれる始末ですからね。

◆長州支配これ見よがし、「花燃ゆ」歴代最低視聴率に http://agora-web.jp/archives/1663863.html

まとめ
● 大河に観光集客効果は健在。地元が期待するのも仕方ない
● 大河スタッフの全員が地元に配慮するほど誠実ではない以上、地元の圧力があるとは言いがたい。むしろ圧力を感じて真面目に郷土史に向き合うスタッフなら最低最悪の駄作回避はできるのだからよいこと
● 郷土史家の研究、地元の期待を裏切って突破するようなことをすれば、かえって傷は深くなる!
炎上度:★☆☆☆☆(煙草の消し忘れレベル)

黒縄(こくじょう)地獄「出演者、引き算はあれど足し算はない」

 まずはじめに言い切りますが、今年の大河出演者の皆様は被害者です。あまりに酷い脚本でどう演じたらよいか戸惑う。史実との乖離が酷すぎて戸惑う。見せ場と思われるところがなく戸惑う。同じ人物なのに行動原理がころころ変わって戸惑う。どう演じたらようか困っていることが、インタビューや演技そのものから伝わって来ました。例えば井伊直弼をオファーされたら、役者さんは桜田門外の変でどう散るか考えると思うんですよね。まさか渡された本に、
「玄関から出て行く直弼。雪の上に散る椿、ナレーション。桜田門外の変終了」
 なんて書いてあるとは思わないでしょう。あったんです、今年は、それが……。

 今年の大河出演者は、「引き算はあっても足し算がない」と言えたと思います。

 まず出演者の追加がない。籾井さんはご存じではないかもしれませんが、大河は人の命が軽い時代を舞台にすることがほとんどです。したがって、主人公の周囲で人がたくさん死んでゆきます。夏を迎えるころには目玉キャストも少なくなってしまいます。そうなると新キャストを追加するわけですが、どうしても主人公の子ども世代になるためか、若手ばかりとなります。これは長丁場である大河の宿命と言えましょう。毎年視聴率が夏頃から落ちてくるのはこうしたことも関わりがあるでしょう。

 この夏枯れ現象が今年は特に酷かった……公式サイトで追加キャストが発表されても、せいぜい一瞬だけの出番であったり、どこか訳ありの役者さんであったりしました。目玉キャストとして紹介されるにが、お笑い芸人、アイドルグループ、格闘家、モデルになったあたりから「あ、本作、出番悪すぎて避けられているんだな」と察せられました。つまり、どんどん目玉キャストが減っていく(=引き算)のに、それを埋める追加(=足し算)がないのです。

 さらに新人にとっては何も得るところがないのに(=足し算)、悪印象だけ与えてしまう(=引き算)ドラマでした。典型例が雅(高杉晋作)の妻を演じた方でしょうか。
(加筆:黒島さんはNHKの『アシガール』、『スカーレット』で挽回。おめでとうございます!)

 以前から大河は拘束時間のわりにギャラが少ないことで有名でした。しかしデメリットを上回るメリットがあると言われておりました。役によっては長丁場をベテランと共演できて勉強になる、お茶の間に顔が売れる、など。こうした出演することによるメリットがまったくないのが本作でした。

 そして作品自体にとっても、役者の演技が質を下げることはあっても(=引き算)、上げることはありませんでした(=足し算)。確かに本作で新境地や名演技を見せた方はいます。役名で言うと、寿、辰路、銀姫(毛利安子)の方々は役の幅が広がったでしょう。ただしあまりに脚本がお粗末過ぎて、彼女らが演じた人物は魅力的に思えませんでした。北大路欣也さん、長塚京三さん、三田佳子さんらベテランがよい味を出していたのも確かです。しかしベテランがうまいのはある意味当然です。彼らは自分の仕事をきっちりこなしてはいましたが、加点要素のある演技ではありません。もっともあの脚本では無理だったと思います。そんなベテラン勢の中、壇ふみさんはどうしちゃったんだと思いますが、あれも脚本のせいでしょう。
(※加筆:このドラマと、『わろてんか』、『まんぷく』、そして幕末最低大河薩長同盟のお相手『西郷どん』あたりに出てしまった方は、あまりに引きが悪くて悲惨でした……NHKだからってホイホイ引き受けてはいけないのかもしれない……)

 そんな逆境の中でも頑張った方がいます。主演の井上真央さん、針のむしろに座る一年間をよく耐え抜きました。伊勢谷友介さん(※加筆:と、思っていたら2020年、大麻所持で逮捕)、高良健吾さんは脚本ではなく史実の松陰、高杉像をたよりに努力していた跡が見えました。この二人はインタビューや番宣でも座長である井上さんをかばっていました。この三人に関しては演技の質よりも、メンタル面でガッツがあったと思います。

 と、全体的に役者が被害者であると書いてきました。しかし、ドラマの質を決定的に下げた方についてはやはり触れねばならないでしょう。ここは役者名で書くと荒れるので、役名で書かせていただきます。

 津田梅子さん役の方(※加筆:大山捨松でなく津田梅子というあたりに、会津嫌いが出てますよね)、落語家の方。さんざん叩かれていたお笑いやアイドルの出番に関しては、個人的に台詞がないからそこまで気になりませんでした。しかしこの二人は、ここが自分の出番だとばかりに力を入れすぎて、悪目立ちしてしまいました。無駄なノイズになっていました。

 久坂玄瑞役の方は退場回でさんざんきついことを書きました。今でもその評価は変わりません。朝ドラの時点で指摘されていた滑舌の悪さを改善しないまま大役に挑み、緊迫した場面で「たかちゅかささまー」と繰り返したのは一体どういうことでしょうか。松陰、高杉役の方のように史実と役の乖離に悩んで内心腐っていても表には極力出さない共演者がいたにも関わらず、インタビューや番宣の場で不満がチラホラ見えたのもマイナスです。滑舌は『精霊の守り人』までに何とか改善して下さい。
(※加筆:2020年、まさかあんなことになるなんて。大河で不倫、現実でも不倫。なんなんでしょう……)

 そして楫取役の方。実質主役のような目立ち方なのに番宣などで表に出ることはなく、うまく逃げているような感じがしたものです。演技指導や脚本が悪かっただろうとはいえ、ずっと若作りで「やれやれ」みたいな鼻につくかっこつけ演技の繰り返し。数パターンの表情のみで一年間押し切ったのは、やる気がなかったからでしょうか。下手というより、露骨な手抜きを感じました。
(※加筆:放送翌年、日本会議研究本がブームに。楫取の子孫は、日本会議の重鎮でした。ブームを先取りしていたんですね)

まとめ
● 役者は被害者であることは間違いない。それでも踏ん張った方には幸いあれ。キャリアのプラスになるとは思えないのですが……
● 中盤以降、明らかに出演者に逃げられているでしょう
● 役者もまた被害者だが、プロ意識の欠如でただでさえ低い本作のクオリティを下げた方は反省していただきたいところ
炎上度:★★☆☆☆(天ぷら鍋から火柱)
(※加筆:数年後、『まんぷく』という朝ドラで、ヒロインが火に天ぷら鍋放置をかましているのを見た時は驚愕しました)

衆合(しゅごう)地獄「大河に脚を引っ張るだけ……真に受けては駄目な助言ばかり」

 『花燃ゆ』最低視聴率報道で、久々に引っ張り出されてきた『平清盛』。そのタイトルを見て思い出したのは、いかに『平清盛』と『八重の桜』のマスコミバッシングが酷かったかということです。この二作、特に前者はマスコミのおもちゃかと言うほどに叩かれまくりました。後者は出演者の演技が高評価を得、作品そのものも国際エミー賞最終候補になるなど、高い評価を受けています。一方、前年の『軍師官兵衛』は、私も含め大河ファンやブロガーからは低評価、視聴率も戦国もの大河最低基準だったにもかかわらず、マスコミの報道では一応成功作扱いされているようです。何に守られているか、鋭い方ならピンと来たかと思います。このようにマスコミの評価というものは、作品を見ずにウィキペディアから引っ張った数字と、業界内のフィルタをかけたものであって、あまり参考にはならないということです。

 来年も既にこんな記事が出ていますが、演技力を無視して出演者のスキャンダラスな面をことさら取り上げるようなことをしどうなると言うのでしょうか?

◆完全に色モノ大河!「真田丸」の愛之助と山本耕史がエグ過ぎ!?
http://www.asagei.com/excerpt/44022(※加筆:残念、色モノというか出演者が燃え盛ったのは2019年だ。2016年と2017年は良心的でした)

 これは本年だけではないことですが、毎年毎年大河が低迷するたびに出てくる「テコ入れのために脱ぐ!」「濡れ場を投入?」とか書くのもいい加減にして欲しいものです。

 ネットでいくらでも猥褻動画が見られる時代なのに、一瞬のヌードを求めて大河を見続ける人がどれだけいると言うのでしょうか? ライターさんの中学時代はテレビで映る一瞬のエロがお宝だったのかもしれませんが、今はもう2015年なんですよ。今年の主演女優さんが「脱いでもよかった」と言ったとか何とか、ただでさえ苦労している彼女をネタにゲスなことを書くのはいい加減にして欲しいものです。そんなにエロ+歴史が見たいのならば『ゲーム・オブ・スローンズ』でもレンタルしたらいかがでしょうか?

 エロに限らず、テコ入れのためにああしろ、こうしろと適当に書き飛ばす記事がいい加減です。今年はテコ入れもしようがないほどですからその手の話はあまり見かけませんでした。が、一昨年の『八重の桜』で「ヒロインが目立たない」「気が強いヒロインは受けない」「負け組なんて見る気がしない」「郷土料理をヒロインに喰わせろ」と書いていたライターの皆様方には猛省を促したいところです。
(※加筆:綾瀬はるかさんは、その身体能力と演技力の高さが認識されるようになりましたね。八重で一皮むけました)

 今年の序盤で既に指摘しましたが、この手のいい加減な過去の飛ばし記事を真に受けているのではないかと思われる部分が今年はありました。あれを真に受けたら歴史ものとしてはぶっ壊れると思わない作り手がそもそも問題なのですが。

 今年は問題の根に切り込んだツッコミがないこと、提灯記事が多いことも気になりました。(※加筆:2018大河は提灯どころかLEDフル稼働クラス)
 低視聴率が明らかになってからこそ叩き記事が出ましたが、今年の序盤は礼賛記事ばかりでしたからね。「幕末男子の作り方。」なんて始まる前からおかしいと気づきそうなものでは?

 その低視聴率叩き記事も、主演女優の責任は僅かなのに、彼女を執拗にバッシングし、おもしろおかしく結婚できなくなるだの、キャリアも危ないと書いた記事ばかりでした。内容が悪い、歴史歪曲について書くものもあったけれども、ごく少数。SNSで拡散された面白い猫の写真でも記事を作る昨今のメディアが、ファンの間では共有されていた楫取無双問題を完全にスルーしたのは統制があるのでしょうか? 今からでも遅くはありませんので、本作制作の背後にあるきな臭い問題にはどこか切り込んでいただきたいところです。
 
まとめ
● 役者叩き、視聴率分析しかしない上に、フィルタまでかかっているマスコミの大河評価には正直疑問
● 毎年テコ入れにヌードは入れないといい加減学んでください
● 楫取無双スルーの不思議
炎上度:★★★☆☆(通報しないと危険を感じる)

叫喚地獄「スカスカのスイーツ狙い、初動を破壊した広報担当者」

 『真田丸』のポスターやビジュアルを見ていると、あまりの格好よさに安堵のため息が漏れます。しかしおそらく、『軍師官兵衛』を見てからならばそこまで感動しなかったでしょう。

 今年はビジュアルコンセプト、広報があまりにひどかったんですよ……。
 おにぎりを握って屋根の上にヒロインとイケメン四人がいるメインポスター! 四人のイケメン個人が、ヒロインにビンタされたり膝枕されたりヨシヨシされて花をしょっているポスター! 上目遣いにぎとぎとした大奥編ポスターも、不倫カップルが未来を見つめるポスターもひどいものでしたが、ともかくあのとんでもない初期ビジュアル戦略が、本作の初動を破壊したとしか言いようがありません。イケメン大河、セクシー大河、幕末男子の育て方、もゆるん、女性記者限定試写会……全部駄目だ! 全部壊滅的だったよ! わざとやっているのか、もしかして逆宣伝!?

 そもそもこうした宣伝戦略が狙った女性視聴者とは何者なのか、どんな層なのか、これがわかりません。若い女性狙いにしては、花をしょったイケメンとヒロインっていつの時代のセンスですか。そもそも女性大河視聴者というブルーオーシャンは存在するのかどうかもわかりません。『篤姫』狙いの『江』が無残にすっこけた時点で、そんな不確実な層を狙い撃ちにするのは愚策と悟るべきでした。
(※加筆:2020年、そういう層は『北の不時着』に向かいました。若者はそもそも見ない)

 それに、もし本当にティーン女子を狙い撃ちにするならば、ヒロインが男装して新選組に潜入するくらい、大胆な設定にでもしなければいけないでしょう。海外ではタイムスリップ、ファンタジーものが若い層を中心に受けています(中国の『宮 パレス~時をかける宮女~』、『宮廷女官 若曦(ジャクギ)』、韓国の『屋根部屋の皇太子』など)。以前私が紹介した『TUDORS』も、制作者は歴史をネタにしたソープドラマだと言い切っています。そのくらい大胆になれば新たな層を開拓できるかもしれませんが、それができるのは時代劇枠が多い状況であれば、です。枠が一つしか無い大河では自殺行為です。本当にティーン女子特化型時代劇が作りたいのであれば、枠を増やしましょう。
(※加筆:2020年、若年女性層は『100日の郎君様』、『陳情令』あたりに向かいました)
 大河は「本格的歴史劇」の枠を一つしか持っていない。ならば冒険はできません。女性向けに力を入れすぎて男性視聴者を振り落とすよりも、老若男女楽しめるものを作る王道を歩む戦略しかないに等しいのです。

 と、ここまで書いて思ったのですが、広報戦略のミスもあるとはいえ、この勘違いしたスイーツ路線を突き進むと決めた上層部が全て悪かったのでは。やはり本作が闇は深いようです。

まとめ
● イケメン大河、セクシー大河、何を喰ったらそんなもん思いつくのか。あのポスターデザインを指定されたデザイナーを想像するだけで泣ける
● 大河視聴者の新規開拓できるブルーオーシャンなどもはやないと思い知れ
● 炎上度:★★★☆☆(物置小屋が火事になった)

 後編は、大叫喚地獄、炎熱地獄、大炎熱地獄、無間地獄と続きます。もうしばらくお待ち下さい!

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