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『ゴールデンカムイ』24巻 あれやこれや

 武将ジャパンに尾形の生い立ちその他単行本ごとに書いていましたが、個人のnoteに移行します。マガジンで全文読めますが、ネタバレと深すぎるもののみ、有料です。

菊田特務曹長と有古

 今回の表紙は菊田と有古。菊田の二丁拳銃はかっこいいといえばそうなのですが、命中率は低くなります。見栄えのせいで採用されがちですが、実戦的ではないのでしょう。そもそも片手で撃てる拳銃という武器がそこまで必殺の性能でもなく、幕末は拳銃装備でも日本刀で殺害された例が多数あるわけですね。坂本龍馬はそこがちょっと甘かったですね。拳銃で確実にできることは、ずれないようにしての自殺です。拳銃でいきなり射殺する奴はちょっと特殊。はい、初登場でやらかした鯉登の必殺率の高さは覚えておきましょうね。
 裏表紙は有古。肌色にトーンを使う人物は彼と鯉登のみ。色が白いことが貴人や美形の証とされてきた。そして蝦夷と隼人は北と南に。いろいろと日本人とは何か考えさせられる秀逸な設定だと思います。
 裏表紙の時計台もいいですね。ひとめで札幌とわかります。

アイヌの子が誕生した

 谷垣とインカラマッの娘が誕生! おめでとうございます、おめでとうございます! ここで、こんな疑問に答えておきます。
「この娘はアイヌなの? 和人なの?」
 アイヌになるかと思います。人種というのは100%純血ということはまずないし、そもそも調べることもできないし、純粋だのなんだの言う時点で差別的ということです。この子がアイヌの母の誇りを胸に生きていけば、アイヌになる。血統的には和人となりそうな稲妻強盗とお銀の子も、フチのコタンでアイヌとして生きていけばアイヌです。人種のこういうことはとてもややこしいから、くれぐれも侮辱しないでください。アイヌがらみは近年本当に人種差別がひどくて、胸が痛くなります。
 で、Twitterを見ていると。海外の『ゴールデンカムイ』ファンにもアイヌのこうした状況が共有され、理解が進んでおりまして。漫画としての存在意義を感じます。大英博物館の展示カタログも読みました。どういうところで評価されているかわかります。ぜひとも手に取ってください。

少尉と軍曹の叛乱

 英語圏の軍隊ものを読んでいると、”mutiny”という概念が重々しく立ち塞がります。明らかに精神に異常をきたした上官のもと、部下はどうするか? やむなく反旗を翻すと、この概念を突きつけられてしまう。歯向かうことは命がけです。軍人の叛乱は重い。軍法会議で死刑宣告まっしぐらなのです。

 谷垣とインカラマッを見逃し、警備していた兵卒も言いくるめた。中尉という上官の命令に叛いた時点で、もう鯉登と月島は危うい船に乗りました。
 叛乱という局面で上官らしさを出す鯉登ですが……この先はややこしいので有料分に持っていきます。

明治末の物売り

 この漫画は、どんだけ時代考証がんばっているのでしょうか。大道芸をする物売りが出てきます。乳首への執着はさておき、飴売りがおもしろい!
 昔の日本は、何か売るにせよエンタメ性が大事でね。紙芝居見せたり、曲芸や撃剣を見せる。没落士族が撃剣を見せるなんて悲しい大道芸もあったもんです。ガマの油売りが有名ですかね。食べて命が危うくなるほど危険な物売りもいたので、親としてはハラハラしますが、それでも子どもはやめられないもんですよ。

外輪式蒸気船でのバトル

 しかも白石が『IT』のペニー・ワイズのパロディもやらかす。野田先生はキングが好きなんだろうなぁ。江渡貝くぅんの家庭環境、キングの作品みたいだったもんね。
 外輪式蒸気船でのバトルがこの巻のみどころ。こういうのがやりたかった気持ちはわかる……アメリカンだなぁ。わかるぜ、わかる! アメリカの話だと、こういう船での死闘がみどころですね。おすすめはG・R・R・マーティン(‘『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作をまだ完結させない極道作家)の『フィーバー・ドリーム』ですね。あー、こういうの好きだわ。
 日本でも蒸気船使って。北海道ならではの要素を入れて。そういうことを思いついたら全部ぶち込みたい気持ちはわかる。あ、ところでNetflixかHBOは、まだこの漫画のドラマ化権買ってないんですか? 海外にも受ける要素山盛りですよ!

 『鬼滅の刃』といい、この漫画といい。海外映画、小説、ドラマの影響が強い作品が増えていてうれしい限りです。日本での知名度問題か、あんまりそこにツッコミ入らないような気がします。
 とりあえずスティーブン・キングを読もう!

黒猫と労咳、そしてあの剣士

 杉元の珍しい過去も出てきます。労咳にかかった父と黒猫です。ここを見て、ピンとくるものはありました。
 土方歳三と杉元は、何か通じ合うものがある。杉元のモチーフとして、沖田総司があるのかもしれない。沖田総司はフィクションで人気の出る、天才剣士弟属性美少年にされていますが(『鬼滅の刃』の時透無一郎枠)。史実は杉元に結構近い。

・短気で結構キレやすい
・怒ると一直線に突き進む、義理堅い
・当時としてはなかなかの長身! これは杉元もそう
・先天的な反射、鋭い突き、鬼気迫る攻撃が持ち味。そこは永倉新八や斎藤一とは異なる
・子どもっぽく無邪気なところがある
・土方のようないかにもな美形ではないけれど、立ち姿や仕草がきれいだった
・労咳、そして黒猫のエピソード(この話は創作ですが)
・出身地

 そういうことなら、土方と気が合うだろうねえ。そう納得できるところではあります。

切り裂きジャック

 そして切り裂きジャックまで出してきた。欲張りだなぁ。
 切り裂きジャックは、あと少し早かったら冤罪で誰かが適当に吊し上げられなんちゃって解決。もう少し後だったら解決していた。そういう事件だと思いますが。この事件もアツいですね。ブラッドリー・ハーパーの『探偵コナン・ドイル』、おもしろかったですよ。被害者に焦点を当てた研究も進んでいるとか。
 またここで、土方組の変装が細かい。尾形の孝行息子は皮肉にもほどがある。何かの願望? いやいやいや!

中央のスパイ、第七師団の破滅

 菊田が中央のスパイだと判明。思えば月島が尾形を中央に売るつもりかと問うてから長く経ちましたが。第七師団の結末も見えてきました。
 鶴見はもう綻びが見えてきている。鶴見の動機が個人的な復讐由来だとわかれば破滅しかないことを、月島と鯉登の会話で見えてきました。月島は指の骨を目撃してしまっている。油断して、何か見せてしまった可能性は高い。
 鯉登は「満州鉄道」という単語だけで、誘拐にまつわるからくりを解いてしまったほど、実は推理力抜群です。尾形も想定外でしょう。月島が与えた断片から真相にたどり着ける可能性がある。
 鯉登はバカなボンボン扱いをされていますが、これが結構な騙しになっておりまして。カードとして強すぎるから、登場が遅かったのだとは思います。
 
 鶴見は中央に叛乱している。発覚すれば皆まとめて銃殺ものです。鯉登の場合、父とまとめてそうなりかけない。それから逃れるためには、鶴見の首でもみやげにするしかない。鯉登と月島が手を組んで鶴見殺しに向かう様なんて見たくない人が多いのでしょうが、生き残るためにはそうするしかないのです。

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『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタでより楽しめることをめざします。

『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタで…

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