石村博子『ピリカチカッポ(美しい鳥) 知里幸恵と『アイヌ神謡集』』


第四回ゴカム読書会12-1月開催告知
課題書: 『ピㇼカ チカッポ(美しい鳥) 知里幸恵と『アイヌ神謡集』』
開催期間:12月15日~1月31日
第四回GKM読書会タグ:#gkmbookclubDecJan2023

 参加エントリです。


 恥ずかしながら『アイヌ神謡集』は未読で、読まねばならないと決意を新たにしました。

彼女の妹たちはどうなったか?

 これは第四回ゴカム読書会12-1月開催告知課題図書として読みました。確かにこれはゴカムファンは必読でしょう。アシㇼパと同じ時代に生まれたアイヌの少女がどう生きたのか。その実像を知る上で、避けて通ることのできない一冊といえます。

 この本は、彼女らが受けた差別を描いてゆきます。まだ二十歳にもならぬうちに世を去った彼女は、どんな扱いを受けていたか。
 
 彼女とアシㇼパを対比させることで『ゴールデンカムイ』があえて書かなかったことが読み取れるのです。彼女の人生やアイヌの置かれた状況を知らずして、どうして『ゴールデンカムイ』を読んだと言えるのだろうか? そう思える一冊です。

滅びゆくものとして扱う無知と残酷

 この本から学べること。それは『ゴールデンカムイ』の省いたものだけではなく、配慮でもあります。アイヌは滅びるもの――政府や和人は武力行使してアイヌを滅ぼそうとしたとは言い切れません。最終回で美化されていた榎本武揚の盟友・黒田清隆は武力でアイヌ移住を促進してはいますが、それはさておき。
 なにも悪意だけではなく、文明化してやろうという植民地支配的な正義のもと、アイヌは滅びゆく存在に認定されました。激変する生活環境。土地から追われる。食生活の変化による栄養失調、そこに襲いかかる伝染病。搾取による貧困。そうやって痛めつけて追いやっておいた様を『ゴールデンカムイ』が十分描いたかどうかは疑念は生じますね。

 しかも最終回で、金田一京助が好意的に描かれている。確かに彼の貢献は無視できない。けれどもアイヌを滅びゆくものであるからこそ、言葉を集めたということを本書は書く。
 そこを踏まえると『ゴールデンカムイ』にはやはり納得できません。

 アイヌは滅びゆくものだからこそ、せめてその文物を博物館のガラスケースにしまう。人が生きる場とは異なる国立公園として整備する。まるで絶滅危惧種の保護を讃えるような金塊の使い道だと改めて思う。

 かつて滅びゆくものとして扱われたアイヌの人々が、そういう扱いは嫌だと野田先生に語ったことは確かなのでしょう。ならばどうして現在も生きるアイヌにつながるような終わり方にしなかったのか。『鬼滅の刃』のような今へつながる終わり方にできなかったのか。
 しかも単行本書き下ろしが鶴見の生存と肯定ではまずい。

 アイヌへの差別意識が共有されていればまだしも、日本、ましてや北海道以外はそうじゃない。そんな状況であの作品は危険です。作品を保つためにも、そういう配慮は必要であったはずなのに。なにがどう足りなかったのか、これからも私なりに勉強して考えていきたいのです。漫画のファンならば連載が終われば離れられるけど、現実は、この社会は、そうではないのだから。

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