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2022年新春時代劇『幕末相棒伝』

 ときは慶応三年――将軍慶喜がスナイドル銃で狙撃された。その犯人探査を永井尚志から命じられたのは、なんと土方歳三と坂本龍馬! 二日間というタイムリミットで果たして真相に辿り着けるのか?

NHKもちゃんと幕末ものを撮影できるんだぞ!

 しょっぱなから殺陣が素晴らしい! 向井理さんなので期待しておりましたが、想像以上でした。
 ちゃんと明るいライティングで堂々と殺陣をこなす。鮮やかだし、ちゃんと殺傷力もあるとわかる。向井さんは剣を持って振るっていても美しい稀有な才能の持ち主。こんなに殺陣が決まる役者さんはそうそういない。まさしく眼福でした。
 劇中で土方が「神道無念流だな!」と桂に言う場面がある。対して相手は田舎剣術だと馬鹿にする。これはものすごく重要です。ただの殺陣でなく、流派ごとの特徴を出さなければならない。このドラマではそれを避けていない。向井さんは『麒麟がくる』と本作で別の流派を披露している。これはすごいことですよ! 
 幕末らしい狭い屋内での戦闘もばっちり! 階段落ちもちゃんとこなすしているんですよ! 定番の池田屋でなければ入れる必要はないとは思いますが、敢えて挑んだのでは? NHKはまだまだ殺陣ができると証明されました。ちゃんと『八重の桜』基準までもどしています。これはまさしく、見るお年玉ですね。

 照明やカメラワークも素晴らしい! 華流や韓流時代劇を見ていて最近は羨ましくてたまらなかったところですが、日本には日本の良さがあるんですよね。空気の湿度までうつしとるような。カラッとしていない独特の色合い。NHKは気合いの入った時代劇ではこれを投入します。屋内撮影もライティングに趣があって素晴らしかった。衣装も抜群です。演じる役者さんも所作がいいんですね。龍馬と土方が蕎麦を食べているだけでも眼福でした。

何もかもが上位互換、伝わってくる問題意識

 何の……とは申しませんが。
 土方も。慶喜も。永井尚志も。岩倉具視も。あのドラマと重なるキャストが全員上位互換かつ気合が入っております。どうしてこれでできなかったということは、記憶から焼き消すことにしました。NHK内でも問題意識があったのでは・
 メインの二人は言うまでもなく、伊東甲子太郎も桂小五郎もお見事でした。この世代でこれだけ時代劇をこなせる役者が揃っているというのはよいことです。

 衣装も小道具も撮影技術も脚本も、何もかもが上位互換。NHKは幕末でもちゃんとドラマを作れると証明しました。安心しましたし、局内でも作れることを証明したいという気持ちがあったんじゃないかと思いますよ。

 やっぱり日本の時代劇は捨てたもんじゃない。まだまだもっと、こういうのが見たい! 年明け早々時代劇への愛を再確認しました。確かに設定は吹っ飛んでいるし強引なところもあった。でも、欠点を補って余りある良作でした。もっとこういう時代劇を供給してください、受信料はこういうかたちで使ってください! いいものを見せてくださってありがとうございます!


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