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『水都百景録』を楽しもう 洛陽の紙価貴し

 『水都百景録』にも登場する左思は、「洛陽の紙価を高める」という言葉の由来でもあります。今回はその左思のことでも。

「洛陽の紙価貴し」とは?

 「洛陽の紙価を高める」という言い回しは、本の売り上げが好調という意味です。ベストセラー作家などに使います。
「いやあ、あの先生の本は飛ぶように売れる。まさしく洛陽の紙価を高めたよ」
 こういった言い回しです。
 でも、慣用句になっていて受け止めてしまうけど、引っかかるところはありませんか?

 大河ドラマ『光る君へ』のヒントにもなります。平安時代も紙の価格は無茶苦茶高い。清少納言は紙をもらうと浮かれる。紫式部にせよ、スポンサーなしでは『源氏物語』は書けない。これが重要な要素ですよ!

 なぜ洛陽なのか? 左思の生きていた時代、晋の首都だから。
 紙が高くなるというのは、腑に落ちるようで、不思議かもしれません。それというのも、現代人は出版物は印刷されたものを手に入れます。
 ところが左思の時代は印刷なんてまだまだ先の話。原本を借りるなり手に入れるなりして、写す作業が必要になります。そこで写すための紙が売れる。こうして当時の事情を踏まえることでわかりやすくなります。

 紙すら高級な時代では、こうはいかない。左思の時代は紙、筆、墨が流通していることがわかります。木簡竹簡と比較すれば紙は薄く、情報量が飛躍的に増えます。文明の転換点とも言える時代でした。三曹として知られる曹操、曹丕、曹植、そして建安七子の時代をへて、当時は文学のルネサンスとも言えた時代です。左思はその申し子でした。
 しかし……。

文才よりもブサメンとして有名に

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