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『ゴールデンカムイ』27巻 差別は無知から生まれる

 いよいよクライマックス。結末をしっかり考えて描いている作品では、むしろブレません。この巻は加筆訂正箇所があまり多くないとは思えます。
 谷垣の出番もないから、毛繕いの必要もないし。ただ、全くないわけでもない

差別は無知から生まれる

 アイヌは資源を取り尽くさない。珪藻土を食べるアイヌのことが出てきます。他のアイヌすらそんなことでは和人にバカされるというものの、ウイルクは知恵さえあれば理解できると説きます。これが重要で、和人とその政府がやらかしてきたことは、アイヌの“知恵”を理解していないからこそのことであったとどんどん明かされつつある。
 互いのちがいを野蛮と決めつけて、差別する理由にしてきた。先日、『アイヌ通史』の感想についてマーク・ウィンチェスター氏から指摘されたのだけれども、こういう差異を差別として政策にまで盛り込んだことが、明治政府の“本質”だったのだと27巻を読んで改めて思いました。

 『アイヌ通史』、必読ですよ! ぜひぜひ手に取ってください。

実は加筆が多い鯉登関連

 谷垣の毛繕いが微笑ましいから、そちらにばかり集中がいくところではある。こういうほのぼのとした加筆修正よりも、プロットホールを塞ぐ方が実は大変だと思えます。
 谷垣と並んで加筆修正が多いと思えるのは、実は鯉登がらみ。鯉登についていえば思考回路が独特で、結構すっ飛ばすことが彼らしさゆえに、わかりにくくなってしまう。そこを加筆修正していると思えます。
 
 この巻でいえば、鶴見はきっちり説明するとわかる。ソフィアに「オリガの体内から出てきた弾はあなたのベルダンのものではないよ、もう悩まなくていいよ」という旨を筋道立てて説明します。
 鯉登は、いろいろとめんどくさいのかすっとばす。一応、初登場時の偽犬童を見破るあたりは軽く説明しておりますけれども、エノノカのアイヌ語混じりの言葉を推理した過程はすっ飛ばしている。
 
 鯉登関連でいえば、月島が薩摩訛りをやめてしまった鯉登を疑うところで加筆がなされています(第265話)。じゃあ鯉登は? そう思って読み返してみたら、実は鯉登心理描写が逆に減っていました。本誌よりもむしろわかりにくくなっている。コマそのものは大きくなっているのに、モノローグが全部消えました。
 なぜわかりにくくするのか? これが鯉登の本質なのでしょう。

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『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタでより楽しめることをめざします。

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