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「死んだからって全部チャラになるなんて思うなよ」

なぬー!

このLyricに心臓部をえぐられた私は、自分の中で何が起こっているのか分からなかった。

ああそうだ。これだ。

よく言ってくれた、よく言ってくれたよおにいちゃん。

そのおにいちゃんとの出会いはというと

叙情派エレクトロダブ(言い得て妙)というジャンルのバンド
『あらかじめ決められた恋人たち』feat.『アフロ』の「日々」という曲だった。

本来はUKさんと呼ばれるアコースティックギタリストと『moroha』というユニットで活動しているみたい。
あまり詳しくないおばちゃんなので、長年ファンの方どこか間違えていたらごめんなさい。
そしておにいちゃんと呼んでごめんなさい。
動画を見るまではアフロヘアなんだろうなと勝手に想像していてごめんなさい。

ということで

ヒップホップはあまり聴き慣れていないジャンルだったけれど
バックの耳障りの良いアコースティックギターの美しい音色に引き込まれつつ、終盤に向けて被せてくる感情を剥き出しにしたボーカルのアフロの語り口調にすっかり心を動かされたというわけです。



説明より聴くほうが早いですよね。
通称「あら恋」も大好きなバンドです。

https://youtu.be/GoVtbl2BZ6Q?si=k3mcFhP4h1WIe_An

あの頃は、みんなそれぞれに色んな日々を過ごし不安に苛まれ情報ばかり追う毎日。
そんな中、仕事でありながらも誰かを守る使命感で必死だった私達。
長く険しい道。
そのうち心は打ちのめされ、なす術も無くワクチンを打つ列に腕まくりして並びながら、誰も死なないでとマスクの内側で呟くしかなかった。
日々を生き、生きる為に働き、働く為に人を守らなければいけなかった。
なのに
弱者や高齢者を守らなければいけない、1番先頭に立つはずの仮母は何もかも放り投げてしまい、そして死んだ。
まさにコロナ禍真っ只中だった。
死体に群がる猛毒妹弟に感染対策といううっすい壁もあっさりと崩され
通夜の夜葬儀会場で感染対策を必死で遂行する私達は
「あんたたちは敏感すぎる!!!!何が予防だ!!」となじられ心底打ちのめされる。

感染予防に対する意識がこいつらの世界とは違った。


まるで大島てるのサイトのマップのように
所々でクラスターの炎が出現するのを毎日眺めては
今まで自分達がやってきた事は全て無意味だったのかと項垂れる日々。
自分達は身を削っていたが、仕事や店を失って苦労を強いられている人もいる。
身体は疲労し心は空っぽになり、そんな時に「日々」のMVを見て号泣する。


「まだ世の中にはこんな日常が残っているのか…」

少しの希望を持ち、歯を食いしばって頑張ってみたらより生きるしんどさを味わうことになる。
相変わらずの努力は報われない。
それどころか私自身には
過去の出来事に苦しめられる日々がやってきた。
家族ってなんだ?
親ってなんだ?
私は一体なんだったんだ?
今までの人生でそんなに深く追求したことがなかった問題に私はブチ当たってしまった。


https://youtu.be/7yNkTIVozpg?si=g53fZWH-JDIiYeu4


このMVを見て頭をガーン!と叩かれる。

「死んだからって全部チャラになるなんて思うなよ!」

時間が経つにつれ何度も何度もその言葉が頭で流れては消える。
でも口に出してはいけない。
本当は思ってもいけない。
何故か。

死者に鞭を打つ事になるから…

このMVの家族は、私が家族だと思っていた人間とは全く別物だ。
劇画の表情からは温もりを感じるが
子供達の表情から思いは手に取るように分かる。
他人事ながら忘れられないほど胸が熱くなる物語がそこにあった。

しかし何故だろう。
このワンフレーズだけが私の心に寄り添うのだ。

口に出すことが
自分への懺悔となり希望となる。
怒りは恥ずかしい事ではない。
死にたくなったら「生きてやる!」と叫べ。
自分を誤魔化すのではなく「お前にムカついてる」とはっきり言ってやれ。

だから私は独りで叫んでみた

「死んだからって全部チャラになると思うなよ!謝りもせず逃げやがって!」

そんな事を言う自分が悲しく情けなく思える日もある。
悔しくて悔しくて何もかも投げ倒したくなる。
皿も何枚割ったか知れない。
壊したモノ、人間関係たくさんある。

でも何なのだろう久々に味わうこの清々しさは。

家族だからと甘えやがって!
人を蔑ろにするお前たちなんか「家族」でも何でも無い!
この悪魔!!

と叫び続けてみた。

もっともっとスッキリした。

これだったのか。

先日、夫にmorohaのライブは絶対に行かなくては!と促され
生音を聴く事により、自分を取り戻すきっかけになればいいなとコロナ禍以前振りにライブハウスを訪れた。
後半に差し掛かり立ちっぱなしの身体がしんどくなったので先にライブハウスを出て涙を拭きながら階段を上がる。

「ネクターやりましたか?!」

1人の女性が声をかけてきた。
「ぁあ…残念!今聴いて出てきたんですよ。まだ今はMCやってますから後半戦間に合いますから!」
と泣いてんの見られた?!と急に恥ずかしくなり
「じゃあ、楽しんで下さい!」と足早にその場を去った。

あの人も「ネクター」聴きたかったんだなあ…。

みんなそれぞれに家族がいて
生まれてきた証があり
なのになのに
裏切られたり怒られたり嘘つかれたり
恐怖に怯えて泣き叫んだりして
時間が経つとあんな時もあったのにと切なくなるときもあるけれど
それは全て自分の思い違いだったと気づいた。

その気付いた瞬間を私は死ぬまで(死んでも)忘れない。

この曲の内容とは真逆になってしまうのだが
あれらは家族では無かった。
コロナが人を分断?
いやいや、元々断ち切らなければいけない関係もあったはずだ。
通夜の晩に出された弁当をゲラゲラ笑いながら食べる、仮母とは関係の無い県外から来た卑しい仮父方の親戚。
そしていつまでも帰ろうとしない、仮母とは遠い昔に離婚した仮父本人。
こいつらとの関係ももうこれまでだ。
それを感染症が背中を押しただけだ。
神様は本当に皮肉の塊だ。


そして今目の前にいる本当に大事な人に気付く。
そう、これが家族。
あらためて、夫と娘に元気でいてくれてありがとう。
生きていてくれてありがとう。
時々大喧嘩するけどいつまでも家族でいて欲しい。
と呟いた。

そして、大嫌いだった人間を家族だと思っていた過去のダッサい自分を労った。
いや、ダサくないよ。
気付かないフリをしていただけ。
本当の事が言えなかっただけ。
邪険にされようともよく生きてきたよ。
しけた顔して辛抱しながら親の為によく働いたよ。
猛毒妹弟に嘘をつかれ泥棒扱いされ、よく我慢した。
だからこうやってまたライブに来て楽しめてるんだよ。

あの中で私だけはまともな人間だったんだよ。

まだ足りない!

死んだからって全部チャラになると思うなよ!!!
やられた事は忘れないからな!
産んでやったからって偉そうにするな!!
おまえの所有物じゃねえ!
遺伝子をちょっともらっただけだ!
それを進化させるのはお前らじゃねえ私だ!
今までの記憶
全て塗り替えてやるからな!!!

ああスッキリした。
はい皆さんご一緒に。
と伝えたいところですが、様々な家族、色んな事情、人間関係、性格の不一致、性別、色んなケースがあります。
大事なことは吐き出すこと。
思いのたけを内蔵が出るほど搾り出すこと。
自分で自分を苦しめている悪魔が飛び出すまで。

最後に、初老の私が言うのもなんですが、やっぱりライブっていいな。いいですよほんと。

これからは、
この音楽に出会えて本当に良かった!
私を見失わなくて良かった!
そう思える日々でありたいです。





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