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欲深いという演技

横溝正史シリーズ「獄門島」「八つ墓村」「犬神家の一族」は代表作としてよく知られている物語です。
映画を子供の頃に初めて見た時、次々と起こる残虐な殺人シーンがとても恐ろしく、昔ながらのお化け屋敷を見ているそんな感覚でした。
大人になり書籍を読み返し映画も何度も見て、登場人物の背景や立ち位置を理解し、金田一耕助が明らかにする登場人物の一人一人の思惑を解明するにあたり、こんなストーリーだったのかと違う意味でショックを受けました。
人間って汚い部分を曝け出すのは、こういう時なんだ…。

そこで一つ気づいた事が。

金や財産に強欲な人間は皆同じような顔をしている(演技)んだなと。

特に女優さんの演技がこれまた大袈裟で上手い。
次々とリメイクドラマが制作されるたびに「あの役は誰がするんだろう」とワクワクするくらいです。
「悔しい〜〜〜〜〜〜〜!!!!」と叫ぶ演技が一つの醍醐味でもあったり。

もう今更ネタバレもないけれど、その演技の大袈裟度は脇役が多く、それが良い効果となり主人公(犯人)を際立たせています。
犯人は、その欲深さを隠し淡々と殺人を犯すのです。
普段は「家」の存続や「莫大な遺産相続」問題など1ミリも気にしてない様子で。

リアルで土地や財産を巡って気狂う人間の顔を見たことがありますが
みんな同じ顔をして、眉間に皺を寄せ口が曲がり、釣り上がった目を見開いて憎々しさを斜め上からぶつけてました。
鏡を差し出したいくらい醜い顔になっていて
呆れるのを通り越して、今まで見た事が無かったその顔を、ここまで人を不快にできる人間がこの世にいたんだな…と目が点になった記憶が。
あれが演技だったのなら凄いな。

なので、そんな醜い演技ができる女優さんはプロ中のプロだし、演出からキャスト選びもジャストだし、特に昭和の映画は逸品だと思います。
中でも1976年公開の映画「犬神家の一族」の高峰三枝子さんの演技は何度見てもゾクゾクさせられ、他二人(脇役)のギャーギャー騒ぐ強欲姉妹とは違う虎視眈々とした表情と、目の演技には目を見張るものがありまた。そして何よりも美しい。
そこには我が息子を思うあまり母性が爆発し、激しい怨念を撒き散らす女性の姿がありました。
撮影時、血糊が顔に間違ってかかってしまい、その瞬間から彼女に歌手としてではなく女優が憑依し、翌日から名演技を披露したというエピソードがたまらなく好きです。
まさに女優魂ですね。

上の三つの物語中二つは、女性が主人公です。
確かに映像的に男性が暴れるより、女性が気が狂う姿のほうが、見ている側は引き込まれるかもしれませんけど、ちなみにNHKドラマ「獄門島」の長谷川博己さんと奥田瑛二さんとの本気の「漢」のやり取りには大爆笑しました。
こういうのもアリだなと。

何もしていないのに何かを頂く。
誰かが自分より多く貰っている。
気が狂うほどの事なのか。
冷静に自分を見つめてみればあたりまえの事なのに。

そんな人間の業や欲深さや醜態を描く作品は沢山ありますが、やはり私には縁の無い世界なので純粋に「楽しむ」ことにしています。

そう、全てはエンターテイメント。










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