見出し画像

海外ドラマ「KIZU -傷-」Sharp Objects

「シャープ・オブジェクツ」 映画「ゴーン・ガール」の原作、脚本を手がけたギリアン・フリンの処女作で、2018年にHBOで製作されたミニシリーズドラマ。

私がこのドラマをアマゾンプライムで見たのが3年ほど前。
連続殺人事件の背景にある「こんな母親がいるのか」的な、物語の衝撃的な結末よりもショックを受けての感想だった。
この時はまだ他人事だった。

先日ある人から聞いた話。
「自分のお腹を痛めて産んだ子なのに、その子をいじめたり何らかの方法で病気にし、弱っていく子供を一生懸命に看病をする私。(頑張る健気な私を見て)
そんな母親がいるらしいよ。」と。
こんな母親の病とは‥
「代理ミュンヒハウゼン症候群」という。


ここからはドラマのネタバレになります。


そんな母親に育てられた姉妹。
姉カミールは地元を離れ記者として働いている。トラウマを抱えアルコール依存症と自傷を繰り返し身体中傷だらけである。
地元で起こったある事件の取材で帰りたくもない家に帰ってこなければいけなくなった。
義理妹アマは白いワンピースがよく似合う、豪華なドールハウスを大事にしており母親の愛情を一身に受けるお嬢様‥と思いきや夜遊びするわドラッグはやるわ。
でもたまに(母親に毒を盛られ)体調を崩し寝込む。
それを心配する姉、かつてもう1人居た妹と同じ結末を迎えるのではないだろうかと不安になる。

姉はこの我が子に毒を盛る親から逃げられた(気付いた?)から少しはまともでいられている。
でも心はズタズタだった。
ぎこちない母親との会話から察するに、早くこの場所から離れなければという焦りが感じられる。
一方、妹のアマはどうだったのだろうか。
毒を「知ったうえで」飲んでる気がした。
そこが謎だが、何故そのストレスを他者に向けていたのだろう。
母親に反抗することもできたし、父親もいるし助けを求める事はできたはず。
虐待の被害者である彼女も完全に狂っていたのだ。

とにかく彼女から感じたのは「嫉妬心」「支配欲」
そう、代理ミュンヒハウゼン症候群である母親と別の意味でよく似ていた。

きっと母親はアマがもし死んでしまっても、闘病の末というよりも、手厚い看病の努力あってこその自分の悲しみをアピールするだろう。
自分、自分、自分。自分が第一。
こうする事によって、子供を大事にする優しい母親、愛情溢れる献身的な母親、そして苦労をし可哀想な母親、として周りに同情され賛美され、心は満たされるのだと思う。

そんなのくそくらえだ。
あまりにも思考がひん曲がり過ぎだろ!
とドラマを見た当時は思った。

私は、母親が何十年か前についたある嘘を、母亡き後に知る事になりそれがきっかけで、いい歳をして摂食障害になり心まで壊した。
時間を費やし回復するにつれ、何故かを問い続けた。
これは私の人生に関わることだし、ま、いっかでは済まされない。
本当の答えは亡き本人に聞かなければ分からないが。

「可哀想だ」「苦労したね」「大変だったね」「でもあなたは一生懸命子育てしてる偉いよ」と言われたかったんだろうねと、代理ミュンヒハウゼン症候群だったのではないかと言った人が説明してくれた。

「お母さんは周りに注目されたかったのよ。そういう人だった。」

我が子をダシにして?
本当にそんな母親いるの!?

私をいじめる事で自分の勝手な思い込みを事実にし、私が弱っていくのを見て心配するフリをし
優しい(本当の)母親のフリもしていた
もしかしたら、小さな頃は毒を盛られてたのかもしれないな。
そう思ってもおかしくない。


同じ母親として女として、理解できない部分がどんどん出てくる。
そこで私はこのドラマを思い出した。
「我が子に毒を盛る親」
生きているうちに分かっていれば、私もさっさと縁を切ってカミールのように地元を離れ二度と実家に近付く事は無かっただろうに。
ただちょっと面白かったのは、血の繋がったもう1人の娘が母親そっくりになるというのがこのドラマと重なった部分だ。
まさに業(カルマ)
当の母親は我が子への虐待で逮捕される。
ならあの連続殺人事件の犯人は一体誰なのか?
結末のその後が知りたいけれど、あとは想像にお任せしますみたいな感じでドラマは終わっている。
事件の答えを知ってしまった姉カミールの表情がなんとも言えない。


1話目から細かい伏線が張り巡らされており、忘れているシーンもありそうなのでまた見直してみたいと思う。
こういうドラマは他人事として見るほうが心の健康には良いのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?