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俺の友達はよく消える

たまには普通の記事も。タイトルだけ見ると、こいつ空気読めなくてよく友達なくすのかなって思われるかもしれないけど幸いそういう話じゃねーから。

特に仲良くしていた友達が、表舞台から急にいなくなるってことがたびたびあるって話。noteでも結構あるんだよな。

こいつとか

こいつとか

この人とか。

WACKのワディも見ないし、まああいつは消えたって言うよりは忙しくてログインできてないって感じだけど。

オフでもそういうことがあって、高校の時の友達でも大学の友達も留学先の友達も、一旦表舞台から消える、ってことがある。

高校の時の友達は高校卒業後何故か地元の福岡でも東京でもなく静岡の予備校に行って、その後連絡があった。

大学の時の友達は…あんま細かい事情は言えないけど休学して、その後こっそり単位取って卒業して就職したよって連絡があってその後会った。

なんかこういうことが続くとあんま特定の人と仲良くならない方がいいのかとすら思えてくる。まあそれでも気にせず面白いと思う人のとこにnoteでも遊びに行ったりはしてるけど、その人がいなくなっても冷蔵庫が何か妙なオーラで潰したんじゃないかとか思わないでね。

今日はちょっとしたことで思い出した、大学三年の時に知り合った、Jimって友達の話。一か月の短期プログラムでニューヨークの語学学校に行った時、ホームステイ先で一緒に泊まったタイ人の学生。彼は俺より一か月前からそのステイ先にいた。

Jimはいい奴だしかなり成績が良かったけど、ちょっと喋り方や趣味が変わっていた。ただ彼の英語はクリアで一番わかりやすかった。小さな女の子が好むようなものが好きで、Sofia the firstというディズニーアニメをよく観ていた、他の趣味は綺麗な絵のcoloring、大人のぬりえってやつで日本製が好きでダイニングで色鉛筆で色を塗っていた。

あ、日本語の本だと思って見ていたら目が合って、「カラーリング好き?」と聞かれた。

「いや、よく知らないけどすげー綺麗な絵だな、色鉛筆で濃淡が表現できるのがすごい」と答えるとすごく嬉しそうに「特にこのページのダリアを誇りに思っている」といって、特によく出来ている作品を見せてくれた。"I'm proud of...”ってちょっと和訳しにくいけど、まあ日本語で言うと「ここ俺すげー頑張った」とかそんなニュアンス。

実際すごく上手かったから「すげえ、つかよく花の名前名前知ってるね、俺が知っている花っつったら、桜とチューリップとひまわり? ザッツオール」と言ったらJimは吹き出して、ページの一つ一つの花の名前を教えてくれた…ワリィ今全部忘れた、あ、ダリアだけ覚えてる、マーガレットに似てるオレンジ色のやつ。あ、俺マーガレットも知ってるじゃん。

以来仲良くなって、一緒にアニメとか観るようになった。Sofia the firstは日本にも輸入されて「ちいさなプリンセス」って邦題になっているけど、主人公のソフィアは靴屋のシングルマザーの娘。彼女が王様と結婚して、以来プリンセスになって生活が一変するという話だけど結構面白いんだよな。

二十過ぎた男二人が女児向けのアニメを見て熱烈に感想を語るというのはホストマザーもさぞかし寒かっただろうとは思う。

ただいつだったか、Jimに「Sofia the firstで誰が好き?」って聞かれて「ソフィアの義理の姉のアンバー」って答えたら、「えーアンバー我儘じゃん」って言われて、「いやアンバーいい女だろ、お前にアンバーの何がわかるんだよ!」とか真面目に言ってたらホストマザーがすっげーウケてて、ダイニングに飲み物を取りに行ったときしみじみと「Jimは貴方が来てくれてからすごく楽しそうでよかった」と言っていた。まあ、女児向けのアニメを見て塗り絵をするタイ人を扱いかねていたってのはわからなくもない。

語学学校は外国人向けの英語学校だから外国人、それもアジア人ばかりだった。Nickという韓国人の女の子(本当の名前じゃないけど、日本人以外の外国人は自分にアメリカンネームをつける)がよく俺の隣に座って来て、あなたのペンケースいいわね、とか身の回りのものを褒めてくれた。ただ何かJimに対して変に恥をかかせることを言うことがあった。最初気のせいかと思ったけど、いやな笑い方をするのは気になっていた。

ある日こんなことを言われた。

「あなたは何故Jimと友達なの? He is weird」

weird...ってのはちょっと訳すの嫌だからまあ知らん人はググって。あまりにもイラっとしたから「お前も大していい女じゃないけど大丈夫?」と言った。

自分から酷いことを言ったくせに彼女はすごく傷ついた顔をして、It's not nice...とか小声で言って立ち去った。

以来このNickとかいう女、俺の姿を見るなり友達の影に隠れたり、「彼がいるからあの時間にカフェテリアに行けない」とか聞こえるように言ったりして、俺を危険物扱いをするようになって殺意を抱いた。人に嫌味言う奴は自分も言われることを受け入れなきゃダメだろって思ったけどバランスがとれてない場合もあるんだな。

当のJimには悲しそうな眼をされて説教された。It's not nice、と彼女と同じことを言い、ああいうことを言われて彼女は傷ついたよと言われた。あいつがお前のこと悪く言うからじゃん、というと、「目には目を、を返していたら世界中がめくらになってしまうよ」と何かすげーカッコいいことを言った。ガンディーのセリフらしい。

「君にもいつかきっとわかるよ」って言われたけどワリィ未だにわかってない。まあ確かに目には目をってことで人を傷つけ返すとかは良くないけど、友達悪く言われてヘラヘラ笑ってそいつとおしゃべりするとかそっちのほうがおかしいだろ。Be nice,っていうけど、ナイスな態度はナイスな人間にとるべきであって、そうでない人間に優しくしても失礼な態度とられて不愉快な思いするだけだと思う。優しくすべき人間にしか優しくしないって性分は今も変わらない。

「でもフリーザは僕のことを思って言ってくれたんだよね。それなのにこんなことを言ってごめんね、僕がweirdだから」と言って鼻をすすりだした。なんていうか…HSP?だっけ、性格が繊細すぎて傷ついてしまう、という話最近聞いたけどJimもそうなんじゃないかと思う。自分のこと悪く言った女を気遣ってやって、俺のことまで気遣って、ってやってたら身が持たないと思うからもうそういうのあんま深く考えないでスポーツとかゲームでもやって忘れた方がいい。それより磯野野球やろうぜ。

それから一週間経って…語学学校のグループでブロードウェイのミュージカルを観に行こう、という話になった。Jimはその時具合が悪いとか言って同行しなかった。ただ「楽しんできてね」と言ったとき、すごく悲しそうな眼をしていた。

その時観たミュージカルはCATS、歌って踊って…と見ごたえがあるけどなんとなくJimのことが気になってあんま内容が頭に入らなかった。ジェリクルキャッツとかグリマベラとか、ティラースフィトが出てくる映画もみたけどあの話はわかりにくいってのもあるな。しましましっぽの猫の回転業がすげーって印象と、夏に焚火をたくあまのじゃく猫がモテモテでなんでやねんって思った記憶だけある。

戻ってきたら、ホームステイ先からJimがいなくなっていた。ホストマザーはご家族のことで急用でJimは国に帰ることになった、と言われて、あいつが俺にと言って残したカラーリングブックとメモを渡された。

メモには「今まで仲良くしてくれてありがとう。君は今まで会った中で一番クールで優しいナイスガイだった、友達になれたことを誇りに思っている。よかったらカラーリングを楽しんで」みたいなことが書かれていた。そのカラーリングの本には花音痴の俺のためにすべての花の名前が英語で書かれていた。

いやこういうのいいから見送らせろよ、お前がその日出発するってわかってたらミュージカルなんかどうでもよかったのに、と思ったけど、そういうの遠慮する奴なんだよなー…。ちょっと泣いた。

Jimがいなくなった語学学校で鬱々としていると、俺を危険物扱いしていたNickが何故かその日は急に近づいてきて「Jimとは連絡はとれたの? バイバイは言えた?」と聞いてきた。「言ってない、つか帰ったらもういなかったし」っていうとそんなの駄目、ちゃんと彼とお話ししましょう、とか言って、同じタイ人のクラスメート等にJimのメールアドレスや連絡先を知らないか、等と聞きまわった。

他のタイ人が来たのは最近だったし、どうも彼が来た時期と生徒たちが入れ替わったとかで、彼と親しい友達ってのは見つからなかった。それでもNickはあきらめずに語学学校の先生にまで聞き始めた。

「いや、個人情報を教えるとかはちょっと」と当然の反応をされたが、「友達が大事な話があるの!」とか食いつくNick。いや大事な話って何俺知らねーし、と思っていたが、じゃあ連絡先が得られないか窓口で言っておくけど、期待しないで、とけだるげに言われた。

その日はNickがずっと俺についてきた。学校の購買に行こうとして、何を買うのかと言われて「色鉛筆」と言うと、そういうのはここで売ってない、Dollar treeへ行きましょう、と言って、恋人らしき別のクラスの男に車を出してくれと頼んでまでくれた。Dollar treeってのは1ドルで商品が売っている、アメリカ版100円ショップみたいな感じ。ただ正確には1.99ドルで2ドル近い、店によるかわからんけど。とにかくそれで色鉛筆は無事買えた。

家に帰ってからJimがくれた塗り絵を塗ってみたが、色鉛筆で色を塗るって結構難しい、キシキシ言うし何か思ったようにいかないんだよな。あんな色で作品として完成させてたJimってすげーんだなと思った。

それから帰国が近づいて…日本に帰る3日前くらいだったと思う、Jimからメールが届いた。Skypeで話したいというので繋ぐと、画面に映った彼は5キロくらい痩せているように見えた。ただ、すごくお洒落な部屋で立派な椅子に座っていた。日本人はけっこう庶民でも留学したりするけど、タイ人でアメリカ留学するような奴は金持ちが多い、Jimもその一人だった。

連絡遅れてごめん、と言って、実は父親が亡くなった、と言った。いやそれは…本当に超緊急で何とか帰らなきゃいけない事態だったんだな。言いながら奴は涙をぬぐった。I'm sorry,と言うと、いや、大丈夫、と顔を上げた。大丈夫なわけねえだろ無理すんな。なんていうかそれは本当に、俺に挨拶とかそういうこと言ってる場合じゃなかったなと思う。

学校から連絡があって、すぐに話したかったけど色々あって、と言われた。あー期待するなとか言いつつあの先生、連絡はしてくれたのか。Nickが何か知らんがすげー頑張ってくれた、というとJimは笑って、彼女はフリーザが好きなんだよ、と言われた。いや、恋人いるけどなあの女、しかもフィアンセとか聞いたような。でかい車に乗ってて、すげー不満そうに俺をアメリカ版100均に連れてってくれた。

そういえばお前からもらった塗り絵塗ったよ、っとskypeでカメラに移して見せると、Jimはすごく怪訝そうな顔をして”Jesus Christ..."と言って首を振った。

いや、キリスト様に助け呼ぶほどひでえのか、というとめちゃくちゃ笑って、「その色鉛筆、どこの使ったの?」と言われた。Dollar treeで買ったというと、中国製の安い奴とか全然だめ、日本の三菱とか使わないと、等と言い出した。日本人の俺がタイ人に日本製を使えと説教されるとは。

そんな感じでしばらく雑談をして、ひさしぶりに笑った、ありがとうと礼を言われた。また日本に帰ったら連絡する、と約束してskypeを切った。

学校でもNickに「おかげでJimと連絡取れた、お前のおかげだありがとう」というとすごく喜んでくれて、「本当によかった、あなたたちとっても素敵なお友達同士だったものね」と言ってくれた…いやお前Jimのことweirdとか言ってただろとか思いつつ、野暮だからそれは言わんかったけど。

フィアンセにも「フリーザがJimと連絡取れたって!」とか嬉しそうに言って、彼女の男はA-huh、とか実にどうでもよさそうに相槌打ってた。なんとなく気まずくて、「あの時はありがとう、あんなでかい車初めて乗った」って言うと笑って「また乗せてあげるよ」って言ってくれたけど、そういやあの人の名前知らない。フィアンセってことは今頃結婚してんだろうけど。

日本に帰って、約束通りJimと少し話した。以来彼とは少しずつ連絡をとっている。半年に一回くらいメッセで連絡があって、少し話して、それを数か月おきに繰り返している感じ。ん-それ今年で8年関係続いてるわ、結構すげーな、これ親友って言っていいのか?

今になってJimのことを書こうと思ったのは、ちょうど昨日連絡があって今はメイクアップの仕事をしているとか謎の報告があった。メイクアップってあの口紅塗る、あのメイクアップ?って聞くとそうそれ、って…化粧品会社でも始めたのかというと、何か舞台の仕事だとのことだったがよくわからなかった。今度面白い写真ができたら見せてくれると言っていたからその時わかるだろう。

その時フリーザは何をやっているのかと言われて、仕事の話のほかにSNSで友達が作ったゲームのプレイ記事を書いたり、たまに昔話とか書くこともある、いつかお前のことも書こうかなつったらすげー食いついて読みたがったので書き上げてみようと思った…日本語はだめだからグーグル翻訳とか使ってうまく翻訳できていないところは説明しているけど、共有リンクで見せながら書いていたら段落ごとにウケてくれるから書きがいがある。自分がweirdとか言われたなんて書かれたら嫌かなと思ったら、「僕は自分がweirdでgeekであることを誇りにしているよ」とドヤ顔で言われた。weirdも彼にとっては俺が思うほど悪い意味じゃないらしい。

最近noteでも似たようなことがあったのは、俺の記事を読んでくれている人はわかると思う。俺の友達はよく消えるけど、特別な感情を持った友達はしばらくして姿を見せてくれることがたびたびある。思いもよらない方法やタイミングで驚かせてくれたり、再会した時いいニュースや面白い話題を用意してくれていたり、昨日まで会っていたようなテンションで楽しかった出来事をシェアできたり。

いつでもどこでもつながる、なんて関係でなくてもいい。一時的に連絡がとれなくても繋がる奴とはまたつながる。そういうサプライズみたいな関係を楽しむのもいいなって思っている。