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アナログ作家の創作・読書ノート

                       おおくぼ系         

          プロはすごい!

 YouTubeで鈴木輝一郎小説講座のサイトを知ったのは、二年ほど前であった。
    石田衣良氏や初枝れんげ氏など、いろいろな小説講座がYouTubeで展開されているが、私には、鈴木先生の語り口がピッタリきた。なんといっても、べらんめえ調で切れが良かった。 

    鈴木先生は執筆のかたわら、ぎふ中日文化センターで小説講座を開講されているのだが、通えない生徒のためにリモート講座を運営されており、その一部をウェブサイトで一般に公開していたのだ。(現在は、ラジオ講座ダイジェストの再掲となっている)
    講座の実績は定評があるようで、昨年において受講生から3名が作家デビューし、予選通過者は20名となっている。わたしも何年(10年?)か若ければ、参加したいと思うほどである。
 ある視聴者から、「先生が10,000枚書けば、デビューできる」と明言されたことに対して質問があがった。「10,000枚書いてデビュー出来ねば、あきらめなさいということか」というものであったが、答えは、いともシンプルで、「そうとも言えるが、諦めなければ何とか作家になれる」ということであった。

 先生の作家日記、『印税稼いで三十年』が発刊され、遅ればせながら購入した。
 いつも新しい本を手に取るのは楽しいものであるが、今回は、直筆のサイン入りでかつ、ボールペン(ノベルテイというのだそうだが)のオマケつきであり、新鮮な驚きをおぼえた。
 「熱く語るぜ風」を意図してかかれたエッセイ集であるが、イッキ読みをしてしまうぐらい新鮮で面白く、また、作家の世界のすごさに、いまさらながら驚嘆した。
「新人賞をとってデビューするのは簡単だが、二作目をだすことはその何倍も難しく、デビューしながら消えていく作家が非常に多い」とのことであるが、新人賞も多くなったとはいえ、書く者が、異常に多い今日、受賞はそんなに甘くはない。
    一人の勝者の陰には、その何百人、何千百人もの敗者が存在しているし、毎年、新しく能力にあふれた書き手がつぎつぎと参入してくる。
    書きはじめも遅かったため、新人賞応募に躊躇するものにとっては、入賞の壁は厚く難問中の難問である。

     私の場合、予選にも残らず、中央デビューをするには、まだまだ筆力をみがかなければと、九州文学同人に参加した。そこで毎回のように長・短編を投稿したら隔号ごとに掲載され、そうこうしているうちに九州文学の講評をされている、文芸評論家の志村先生の目に留まったようで、先生からの紹介ということで、ノンフィクションの執筆依頼がきた。これが稿料をもらって書き始めた最初であった。(ただ、最初に依頼のあった『戦国逸話・伝説総合辞典』は、12項目にかかる原稿をあげたものの出版社の都合により出版停止となった(笑))

    このような経験から、デビューするには、当人の努力や能力もさることながら、どんなところで何を書いてアピールするか? さらに運(ラッキー)もある、と考える。運とは、ある面、人とのめぐりあわせでもあろう。

     目指すところは、デビューしてベストセラ―で脚光を浴びることであろうが、そういう夢に対して、鈴木先生は「彼らは天才なのだから」と達観し、「新人賞を取ったぐらいでは、ニ、三年もすると消えてしまう」とのたまわれる。どの世界でもプロと名のつく世界は、厳しいものだと改めて思う。
    同エッセイによると、担当編集者から「何もしなければ消えてしまう」「次の作品の返本率次第で弊社からは刊行できかねます」とまで言われたそうで、ロングセラー作家として、生きのこる努力をいかにしたか?
    そのノウハウを執筆編、処世術編、お金編、プロモーション編などの項目を立て、実体験を交えて、「駄作を世に出す勇気が大切でござる」「作家には定年がないが明日もないんでござる」「著者書店まわり第一号は鈴木輝一郎なんでござる」の55タイトルのもとに展開されている。
 
    作家を目指す皆さんは、ぜひ『印税稼いで三十年』を一読し、作家としての生き様について、学んで(?)ほしいと思うものである。
    三十年も書き続ける人生は、大変なことである感を新たにしたが、その生活を支えたのは副業作家であったことも大きいと思われる。著作でも述べているように、印税収入は不定期であるので、どうしても固定収入が必要だとのこと。このことは、これから作家を目指す人は一考を要すことであろう。

 同様に「作家は、なるよりもあり続けるほうがはるかに難しい」と述べているのは、『新宿鮫』の大沢在昌氏で、『売れる作家の全技術』という小説講座の本がある。

 「また、文学新人賞を受賞した加代子は、あこがれの〈小説家〉になれる・・・はずだったが」と、作家のもがきを書いた小説、柚木麻子氏の『私にふさわしいホテル』も面白い。

 いずれにしても作家とは大変なものである。


    (次回は、長編新作をいきまーす! ヨロピク!)










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