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作家はトリック・スター⁈

アナログ作家の創作・読書ノート       おおくぼ系


 小説を書く者は、(アナログ作家も)概して人が好きで、いろいろな人生や、それぞれの生き方に興味を持つものだ。それで、取材という名目のもとに機会をとらえて人と接し、イベントや事件(?)に近づきちょっかいを出してしまう。

 

 秋風がなかなか立たないなか、一ト月のご無沙汰で、パートナーとともに〈第139回霧島読書会〉へ足を運んだ。

 読書会への参加というものが、これが、書く側の人間にとってはなかなかで、読者がどのような本を読み、いかなる感想をもつかということには興味津々であるのだが、読むのと書くことの立場の違いを実感することになるのである。今までも述べたように、文字で表現することは得意でも、話すことは特に苦手である。

 書く者同士が評価しあう読書会というべきものに合評会があるが、そこでは、稚拙だ、ストーリが破綻している、文章が練れてない、完成度が低い、内容がないなどと、常にけなされる。内心穏やかではないが、こんなものをと言うが、書けるなら書いてみろって(笑)、平然とうそぶいて孤高を保っておらねばならない。

 紙の視点ならぬ神の視点といわれるごとく、天上に上り、平然と下界を見下ろしている気概にならねば乗り越えられない?

小説家というものは自身の作品が一番面白いと思わなければ、やっていけない商売である。独りよがりの自分のみの世界でもあるし、小説として書かれたものは、ノンフィクション(事実)と違ってまったくのウソ(笑)・創作なのである。

 この点、ミステリーもの、ファンタジーもの、ハードボイルドものの小説にしても読者を酔わせ、誘い込む〈トリックスター〉でなければいけないと考えている。

 もっと述べると、例は悪いが、作家はバクチの胴元みたいなものではないかと考える。作品を並べた賭場を開いて読者を喜ばせてなんぼのものであり、いくらかのテラ銭を稼いでいかなければ生活が成り立たない。

 だが、昨今、創り出される賭場は、話が明るくてわかりやすい、ハイファンタジーに王子・王女様ものなら読者は浮かれて喜んでもらえるかもしれないが、現実社会を映したようなリアルなものは、好まれない傾向にあるようだ。

 アナログどんは、どっちかと言えば明らかに後者である。

 

 で、池田幹子氏主宰の霧島読書会が、午前10時半からはじまった。

 まずは、氏のおすすめとして、ビートたけしの『アナログ』が取り上げられ、下ネタも多いがとにかく面白いという。

 次は、テレビでも紹介され話題となっている西加奈子『くもをさがす』、28万部に達するヒット作である。小生は、テレビで紹介されたので、内容のあらましを知っていたが、この作品はノンフィクションであり、西氏が一大決心のもとカナダで乳がんの手術を行った体験記であり、手術後その日のうちに帰宅させられたり、手術に際し、看護婦さんたちが、あっけらかんとして「カナコ、大丈夫よ、すぐに良くなって戻ってこられるよ」と激励してくれるなど、文化の違いを感じさせられたという内容である。

 この本を勧めてくれた方は、中堅のエンジニアでこの霧島読書会の池田氏の前の主催者であり、同氏は台湾の半導体企業へしばらく出向していて、現在は帰国しており隣県で台湾との半導体工場の立ち上げに参加しているとのこと。文武両道と言うか、多彩な方とお見受けした。また読書会139回の歴史を知った。

 

 続いて『交通誘導員ヨレヨレ日記』。タイトルからして、面白そうであるが、笑える本とのことで、作者は柏耕一。推し氏は、宇佐見りん『推し燃ゆ』も読んだのだそうだが、よくわからず理解できなかったとのことである。アナログどんとしては、中央と地方には文化や時間のラグがあり、都会で最先端のはやりものが、即、地方へ伝わり共感をえて広がることは難しい気がしている。その意味では、地方作家は地方作家なのだと思える。住む場所による感性の違いというべきか?

 

『ボタニカ』朝井まかて著は、NHK「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎の物語で、おすすめ女史は、テレビドラマを見て詳しく知りたくなり、同書を読んだ。あげくは〈富太郎推し〉になり四国の植物園を訪問したとのことである。富太郎は、まわりを巻き込みすぎるが、借金をしながらも一心不乱に植物に突き進む姿に感動したという。

 

昨今、人の入れ替わる作品が流行っているが、母と娘が事故にあい母は亡くなり、母の心が娘の体に入れ替わるという東野圭吾の『秘密』。パートナーのお勧めである。父と母の心をもった娘との切ない生活をえがいた作品である。東野圭吾はエンタメ作品の頂点に位置する人気作家であり、他にも同本を読んだ人がいて非常に良かったとの感想。

また、いやしの猫もブームであり、『くる日もくる日も猫猫猫』玉野恵美著をあげたのは、犬のトリマーである女史。犬と猫とどっちが好きですかと問うと、当然に猫と答えられた。

 

最後のおすすめ作品は、佐藤究の『爆発処理版の遭遇したスピン』で、題からして謎めいている。作者は、ハードな薬(ヤク)がらみ、臓器売買などを描いた『テスカトリポカ』で直木賞をもらった気鋭の作家さん。推し氏の感想としては、本作は、表作を含む短編集で、表作はサツマを舞台としているとのこと。さらに〈スピン〉の言葉にカギがあるという。説明を聞いてサスペンスの好きな系どんも読んでみたい気になった。

 

さて、アナログどんは、いかに参加したかというと、現在作成中の短篇集『アラベスク ー西南の彼方で』の宣伝に努めたのである。内容を紹介したレジメを作成して配布した。「同短篇は、発刊になるまでは、NOTEに掲載しているので興味のある方はヨロピク!」で締めくくった。

最後にチロルチョコをいただき、お開きとなったが、わがブッチャ顔をマスクでかくしての約一時間半は、けっこう楽しく、なかなかのものであった。

 

 で、アナログ作家は、出来上がってきた短篇集Ⅱの見本の校正に追われているのだが、何度見直してもミスが発見されるので落ち込んでいる。変なもので見本を受け取ったときには、よくやったと舞い上がるのだが、その後急速に冷めていき、見るのもいやになるのである。それでも数ページずつ見直して校正していかねば、発行にはたどり着けない。内容も編んだ時にはけっこう地に着いた傑作だと自負していたが、何をかいわんや、もう少しハデでインパクトがあった方がよかったのでは、といまさらの後悔しきりである。それでも出さねばならぬと踏ん張る(笑)。

 

 やっと発刊になると、生みだされた分身にクルリと背を向けて、グアンバってねと、手を振って送りだしたあとは、よそよそしい気持ちになる。

そこで、やめればいいのに次は短篇集Ⅳだと、同じことの繰り返しとなり、やはり本好きの中毒者(分裂者)でなければ、作家はやっていられない。

 短編はニ、三週間あればかけるが、肝心の長編が進まない。毎度のことながらやきもきしている。

 

 気晴らしに、黒川博行原作の映画『バッドランズ』を見に行き、安藤サクラちゃん、宇崎竜童らとすごし、ひとつのヒントを得た。それは次回に?


                        (適宜、掲載します。ヨロピク!)


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