見出し画像

パフォーマンス!

アナログ作家の創作・読書ノート      おおくぼ系

 

 時間があるとYouTubeをながめるようになった。

 いろんな項目をアットランダムでながめられ、また、一つの項目についてより詳しく知りたくなると検索をかけられるので便利このうえない。

 かつ、日々更新されるものも多く、情報の大海原に揺れながらも焦点をもって読み重ねたり、興味はなくともエッと驚かされて読み進めることも多い。しかもすべて無料ということで、ありがたすぎる情報社会だと思う。

 

 この便利なネットの波に、小説や小説家についての記事もアップされて散見されるのだが、先般とりあげた、今、旬であり注目の女性作家、柚月裕子氏も4年前から登場していたことに気づいた。系どんは、作家の人物像を知ることには長短があると思っているが、こんな素晴らしいい作品を現わした作者は? と、人となりを知りたいのだ。が、概してテレビ画面にあらわれた作家は、栄えがしないことが多いのだ。それは、作家は、知恵を絞り出して文字を書くのが専門だから、上手にしゃべり、聴衆に受ける人は、まれである。

 

 要約すると、テレビ(映像)受けする人と受けない人がいて、一般に現代のお笑いムードの漂う時代には、作家がブラウン管に登場したときは、軽快さを欠き重すぎると感じることが多い。ボソボソとさえないしゃべりで、絞り出すような表現は、それこそ作家であると納得はするのであるが・・・。しょせんは表現するフィールドが違うのだと思わざるを得ない。

 

 で、柚月裕子氏であるが、YouTubeに現れた氏を見ると、エレガントな女性であり、こんな淑女が、なぜヤーさん小説を書いているのだろうと、いぶかしく思えるのであった。ややトーンの高い声で、質問に対して穏やかにかつ、よどみなく話す。

 貴婦人の柚月氏が、黒川博行氏と対談しているサイトは、見ものであった。黒川作品は、直木賞をとる以前になにわのパチンゴ業界と警察をモデルにした『封印』というハード・サスペンスを読んで、感嘆したことがあったが、氏はその二、三年後に『破門』で直木賞をとった。氏もヤーさん物の危ないリアルの世界を小説で展開する第一人者であるが、ひげをたくわえたご尊顔を一見すると、その筋の方かと見間違う。だが、黒川氏は、彫刻家を目指し美術教師となり、それから作家へと転向した美意識のすぐれた方なのである。故にであろうか、ハードな作品世界においても女性を監禁・凌辱するようなシーンは皆無である。ぶっきらぼうに見えるなか、シャイでピユアなものが底に流れている。

 

 対談は、柚月氏とは初対面である黒川氏の、〈キレイな人でビックリしました〉で始まった。『孤狼の血』は、男が書いたものではないかと思ったといわれ、まさに〈男の小説〉だと。さらに〈情ではない知の小説〉だと評する黒川氏は、話をしながらも柚月氏をじっと見つめることはなく、チワチワして落ち着かない。黒川氏もシャイなのであろうが、柚月氏のオーラにはタジタジとなる気持ちが分かるような気がする。

 柚月氏は、〈男の小説〉といわれて、ありがとうございますというのも変ですがと、さらに、正義とはいろいろあると述べ、いままで検事物で表の正義を書いてきたので、裏の正義を書きたかったのだと、タンタンとしている。東映ヤクザ映画の『仁義なき戦い』に魅せられ、ヤーさんの世界をえがきたかった、正義にしろ悪にしろ、ひとつの信念に生きることはカッコイイとのたまわれる・・・なるほどで、大変面白く見ごたえのあるパフォーマンスであった。

 

 すい星のごとくの感がある柚月裕子氏は、デビュー作は『臨床審理』であるのだが、どんなものか読んでみたが、徐々に加速のついてくる面白さがあり、終わりになると犯人に拉致された美帆が凌辱される場面があり、圧巻となる。

 応募作で、ここまでかけるのか? いや応募作だからこそ選考に残るためには大胆な凌辱描写でパフォーマンスをせねばならぬのか? 

 いろいろと考えがめぐるが、よくぞ書いたと思わざるを得ない。文字での大パフォーマンス! 読者への大サービス(笑)、まいりました。

 

 ところで、YouTubeでのパフォーマンスについてもうひとつ。

 〈まつりごと〉も系どんの小説モチーフであるので、関連記事にも目を通すのだが、今般、某野党の国会議員が〈言論の自由〉を追求する動画も面白く、日々の展開を追っていた。だが急転直下、最後はハイパフォーマンスで終局となった。

 見方によっては、同議員は一種の愉快犯で、国会をもて遊んでいるのではないかとさえ思えた。確かに現実は小説より奇なりで、イジラレ・キャラで目立っており、炎上をねらったのかと思えた。

 いずれにしろ、悪名でも世に出る(?)ためには、なりふり構わぬパフォーマンスが必要なのかと思える? 

 

                 (適時、掲載します。ヨロピク!)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?