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フォクトレンダー展の出品作品の秘密

SNSでしか事前告知ができていませんでしたが、先週まで「フォクトレンダー展」というコシナ社製のフォクトレンダーVoigtlanderブランドのレンズで撮影した写真限定のグループ展に参加していました。

フォクトレンダー展「 Masterpiece 」
会期:2023年11月15日(水)〜11月30日(水)
時間:10時-21時 ※最終日は17時まで
会場:新宿北村写真機店 6階

フォクトレンダー展に出品した私の作品は、函館ではとても有名な老舗「津軽屋食堂さん」で撮った1枚です。津軽屋さんは大門という繁華街にあり、実際は場末ではないのですが、イメージは場末の食堂。煮付け、焼き魚、惣菜、ご飯に沢庵、たまに豚汁。そんな家庭的な雰囲気が好きです。この雰囲気をシンプルな写真で表したいと思い、今まで何百人もの人が水を飲んだであろう安そうなコップにフォーカスしました。
暖簾越しに入る柔らかい光、テーブルクロスがわりのシワシワのビニールが幻想的な波間に浮かぶような空間を演出。そしてコップの外側にこぼれた水滴が遊んでいるよう。自分で言うのも変ですが、これは一枚でこの場所を表現していてとても好きです。まさに原点函館。大事な写真です。

この1枚はしっかり丁寧に焼きたいと考え、主催の大村さんに無理を言って暗室自家プリントで参加させてもらいました。
ライカのデジタルカメラを使用して撮影、それをデジタルネガにし、いつも通り暗室で印画紙に焼き付けました。もちろん露光後に現像液につけて停止定着をしてじゃぶじゃぶ水洗をするあのウェットプロセスの暗室作業です。

このプリントを見た多くの人に質問されるのは、プリントの不思議さについてです。暗室愛好者ならわかるのですが、現行の印画紙ではここまでクリームっぽいベースの紙はありません。正解はIlford MGFB Warmtone(温黒調のバライタ紙) + "染色"です。
紅茶やコーヒーで調色することもあるのですが、今回は和の食堂のゆるい空気感を出すことがコンセプトなので、日本茶を使って染色しました。これによりベースがいい感じの黄色っぽさになっています。

レンズは、フォクトレンダーのULTRON 75mm F1.9 VM を使用しました。このレンズ絞りの開放値はF1.9でとても明るく、且つ最短撮影距離は50cmなので背景をかなりボカすことができます。
店内に差し込む柔らかい光を表現し、テーブルのビニールの複雑な反射を水面のようにする。それができるのが、このレンズでした。

色々書きましたが、実物のプリントはWebでみるよりもっと美しいと評判でした。 またどこかで展示すると思いますので、その時にみていただけると嬉しいです。



#フォクトレンダー展 #フォクトレンダー #ライカ #函館写真

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