第四章(後)

「あら、どうやら本題を忘れちゃったかな」しばらくして、陳欣明が星の見えない夜空を見上げて、溜息をした。

「最後まで聞きたいの」

「最後まで語ってください」穎毅然が前の憂鬱を一掃して、例の話の終わりを強く求めてきた。

「残っていることはもう言った甲斐がないけど、言おう。そう、二人が出会った。最初神農架の入口で。その時仮の料理人も傷だらけだった。服が血に濡れてしまった。疲れ切っていたのに、まだぎっしりしていたリュックを背負っている。料理人が狂って仮の料理人に縋ったけど、『どけ!』余計な話もなんにもせずに慌てて行った。逃げたところ、血のついたナイフを落とした、それはその人のものだ。終わった」

「いや、末はあまりにも粗雑だろう。生き残ってきた料理人って、」目を細めている穎毅然が声をだんだん低くしてきた。

「いいえ、王星翔じゃなく、二番手だよ。さすが料理のチームが解雇されないとホテルの方は食中毒の人々は心に満足できない、誠意足りないほど厳重な事態になっちゃってる。事件が出てからというもの、ホテルが坂を下る一方だ」

「ところで、そこまで詳しく書かれているものって、本人って何度も言っているし、会ったことがあるだろう」穎毅然が少し尖った声音で次の質問を出した。

「こっちも尋ねてみたことがあるけど、『違う、違う』以外の言葉も何も言わずに終わってしまった。その後いつ経ったか、そのテーだけじゃなく、アカウントも消された。事件の語り手が少しの跡も残さずに幽霊のように消えた。さあ、さあ、そろそろ行こうか、」

「え、もうこんな時間なの、早いね。あっ、ちょっとトイレ、陳さんは」

「私なら平気、お二人でどうぞ、道に迷わないでね、部屋を忘れたら電話してくれて、外に出迎えに行くんだから」

「あ、陳さんが言い過ぎるんだよ、もう大丈夫、大丈夫」
「穎毅然、私ちょっとトイレ、一人でも、へえ、何を見ているの」

 ホテル係りの専用出口に繋がった三和土での広くない空き地では穎毅然が遠く遠くのところを眺めている。向こう側はまるでこの世界の果てのようだ。幾重の漆黒の重い雲に包まれていて、一筋の微光も見えなくいその幕の後ろは確かに世界から言っても数えきれる有名な存在だ。

「え、ぜんぜん見えないな、向こう側なら、あら、その方向は確か、」

「多分彼が感じられるはずだ。見えないとしても感じられるということは多分そいうことなんだろう。一度聞いたことがあるけど、まさか本当なの、」二人の会話で歩みを止めた陳欣明が穎毅然に意味深そうな笑みを露わにした。

「向こう側が上海なんだよ。もう遅いし、今日の天気も良くないし、こんな時点だったら多分無理なんだ。そっちの展望台に登ればなんとか見られるようになるはずなんだ。さあ、帰ろう」

「え、」二人がともに陳欣明に頷いてから一緒に空き地を出た。

 三人が寮に入ると各自のことにかまけた。穎毅然が洗面道具を揃えて、ドアを開けようとしたところへ、

「穎毅然、こんな時点ってまだ風呂に入れるの、」

「それなら心配しないで、2時までに済めば大丈夫だよ、袁章も一緒に行こうよ。ちなみに、毎日四時になると浴室が再開されることになっているけど、二時から3時までは閉まっている。今日はお二人ずいぶん疲れそうだろう、よく洗わないと眠れないぞ」
「じゃ、私も行く」

「おい!カードを忘れないよ!」

「あっ、陳欣明、どうも、」穎毅然が礼をした。

「なんでもない、なんでもない」

「ちょっと唐突ながら、前の話って聞いてもいいの」

「なんの話、物語のことなの」

「向こう側感じられるって、その話し手のことを少し聞かせてもらえないの」

「あら、それくらいならぜんぜんオッケなんだ。あいつは王興誠(ワンシンツン)という人だ。友達だった。前はこんなふうにタバコを吸っていたときに知り合ったんだ。そいつったら、意味不明の言葉を口にかけがちた。さっきの言葉も同じなんだ。詳しい意味なら、勘弁して、」

「ありがとう」穎毅然が再び礼を言ってから、部屋を出た。

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