とびらを開けられない

私の母は、1990年9月19日に私と母方の祖母の目の前で餅を詰まらせ、翌20日に亡くなりました。当時、母は、34歳で、私は、3歳でした。

あのときのことを生涯、私は、忘れないでしょう。

あのとき、私と母は、母の心身の病(心身症)が悪化したことにより、私の実家を離れ、母の実家に身を寄せていました。

優しかった母方の祖父母は、母を心配し、私を可愛がりました。

深く愛されていたと思っています。

あの日、母が餅を詰まらせたとき。
母と一緒にいたのは、私と母方の祖母の2人だけでした。

私と母があの家の人たちと食事を共にすることはあまりありませんでした。

母の兄の子どもは、「どうして仁美ちゃんがここにいるの?」と母の兄の妻に訊ねていましたし、私と母、母の兄の子どもの父親の妹である母はともかく、その娘である私は、あの家の人たち(母方の祖父母を除く)にとって、完全に部外者でした。

私は、とても孤独でした。

「ここから出ていきたい」

何度もそう思いました。
何度も何度も。

ひとりで玄関の前に行き、玄関を見つめて、「ここから出ていこうか」と何度も思いました。

けれど、当時3歳の幼児が母の実家を出ても生きていけないことは、当時3歳だった私にも理解できていました。

私は、とびらを開けることができませんでした。


ここではないどこかに行きたかった。

ポロメリア / Cocco

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そう思っているうちに私ではなく、母がここではないどこかへ行ってしまった。

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発売日:1999年07月07日

Raining / Cocco

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あの日の空は、晴れていたように思います。

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