投資信託の選び方、実績とその背景

 
    Ⅱ 投資信託の選び方、実績とその背景 
 
12月3日のNISAシリーズ第一段に続く第二弾です。NISAに参加することは株式を直接買いつけるか、投資信託を買いつけるかいずれかですが株式の直接投資に不慣れな投資家で取り合えず投資信託から入る人も多いと思われます。また投資信託であれば身近な銀行、郵貯などの金融機関から買えることをⅠでお話しました。しかし、投資信託と言っても投資対象は、まさしく千差万別でその具体的な入り口(選択)は結構わかりづらいかもしれません。国内株式、国内債券、外国株式、外国債券、さらにそれらを適度にミックスしたものに大別できますが、ここでは最も身近にあり比較的理解しやすい国内株式型を想定して話を進めることにします。まず、国内型株式投信を大きく二つのタイプに分類し、その特徴を理解することから始めます。
Ⅰ 投信分類・・・・・パッシブ型投信とアクティブ型投信
①    パッシブ型投信の代表はインデックス型投信
市場平均並みの動きを期待する商品です。最もポピュラーなパッシブ型日本株投信は、日経平均型(225型)投信です。
日経平均とは東証プライム市場の全般的な動きを見るためのものです。具体的には上場する1650社余りから225社を日本経済新聞社が選び、それら銘柄の株価の動きを指数化、それによりプライム市場の大きな流れを見ることが出来ます。
また年一回入れ替えを実施、常に市場の動きを表すように組み換えを行っております。ここでいうパッシブ型投信の代表選手である日経225タイプはこの指数と連動するように組まれた投資信託です。銘柄選択の必要性がなく、しかも市場の動きについてゆきたい投資家向けの商品です。毎日の引け後、基準価格が計算され翌日の新聞のオープン投信の欄に掲載されます。入り口のハードルが低く、金利固定型商品から変動価格型商品への入り口商品として人気があります。殆どの金融機関で取り扱っております。当然、機械運用であり実際の銘柄選択をするファンドマネジャーは必要ありません。当然、運用に係る諸費用が非常に廉価であり、ネット証券では手数料0のインデックス型投信もあります。
➁ アクティブ型投信は市場平均以上を目指す積極型ファンド
インデックス型投信とは両極にあるものです。ファンドマネジャーが銘柄選択をすることにより運用します。その運用目的は、市場平均以上の投資成果を得ることを目標とします。多くの場合市場平均を日経平均としており、それをベンチマークと言います。ベンチマークと比べ優位な成績を上げたとすればファンドマネジャーの銘柄選択が良かったことになります。それだけに、アクティブ型投信の優劣をめぐってファンド間の競争が激しく展開されております。組入れ銘柄数は、インデックス投信と比べ著しく少なくなります。ファンドにより相当ばらつきがありますが、中核銘柄として30~40銘柄ぐらいでしょうか。インデックス型投信の225社と比較して銘柄数からして相当絞り込みがされております。その絞り込みが正しければより成果が出ることになります。当然逆もあります。あれこれと人手がかかるので当然経費がインデックス型投信と比べ大きくなります
 
  Ⅱ 実績を吟味
 多くのアクティブ型日本投信のベンチマークは日経平均です。それを基準に当該投信の基準価格の推移を比較してゆく方法です。具体的に日経平均の2017年から直近に至る動きです。12月の大納会の日経平均の終値です。一年刻みのその軌跡を前提に、関心のある実際の投信の基準価格の推移をイメージ、比較するものです。
①    実績の確認期間のとり方:前提条件として一定以上の運用期間があることが重要です。比較対象となるアクティブ型投信の設定時期は実際、異なるものが殆どであるので、ここでは5年から6年程度を想定します。所謂、ひと相場あるいはひと相場半ぐらいのイメージであり、その相場展開の中に多くの要素が詰まっています。ファンドの実績を読み取るにはそれなりの内容を持っている期間と認識しております。
       2017 2018 2019  2020 2021  2022 2023(11)
 日経平均 22764 20014 23656 27444 29452 26180  33519
  変化   1   0.88  1.04  1.21  1.29 1.15   1.47
              
日経平均の2017年からの動きを(各年末大納会の終値)を採用(2
023年は11月末の引け値)しております。下には2017年最終日を“1”基準としてその後の変化の値を載せております。
➁日経平均の概観:山あり谷ありの5年強の実績が読み取れます。直近11月までの最終結果はプラス47%となっておりますが、2022年末の段階では15%の上昇でした。幸い、2023年は急上昇したので、何とかそれなりの成績となりましたが、昨年までのプラス15%では保有期間からすると十分満足とは言えないレベルであったかもしれません。今年になって報われた格好です。
③一年比較は重要:モーニングスター等の投資信託を比較する機関があります。年一回のレポート発行、星の数でアクティブ型投信の優劣を表現します。一方で成績の悪いファンドマネジャーはその悪い成績、特にインデックス型に負け続けるような状態を3年継続すれば、殆ど場合、交代すると思われます。そのようなこともあり、実際の選択には一年ごとの実績がかなり重要です。まず、そこでベンチマークである日経平均の各年の変化を示しました。この変化値と実際のファンドの変化値を毎期比較する作業が重要です。
      2018年 2019  2020  2021  2022  2023(11月)
日経平均  20014 23656  27444 29452  26180   33519
 年変化率 -12%   18   16   7   -11    28 
投資信託は必ず目論見書があるので、そこから凡その過去の基準価格を得ることが可能です。また販売業者からの入手も可能です。
この年の変化率は特に重要です。ポイントとなる見方は、成績が落ち込んだ時です。2018年は日経平均が12%対前年比落ち込みました。同期間、おそらく、アクティブ型投信はこの日経平均以上の落ち込みを記録していると思われます。あるいはそれ以下の可能性も十分あります。かりにその落ち込みは日経平均並みであったなら、そのファンドはおそらく十分合格点です。前年の2017年に戻ります。市場平均は19%の上昇です。ここはおそらくアクティブ型のファンドマネジャーは相当貯金をしているはずです。仮に25程度の基準価格が上昇したとすれば、2018年は十分貯金を持って臨むことが出来ます。
こうしてアクティブ型は上昇相場で貯金を十分蓄え、調整期(相場)では市場平均の動きであれば、十分です。こうした形で、長い投資期間を振り返れば、市場平均を大幅に上まわっていた、これがまさに理想なのです。日本株投資信託、しかも、日経平均並みの成果を期待するインデックス型投信から入るのは良い選択かもしれません。市場の軸を学習できることになります。非常に少額で可能です。ナビゲーターとして使えます。またベテラン投資家でも、それを軸にアクティブ型、あるいは株式直接投資も行うことがあります。