見出し画像

おもち闘病記①生後〜病気発覚まで

はじめに

我が家のおもち(1歳)は生後5ヶ月の時にランゲルハンス細胞組織球症(以下、LCH)という珍しい病気であることが分かりました。病気発覚時は聞いたことのない病名に不安を覚え、ネット検索して一喜一憂し、眠れぬ夜を過ごしていました。
LCHは患者数が少なく、まだ分かっていないことが多い病気です。医学的な情報は検索すれば出てきますが、LCH患者の子どもがどのように治療し、回復したかはほとんど見つけられません。当時の私たちのように、少しでも多くの情報を得て不安を払拭したい方に向けて、病気発覚からの経緯を残そうと思います。

また、今回病気の子どもを持ったことで、日本は子どもが健康である前提で制度設計されており、一度その前提から外れるとことごとく生きづらくなることを知りました。私ひとりの声は小さいですが、当事者として病児の親が子どもの病気以外のことで心を痛めている現実をお伝えしたいと思います。

ランゲルハンス細胞組織球症とは

ランゲルハンス細胞組織球症(以下、LCH)とは、免疫を司るランゲルハンス細胞が異常繁殖して自分を攻撃した結果、骨破壊や皮疹、腫瘍などの症状として現れる病気です。
LCHに関する基本的な情報は第一人者である国立生育医療研究センターの塩田先生が書かれているので、以下のリンクをご参考にされてください。

我が家の場合、右胸部に手のひらサイズの腫瘍ができたことで判明しました。

病気が発覚するまで

振り返れば、「何かおかしい」という感覚は生後すぐに感じていました。
出産時、私は全く無傷だったにも関わらず、何故かおもちは傷だらけで生まれてきました。出産翌日、肌が乾燥してビニールのようにカサカサなり、あまりの珍しさに小児科の先生が輪になって取り囲んでいるのを見たときはギョッとしました。
今となっては因果関係は不明ですが、もしかすると病気の兆候はこの頃からあったのかもしれません。

産着から覗くカサカサの手。

そして、生後1ヶ月からずっと便に少量の血が混じり始めました。黒い血が混じっていると腸重積のような重い病気を疑うのですが、おもちの場合はほんの少し、鮮やかな鮮血が混じっていたので、排便するときに出口付近が切れているのだろうという見立てでした。
他にも薬を塗り続けても治らない乳児湿疹や耳かきをしていないのに出てくる耳垂れなど様々な症状があり、毎週小児科・皮膚科・耳鼻科をハシゴしていました。
4ヶ月検診前に「心なしか右側が膨らんでいる気がするね」と夫婦で話していましたが、検診では何も指摘されず、すっかり顔馴染みになったかかりつけ医からも「大丈夫、様子見しましょう」と言われ続けたため、いつしか「こんなもんか」と受け入れていました。もしかすると、この時もう少し疑っていれば発見は早かったかもしれません。

入院1ヶ月前の皮疹の状態。ずっと乳児湿疹だと信じて、毎日朝晩薬を塗り込んでいました。

転機となったのは2021年8月。月初から1週間以上発熱し、ようやく熱が下がって保育園に通わせたところ、「腫瘍ができているので病院に連れて行ってほしい」と呼び出されました。その日はかかりつけの小児科がお盆休みだったため、いつもと違う小児科を受診。そこで「見たことない症状なので、今すぐ大学病院に行ってほしい」と紹介状を渡されました。
「そんな大袈裟な」と思いつつ、大学病院に到着したのが18:00過ぎ。問診や血液検査など検査をして、最初は「皮膚湿疹の膿が右胸部に溜まっている」「念の為数日入院して膿を出す」と言われて、「そんなこともあるのか、でも大したことなさそうで良かったね」と夫婦で顔を見合わせていました。
しかし、CTを撮ったあとに先生の顔色が一変します。

「ちょっと大変な病気かもしれない」

子ども本人が熱もなく元気だったため、トリアージで優先度が低かった我が子。そのため、救急外来では恐ろしく待たされ、既に時刻は21時過ぎ。
あくびを噛み殺しながら待つ私たちの元に突如深刻な顔をした先生が現れます。「もしかしたら思っていた病気じゃないかもしれない。」それだけ言い残して、足早に去る先生。一気に不安な気持ちになる私たち。
結局、その日のうちに入院することになり、子どもを病室に連れて行ったのは深夜0時過ぎ。本来であれば翌日詳しい話をしてもらえる予定でしたが、後に主治医となる先生の好意で、その日のうちに疑わしき病気と今後の治療について教えてもらうことができました。

「お子さんはランゲルハンス細胞組織球症である可能性が高いです」

開口一番に言われた言葉に、私たち夫婦は「はぁ…」というリアクションしかできませんでした。深夜0時を回って疲れ切っていたことと、初めて聞く病気にどうリアクションをしたらいいか分かりませんでした。
大量の書類を元に説明を受けましたが、この日まともに覚えていたのは、治療には1年かかることと、後に主治医になるこの先生がLCHの子どもを治した経験があること、「LCHは治る病気です」と言われたことくらい。何より、さっきまで元気に腕の中で遊んでいた子を急に入院させることになり、心の中がぽっかり空いた状態で、現実を受け入れきれていませんでした。
病院を出たのは深夜1時ころ。タクシーで自宅まで帰り、煽るようにビールを飲んで眠りにつきました。

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?