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◆“一円を笑う者は一円に泣く”を鵜呑みにしている人専用の落とし穴

ヒロシ「ママ!こんなところに1円玉が落ちてる!」

ママ「あら、何かしらこの穴。危ないわねぇ。ヒロシ、落っこちたら大変だから行きますよ。」

ヒロシ「えー!ママ知らないの?“一円を笑う者は一円に泣く”って諺!」

ママ「それくらい知ってるわよ(笑)あの1円玉を拾うの?」

ヒロシ「うん!だってたとえ1円でもお金はお金だし、たくさん貯めたらすごい金額になるでしょう?」

ママ「あんた本当に落ちたらどうするの!ケガじゃ済まないかもしれないのよ!やめなさいったら!ほら、行くわよ!」

ヒロシ「ヤダヤダ!取りたいぃぃぃ!!」

ママ「じゃあわかった!そんなに1円がほしいならママがあげるから、ほら!」

ヒロシ「・・・・。(不貞腐れた表情)」

ママ「何よその顔、(クスクス)これだって同じ1円じゃないの。」

(ママは少しだけ笑いながらそう言った。)

ヒロシ「そういうことじゃないのぉぉぉもうぉぉぉぉぉ!!」

ママ「あっそ、じゃママここで見てるから取りに行きなさいよ」

ヒロシ「わかった!!」

(案の定、ヒロシは5mの高さから穴底に落下。)

ママ「ヒロシ!!ヒロシ!!返事して!!ヒロシ!!誰か・・・誰かああああああああ!!助けてええええええええええ!!」

(近くを歩いていた通行人が慌てた様子で近付いてきて、すぐに救急へ通報し、約3分後に救急車が到着するもヒロシは心配停止状態。病院へ搬送されるもまもなく死亡が確認されたのだった。)

 1円の価値を問うべきか、それとも、諺の意味を正しく理解すべきか、そういう話ではない、ということ。

 ヒロシの言っていることも、ママが言っていることも、どちらも間違ってはいない。1円はお金であり、たくさん貯めればすごい金額になる、一円を笑う者は一円に泣くというのも間違いではない。

 ただ、ヒロシが穴底に落ちている1円玉を拾いたいとごねた時、ママは“そんなに1円が欲しいならママがあげるから、ほら!”と、サッサと黙らせてその場を立ち去りたいが故の手段だったのかもしれないが、この時ママは少しだけ1円を笑ったのである。「なんでわざわざあんなとこに落ちてる1円玉を拾うの?たかが1円じゃないの、ははっ・・・」と。

 穴の様子からして取りに行くには危険であることもママは察知していたにもかかわらず、自分の息子がたった1円のために命を落とすことになったのである。

 たかが1円とわずかなお金を軽視して笑う者はやがて1円にも困るようになる、というのが本来の意味ではあるが、今回、ヒロシもママも1円そのものを軽視してなどはいなかった。

 理解すべきことを正しく認識できていなかったのだ。穴底の1円玉を拾いに行くリスクを。そのリスクと1円とを天秤にかけるまでもなく、誰が見ても割に合わない状況で、駄々をこねるヒロシを拾いに行かせたママは、「危険だから」「ケガしたら大変よ」と言いつつも、本質的な意味でそのリスクを認識してなどいなかったのである。

 つい先日、車を洗車していた父親が、洗車を終えて車を車庫に戻そうとバックギアに入れて移動させた際に、車の陰に隠れていた1歳の娘を轢いてしまい、そのまま亡くなったという記事を見た。

 洗車が週一の習慣なのか、よほど大事にしている愛車だったのか、定期的に自分で洗車をする人の気持ちはわからなくはないけれども、身の回りに潜むリスクに気が回らない、気付けない、そうなるのであれば、本質的に物の価値もわかってなどいないということになる。

 時に人は、うっかり死んでしまうことも、うっかり死なせてしまうこともある。ちょっと目を離した隙に・・・とよく聞くけれども、よく聞くほど子供はあちこち動き回るもの。

 その場で怒鳴りつけたり殴り飛ばしたりするのは躾ではなく、辱めとなる。有無を言わせずそばに置いて目を離さないようにする。それでも離れようとするのなら、「言うこと聞かないならもう帰ろうか」で良い。

 ただ、ケガや死の危険がある場合には、普段の2割3割増しで叱るところではないだろうか。本気で叱らないから子供は駄々をこねる。本気で向き合わないから子供が命を落とすことになる。「ケガをしてほしくない」そう言って抱きしめれば、それでも駄々をこねる子供は少ないんじゃないかな。

 言うことを聞かないのを子供のせいにしている親は、その辺をあまりよく理解していないのかもしれない。「同じ1円なんだから」と財布から取り出した1円玉で話を済ませて帰ろうとしたママがやるべきだったのは、是が非でも止めるということ。その時の気持ちを言葉で理解させようとしたのが間違い。

 今年のGW、東海地方は交通事故の嵐。長期連休に人でごった返す不可解な慣例、もう辞めないと・・・。せっかくのゴールデンウイークだし・・・という考え方がもう危ない。よくも何十年も続けてきたものだよね。毎年交通事故だ水難事故だ滑落事故だと。今年も川で子供や中学高校生が流されてるね。

 本当は事件であることを隠して事故に見せかけてるものもありそうだよね。立証のしようがない。レジャーでの死亡事故は一番きな臭い。GW明け、また電車での人身事故が多発しそうな予感しかしない。4月5月は多い。

 ただでさえ少子化なのに、普通の状態ではない。今年は特に目立つ。せめて小さい子供のリスク管理くらいはやらんとね。親だろうと先生だろうと保育士だろうと。

 暗いニュースばかりで参る。

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