大人製造機

街角に、本当に街角に”ソレ”はぽつんとある。
雨風に吹かれ、錆び付いた筐体がわたしをじっと見つめている気がして、
自然と眉間にシワがよった。
ダメだ、ダメだ。かわいくない。
”ソレ”がずっとそこにあるのをわたしは知っていたけど、
わたしには関係ないものだとずっと思っていた。
ずっとある”ソレ”をわたしが使う日がくるなんて思っていなかった。
悟られないようにゆっくりと当たりを見回す。
こんなところ、誰かに見られた絶対に笑われる。
そうして、わたしは深呼吸する。
やっぱり”ソレ”を使いたくはないけれど、
新色のチークが欲しいし、ネイルだってしてみたい。
去年の夏休み明け、あの子の少しカールした髪型が羨ましかった。
だからわたしはわたしのために、”ソレ”に入ることにする。

まばゆい光に包まれたあと、”ソレ”から渡されたものには
ひどくこわばった、かつ全然可愛くないわたしがいた。
でもちょっとわたしは大人になったきがした。

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