小学生の頃の「僕の名前の由来」

名前の由来と言われると僕はいつも思い出すことがある。
小学生のある時。国語の授業で、名前の意味を作文にしようという宿題が出た。
"輝"ならみんなを照らす存在になってほしいとか、"健"なら健康に育ってほしいという願いを込めたとか、そういうことをヒアリングし、作文にしてみんなの前で発表する。そんな宿題だった。
当時、絵に描いたような優等生だった私は、真摯にその宿題に取り組もうと自分の名付け親である母に問いかけた。
「お母さん、学校の宿題で名前の意味を調べてくるように言われたんだけど、僕の名前はどういう意味なの?」
私は期待していた。昔から変わった名前と言われてきた自分の名前にはきっと特別な意味があるんだろうと。
そんな期待を込めた私の質問に母はあっさりと答えをくれた。
「意味なんてないよ。響きだけだよ。」
その瞬間、まず私が最初に思い浮かんだのは、宿題どうしよう、それだけだった。
「僕の名前の由来は、響きで決めたそうです。」
それだけで終わってしまう作文だったら、みんなの前で発表ができない。さらに、宿題とサボったと思われる。
僕はさらに問いかけた。
「本当に意味はないの?本当に響きだけなの?」
「そう。私がようくんと呼びたかったから、いまの名前にしたの。」
お母さんが僕のことをそう呼びたかったから、名付けたそうです。
たとえ、それ加わったとしても、作文としては全然物足りない。
それにその内容量だと、作文として道筋を膨らませようにもない。どうしよう。
それまで、国語という作文という宿題が好きだった僕は、作文としてかける文章量の内容のなさに絶望した。
それとそこらへんで改めて、自分の名前に意味がないことにひどくがっかりした。
強く生きてほしいとか、自然の心を忘れないでほしいとか、大きな存在であってほしいとか、なんでもいいから意味が欲しかった。
自分の名前が好きだった。人とは違う特別な名前が好きだった。
だから、その気持ちを作文にしたかった。
でも、そこに意味はなかった。
そうして、完成した僕の宿題の作文はこんな感じだった。

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「僕の名前の由来」

僕の名付け親はお母さんです。
僕の名前はお母さんのお腹にいた時から考え始めていたそうです。
桃子、桃華、花、桜…
僕は検査のときは女の子に生まれる予定だったそうで、女の子の名前がたくさん考えたそうです。
また、3月に生まれる予定だった僕にあわせて、春の自然を感じる名前を考えていたそうです。
そして、僕は予定よりも早い2月に、女の子ではなく男の子として生まれました。
時期も性別も予定とは全然違うタイミングでした。
お母さんは、たくさん考えた僕の名前になる予定の候補の中から、唯一考えていた男の子の場合だった名前を僕につけました。
「葉大(ようだい)」
ようくんという響きだけで、お母さんが考えた名前でした。
だから、僕の名前に意味はないそうです。
僕の名前に意味はないけれど、僕は僕の名前の響きが大好きです。
これからも、僕は僕の名前を大切にしていこうと思いました。

おしまい

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