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見出しの重要性 ―的確な言葉は、何か―

私は、地方新聞社に2社で計12年勤め「読ませる文章」や「適切な見出し」について学んできました。
とは言え、巧みに記せるわけではなく、好まれる文章に長けているとは思っていません。短くまとめるのも下手だと自覚しています。

ただ、見出しについては少なくとも「素人ではない」と自負しています。
「本文を読ませる、引き込むべき言葉」を構築しなければならないとともに、新聞だけでなくブログやツイッターなどでも「見出し(タイトル)だけを見て、内容は読まない人」のほうが圧倒的に多いので「見出しだけで、ある程度の内容が正しく伝わらなければならない」というのも重要になります。
そのうえで、制限された文字数で端的に伝えるのは、非常に難しいものです。

今回、ブログタイトルと引用ツイートで思うところがあり、引用させていただいて検証を述べます。批判にはなってしまいますが、非常に重要なことですので、参考にしていただければと思います。
なお、ブログやツイッターでは「タイトル」と呼ぶほうが適切でしょうが、ここでは「見出し」という表現に統一させていただきます。

失礼ながら、次のブログと引用ツイートを、さらに引用させていただきました(ツイッターについては、市職員という公的な立場で記されているので、併せて言及します)。

見てのとおり「【妖怪検定2017】281人が挑戦」「なんと281人の皆さんが受験されたようですよ」とあります。
この見出しを何の先入観も持たずに見たとき、どう思うでしょうか。
特に、境港と調布の2会場で試験を行っていることを知らなければ、「境港で281人が受験した」と捉えてしまう人が多いと思います。

「本文を読めば、実態は分かる」でしょう。ですが実際は「読まない人のほうが絶対数は確実に多い」、そのことが重要なのです。「分かる人に伝わればいい」のではなく「読まない人に、不明確な情報を与えないこと」が大切です。
見出しで「ミスリード」を起こしてはなりません。「不特定多数の人」が見られるように設定しているのなら、「誰が見ても、誤解しない」ように記すべきなのです。

このブログ内に新聞記事の写真があり、脇見出しに「鳥取と東京」という表記がなされています。これは「新聞」として正しいです。とは言え、「地方紙」や地域ブログ、ツイートで数字を使うのであれば「境港会場で105人」と記すほうが良いと思います(なお、初級と中級は同時受験者がいるので、より的確に記すなら“延べ105人”とすべきです)。

さらに言えば、地方紙や地域ブログなら「上級は境港会場のみ」という特徴を生かし、見出しに「上級試験には32人が挑戦」など、「境港ならでは」の言葉や前向きな値を使うと、もっと良いでしょう。

一方で、全国紙などなら「境港と調布で281人」「2会場で281人」を見出しに採るのが、最も適切となります。ただし全国規模の発信であっても「境港と調布」を示す言葉は「端折ってはいけないポイント」です。

つまり、「281人」という数字を使いたいのであれば、「境港と調布」を示す言葉が絶対に併記されていなければ「見出しとして成り立たない」のです。

「境港妖怪検定に281人が受験」では、地域特性を欠くうえに正確な情報が伝わらない危険性が高く、さらには「誇大広告」をしているとも言えるのです(ちなみに境港商工会議所の会報もそう表記していますが、こちらは主催者という位置づけから、見出しは総数の「281人」を使うほうがいいと思いますが、やはり「2会場」が重要です。自分なら281という数字は使わず《主見出し:32人が論文試験に挑む/脇見出し:境港と調布で「妖怪検定」実施》といった感じにします)。
もっと言うなら、前回より人数が増えたのならともかく「前年比では合計30人減」でした。しかも「過去最少の受験者数」でした。台風の影響で受験を取りやめた人がいるとしても、確実に「増加」とは言えないので「なんと281人」などと、”さも多いように感じさせる大げさな表記”は避けるべきだとも思います。
主催者が「負のデータ」を記したくないのは分かりますし、一般のブログでそこまで記す必要もないですが「新聞社」は「過去最低人数」だったことを記すべきだと思います(コラムなどでの追記でもいい)。「さも多くの人数が受験したかのような誘導」は、報道機関としてはすべきではなく、客観的な視点から問題定義するくらいが本来の姿。山陰の地方紙は、全体的に“提灯記事”が目立ち、問題定義や検証がないのは非常に残念に思っています。

また、この見出しから本文へと導いたとき、深く読み解ける人なら「281人って書いてあるのに、境港では105人しか受験しなかったのか」と、マイナスイメージを抱くかもしれません。一方で「境港で105人」という見出しから引き込めば「調布も合わせると281人も受験したんだ」というプラスの印象を植え付けることもできると思います。
「見出しで誇大広告しないほうが、読み手の印象は良くなる」とも言えるのです。

具体的な数字は、つい「大きな値」を使いたくなるものです。しかし、上記のようなイメージ効果も含めて「具体的であるほど、正確に伝わるように考えること」に気を付けなければなりません(個人的には「イベントに〇万人が参加」など、あいまいな数字を誇大広告的に使うのもよくないと思っていますが)。そして、退避できるデータなどにも目を向けるなど、必ず「検証」することが大切です。

また、情報というものは、伝達され、独り歩きするものです(実際、このツイートは、ブログの「281人」という数字だけに引っ張られてしまった結果で、短絡的に捉えて自身での検証がなされていないことも示しています)。そして“伝言ゲーム”と一緒で、どこかで間違って伝わっていくものです。食い止めたり軌道修正するのは、容易ではありません。
そういった点も含め「見出しだけを“見た”印象」をイメージし、適切な言葉やデータを使うよう考えなければならないことを忘れてはなりません。


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