四文転結の役 選評:海野久実
「四文転結」と言うのは、そのネーミングから当然「起承転結」を強く意識したものだと思います。私が四文転結を書く上では「起承転結」があり、更にちゃんと小説になっているかを大事にして書いて来ました。短くても小説であって欲しいというわけですね。
実際に投稿されている作品を見てみると、私が理想としている起承転結のある小説になっているものもあれば、セリフだけのアメリカンジョークっぽいものもあり、また詩的なイメージが先行しているものもありました。
そう言いながら、私が選んだ1位の作品はアメリカンジョークっぽいですね。まあ、面白いものは面白いという事で(笑)
そして、ストーリーらしい物は無いけれど詩的なイメージにあふれた作品も嫌いじゃないですし、自分ではなかなか書けないのであこがれみたいなものもあり、今回のベストテンにそういうものも選びました。
投稿された全作品を4~5回読んだでしょうか。読みながら気に入った作品をピックアップして行くと36本残りました。それをワードに文字や画像として貼り付けて行き、GIF動画の作品は一時停止画面をキャプチャ画像にして張り付けて、お気に入り作品集が出来上がりました。更に作品それぞれを読み直し、これはと思う物に赤丸をつけ17本に絞り、更に読み直し、これだよなと思う作品にもう一つ赤丸を追加して行くと、丁度10本になりました。
一番苦労したのはこの10本に順位をつける事でしたね。どれもお気に入りなんだから優劣をつけなくてもいいんじゃないかと思いながら、何とか決定しました。
1位: makihide00 @makihide00
「死んでも」
リメイク!
— makihide00 (@makihide00) November 25, 2020
タイトル「死んでも」#四文転結の役 pic.twitter.com/tONOeWAG2X
文句なく笑える作品。生前葬の真っ最中に死ぬのだけは避けたいと、本人は思うんでしょうが、家族は案外本番の葬式になってもいいじゃんと思っているかも。
makihide00さんの作品では他に「音」「縁は異なもの」「一緒」がお気に入り36本の中に入っています。どれも捨てがたい作品でした。
2位: A級コネクタ@『ハッカー・ゲーム』発売中! @aq_conecone
「奇病」
『奇病』
— A級コネクタ@『ハッカー・ゲーム』発売中! (@aq_conecone) November 26, 2020
それと、もう一つだけみんなに言っておくことがある。
私は記憶が二文しか保てない病にかかってしまったらしい。
それと、もう一つだけみんなに言っておくことがある。
私は記憶が二文しか保てない病にかかってしまったらしい。#四文転結の役
これは四文転結をネタにしたものでは抜群に面白かったですね。この場でしか成立しないものの、面白いものは面白いという感じですか。
3位: 草野理恵子 @riekopi158
「カーニバル」
#四文転結の役
— 草野理恵子 (@riekopi158) November 22, 2020
『カーニバル』 pic.twitter.com/VtGWeckQdY
たくさんの投稿をされた草野理恵子さんの作品は数えてみると31本でした。どれも捨てがたい独特の世界感のある作品ばかりで、その中で選んだこの作品は、実は一番好きな作品ではなく、四文転結と言う形式に照らして、起承転結のはっきりした作品と言う事で選んでみました。
お気に入り36本の中には草野さんの作品は、これ以外に「浅瀬」「卒業式前日」「煉瓦病」「図鑑」「生成色の背中」「石を捨てる」が入っています。
4位: 海棠咲@感想等用 @kaidousakinovel
「メダカ」
#四文転結の役
— 海棠咲@感想等用 (@kaidousakinovel) November 21, 2020
「メダカ」
蛇口をひねると、水でできたメダカたちが現れた。
水だから飲んでも大丈夫のはず。
そう言い聞かせて、目の前をゆっくり泳いでいたメダカをパクリと食べてみた。
確かに水だったのだけれど、しばらく口の中でジタバタしているのが、何だかイヤだった。
海棠咲さんの作品は43本あり、多分、今回一番たくさん投稿された方だと思います。
基本的に海棠さんの四文転結作品は長い小説の一場面を読んでいる感じがして、「起承転結」がある作品は少なく、少々物足りない気がするのですが、この作品はいいですねえ。イメージがとても好きです。幻想的でありながら実感があります。
お気に入り36本の中には「校長先生の話」と「鳥籠の外」が入っています。
5位: たくおだぎり @rKGlC6f6HEUiU2r
「親子と新聞」
#四文転結の役
— たくおだぎり (@rKGlC6f6HEUiU2r) November 30, 2020
『親子と新聞』 pic.twitter.com/lU1Gq0XBOa
セリフだけにしてしまうとアメリカンジョークっぽくなりますが、この作品は地の文とセリフがあり、小説らしくなっていますね。
しかし漫画家らしい主人公のお父さんに「お父さんの漫画を楽しみに最後に読もうとあえて後回しにしている可能性もありますよ」と、言ってあげたい気もします。
6位: 波流人 @_halto
「愛ある別れ」
【愛ある別れ】
— 波流人 (@_halto) November 29, 2020
しばらくは二人の距離をおこう。
向かい合ったまま後ずさりしましょう。
姿形が見えなくなるまで、ずっとずっと。
いつか背中に懐かしい温もりが甦るその日まで。#四文転結の役
これは小説というよりも詩に近い気がしますが、ちゃんと「起承転結」になっていますね。少し意外な温かい結末。
この作品をそのまま現実として読むとナンセンスなお話になってしまうのでしょうが、この二人は気持ちの上で、向き合ったまま距離を置くことを選んだという事ですね。
7位: Yuon @yuon_katatumuri
(無題)
#ことば公園
— yuon (@yuon_katatumuri) November 22, 2020
喫煙室は通称「裏会議室」。
タバコを吸わない私は、その部屋に出入りすることはない。
それが理由かはわからないが、私が彼らに意見すると、しばしば煙たがられる。
そんな彼らが『愛煙家』を名乗るだなんて、本当におこがましい。#四文転結の役 https://t.co/eEWSrlt1WW
一読、笑ってしまいましたが、よく考えると命にかかわるような有毒な煙だってあるわけで、愛煙家とは言え、どんな煙でも受け入れるわけではないのが当たり前とは思うものの、やはり面白い。
8位: Night Flight Might M @Nuit_VolVolonte
「白線歩き」
せっかく136字で #呟怖 の体裁に収めた #四文転結 なのに、タイトルと複数タグは入らない。もう削る気力がない。ちょっと悔しい。#四文転結の役
— Night Flight Might M (@Nuit_VolVolonte) November 27, 2020
「白線歩き」 https://t.co/eLnvsjQpM8 pic.twitter.com/mr5GQaDL6B
こういう作品が、私が目指している理想の「四文転結」に近いんですけどね。長くしてショートショートに発展できそうな可能性のある作品。
これはホラーですかね。「あの子」にそのままついて行ったらどうなっていたやら。
9位: 梶舟景司 Keishi Kajifune @Kshi_kaji
「お葬式」
#四文転結の役
— 梶舟景司 Keishi Kajifune (@Kshi_kaji) November 20, 2020
「お葬式」 pic.twitter.com/HAoxhhHKEh
これも小説感のたっぷりある作品。文章がもっと整理されていれば上位にしたい作品でした。
祖父もロボットなので、部品さえ取り替えれば半永久的に生きる事が出来るはずなんでしょうが、昔の人間に倣って、あえて人間と同じぐらいの寿命で生きるのを終わらせているのかなあと想像しました。
10位: うにゃ@賛美歌が好き♪ @amatsuma_simizu
「それは豆腐」
『それは豆腐』
— うにゃ@賛美歌が好き♪ (@amatsuma_simizu) November 29, 2020
思わず本音がこぼれた。
私へのお土産は木綿のハンカチなのに、どうして妹へのお土産はシルクのスカーフなのよ?
兄はキョトンとした顔で答える。
『だってお前、こないだ絹より木綿が好きって言ってたじゃないか。』#四文転結の役
この作品はいいんですけどねえ。タイトルが『それは豆腐』ではオチがバレバレではないでしょうか。もったいないですね。なので、面白いとは思いつつ、あえて10位に持ってきました。
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