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ストレス耐性の遺伝子について



--- Question ---
結果が、COMTは些細なことは気にしない、ストレス耐性が強いとなってる一方で、5-HTTはストレスを受けやすいとなっていて、この矛盾をどう解釈したらいいものかと、悩みました。
遺伝子結果なので間違えてることはないと思うんですが、3項目中2項目にストレス耐性についての結果がありますし、このような結果になる方は少なくないと思いますが、どう捉えれば良いのでしょうか??

--- Answer ---
子どもの能力遺伝子検査(X)では、感性(性格)に関係する遺伝子を3つ検査します。


感性(性格)に関係する3つの遺伝子

■ 遺伝子COMT:やる気や集中力に関係する
■ 遺伝子CHRNA4:お金や時間への価値観に関係する
■ 遺伝子5HTT:幸せ感に関係する

どの遺伝子も僕たちの頭の中(脳内)の物質が分泌されたり伝達されたり分解されたりする働きを促進させることもあれば、反対に抑制することもあります。今回は、違いが分かりにくい遺伝子COMTと遺伝子5HTTにフォーカスして書いていきたいと思います。


遺伝子COMTは
やる気や集中力、ストレスに関係します

〈こんな特徴があります〉
● 遺伝子COMTは、脳内におけるドーパミンの分解力に影響する
○ 脳内の情報処理速度に顕著に関係する
○ その機能がストレス分解にも深く関係する
○ モチベーションの維持ややる気にも繋がる


遺伝子COMTはドーパミンを分解する
COMTは、私たち頭の中(脳)にあるドーパミンという物質を分解するための手助けをする遺伝子です。ここで注目すべきは「ドーパミン」と「分解」です。ドーパミンという言葉自体は聞かれたことがあるかもしれません。脳の中のドーパミンが増えれば、集中力が増したり、興奮状態になりやる気が出たりします。スポーツ選手などは、より良いパフォーマンスをするために、試合前に円陣を組んだり、仲間同士で称え合ったりすることでドーパミンの分泌を活性化させています。しかし、ドーパミンは諸刃の剣。分泌し続けると興奮状態が続き、大きなストレスを感じてしまいます。また、恐怖や悲しみでもドーパミンは分泌されることがわかっています。そのため、分泌されたドーパミンは必ず「分解」されるようになっています。この「分解」という作業を担っているのが遺伝子COMTなのです。分解力が高ければ、脳内のドーパミン濃度は低くなり、ストレスは軽減されます。(比例して集中力ややる気も軽減されます)逆に分解力が低ければ、脳内のドーパミン濃度はどんどん高まり、ストレスもどんどんかかってしまいます。そのため、バランスの取れたドーパミンの分泌力が必要になります。
※遺伝子COMTは「分解力」に深く関わっている遺伝子なので、ここでは「分泌力」は考慮しません。

例えば、ドーパミン濃度が高まる時はどういった時でしょうか?幼児期であれば、大好きな消防車などを見つけたとき、パズルなどに集中しているとき、その他にも、お友達とケンカしたり、大切にしているおもちゃが壊れたりと悲しくなる状況に陥った時です。そんな時、脳内のドーパミン分泌が活性化され、興奮(ストレスがかかった)状態となります。分泌されたドーパミンが効率よく分解されなければ、なかなか泣き止むこともできず、怒りも治らない傾向になることが考えられます。このように、遺伝子COMTは、「感情を浄化」する働きを促すのです。その一方で、ドーパミンが分解されることによって集中力が分散して、興奮状態も冷めてしまいます。スポーツやテストなどパフォーマンスとしての役割もドーパミンは秘めているのです。


ドーパミンって何?
4歳になる息子が、ミニカーで遊び出したらもう誰にも止めることができません。20〜30台を一列に並べては、順番にオリジナルのコースで走行テストを始めます。すべての車の走行を完了させたらピットイン。サスペンションを確認して、ギミックの解説をし出します。その姿はまるでユーチューバーですが、一通りの工程を終えると最初のステップに戻ります。キラキラした目つきでこれを繰り返している数時間は、ミニカー以外の話題は彼の耳には届きません。一体、頭の中はどうなっているんだろう?と思うこともしばしばですが、後回しになる夕食、お風呂、歯磨き、就寝に妥協してもらうしかありません。(親には特にめずらしい疑問でもないかもしれませんね。)このように、時に親の頭を悩ませるこの“集中力”や“やる気”の要因は頭の中の“ドーパミン”という物質に要因が隠されています。
“ドーパミン”という言葉はメディアや世界的な研究でもしばしば耳にします。しかし、その役割は“快楽”と繋げて紹介されることが多く、その他の影響は忘れられがちです。ドーパミンは子どもたちの行動に色々な影響を与えるのです。


〈ドーパミンが与える影響〉

○やる気
○記憶
○行動と認識
○注意
○睡眠
○気分
○学習 など


ドーパミンは、快楽だけではない広い範囲で私たちに影響を与えます。今回は、“行動”と“ストレス”についてフォーカスしてみましょう。



ドーパミンは“行動”を促す
“ご褒美”という響きはいつ聞いても良いものです。僕たちは、常に行動の先にある“ご褒美”つまり“報酬”に向かって行動する傾向があります。これは頭の中のドーパミンという物質が報酬をもらう前に機能しているためです。つまり、ドーパミンは僕たちの行動を促して、目的の達成や悪い結果の回避のために、やる気(集中力)を出させる役割を担っているのです。

例えば、ヴァンダービルド大学の研究では、ドーパミンとご褒美に関係する研究が行われました。実験では、ドーパミンがよく分泌される人とそうでない人の違い比較され、ドーパミンが効率よく分泌される人は、そうでない人に比べてたとえ報酬が低くても、やる気(モチベーション)を持って作業する傾向があるという結果になりました。


ドーパミンは“恐怖”にも反応する
行動ややる気を出すためのドーパミンは、その一方で“恐怖”にも結びつく不思議な脳内物質です。人は壮絶な恐怖を体験した時、その体験は脳内に記憶され、時間が立ってもふと思い出し日常生活に支障をきたすことさえあります。(例:PTSD)このような恐怖体験をした時、思い出した時にドーパミンが分泌されることが報告されています。これはストレスにも置き換えることができ、ドーパミンは強いストレスがかかった時には突発的に増加することもわかっています。つまり、ドーパミンが僕たちに与える作用は表裏一体的で良い時もあれば悪い時もあるのです。


遺伝子COMTの3つの遺伝子型
○ GG型:脳内のドーパミンが分解されやすい=ドーパミン濃度が低い
○ AG型:脳内のドーパミンがやや分解されやすい=ドーパミン濃度がやや低い
○ AA型:脳内のドーパミンが分解されにくい=ドーパミン濃度が高い

遺伝子COMTは、遺伝子型によって脳内のドーパミンの分解力が違ってきます。GG型のように分解されやすい場合は、脳の中のドーパミンはどんどん濃度が低くなる特徴から、やる気や集中力は起きにくいと考えられます。その変わりストレスが溜まりにくいというメリットもあります。逆にAA型の場合だと、やる気や集中力は出やすいけど、ストレスも出やすい傾向にあります。能力よりも精神面でのフォローが大切になってくるかもしれませんね。AG型は、GG型とAA型の間になるのですが、ややGG型に近い性質だと解釈します。ドーパミンの濃度バランスは一番良いかもしれませんね。

どの遺伝子型にせよ、子育ての時にはやる気や集中力を高めるような環境やきっかけを考えてあげて、どれくらい長時間集中して遊びや勉強ができるのか、それにご褒美をつけた時にどれくらい集中力が増すのかを観察することでバランスの良いご褒美の量を測れるでしょう。また、お友達とケンカしたり恐い思いをしたりしてストレスを感じている時にどれくらいの時間で立ち直るのか楽観度合いを観察することで、子どもとのコミュニケーションに余裕ができるかもしれません。


遺伝子5HTTは
幸福感を創り出すセロトニンを分泌します

●遺伝子5HTTは、幸せを感じるセロトニンの発現量に影響する
○脳内のセロトニンの分泌量を司る
○幸福の遺伝子とも言われ、遺伝子型によって幸せの感じ易さが変わる
○アメリカやヨーロッパ人に比べてアジア系人種はSS型になりやすい(約81.8%)

遺伝子5HTTはセロトニンを分泌する
遺伝子COMT対して遺伝子5HTTは、「ドーパミン」でも「分解」でもなく、「セロトニン」の「分泌」に深く関係する遺伝子です。幸福の遺伝子と呼ばれるこの遺伝子は、幸せを感じる時に分泌されるセロトニンの活性に影響しています。たくさんセロトニンが分泌されれば多幸感に溢れるというわけです。逆に、分泌が少なければ幸せを感じにくい傾向があるのです。
この遺伝子5HTTは、DNA FACTORの実験ワークショップでも落ち込みやすさ(幸せを感じやすいか否か)という自己分析に活躍しています。特徴の1つとして、アジア人の約80%が“落ち込みやすい遺伝子型”のSS型だと言われています。これに対して、ヨーロッパやアメリカの人は、LL型の比率がアジア人よりも高く“楽観的で幸せを感じやすい遺伝子型”を持っていることが分かっています。よって、アジア人でLL型の遺伝子型を持っている子はとても希少ですね。その生まれながらの幸福体質は是非大人まで継続して欲しいと思います。とはいえ、アジア人の多くはSS型ですので、落ち込みやすいという性質は人種的にスタンダードだと言えます。いずれにせよ、自分以外の人に対して共同体感覚を身につけることはとても大切です。(SL型の人はSS型とLL型の中間ですが、LL型に近い傾向があります。)


セロトニンって何?
幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが欠乏すると、ネガティブになったり、不眠症に陥ったり、さまざまなうつ症状が起きるといわれています。現代人はパソコンの浸透によって、知らないうちにセロトニンが分泌されにくい生活に陥りがちだということもわかっています。


セロトニントランスポーター
セロトニンは気分を調節する重要な神経たんぱく質です。5-HTとはセロトニンのことであり、5-HTTはセロトニントランスポーターの略語になります。トランスポーターとは、細胞外に放出されたセロトニンを再度細胞に取り込むたんぱく質のことをさします。その機能が落ちれば、細胞外のシナプス間隙にあるセロトニンが増えて、セロトニンシグナルがより持続的に伝わりますから、セロトニンの機能が上がると考えられます。
今回の遺伝子検査では、セロトニントランスポーターの発現量を調節するプロモーターという領域の違いを調べました。参考文献によると、この遺伝子の繰り返される配列の長さが長いほどストレス耐性があり(うつ病にもなりくい)、短い人の方がストレスに弱い傾向にあったとあります。

※病気としてのリスクというほどの差はないという研究報告もあり、さらに他の参考文献では、うつ病のなりやすさとセロトニントランスポーターの関係は若い人だけに当てはまるのではと考察されています。日常生活の中でのストレス耐性の差として解釈することが妥当です。


運動とセロトニン
運動不足は、セロトニン欠乏の原因の一つ。運動をすることで、セロトニンの分泌には効果的なのです。単純なリズム運動がセロトニン神経を活性化させる、最も重要な因子です。特にウォーキングはおすすめです。他には、ジョギング、スクワット、自転車をこぐのもいいでしょう。また、ちょっと意外なところでは、ゆっくりと簡単な動きを繰り返すフラダンスもいいです。激しく小刻みに動くようなダンスなどの有酸素運動は、肥満や糖尿病予防などには効果があります。ですが、セロトニン神経の活性化には、単純な動きを繰り返すことが必要なのです。ですから、激しい運動をしても、難しい動きをしても、セロトニン神経の活性化には効果がないのです。リズム運動は最低5分くらいでも効果的です。そして、最高でも30分以内でやめること。疲労しない程度で終えることがポイントです。ただし、このとき大切なのはしっかりと集中すること。セロトニン神経の活性化には集中が不可欠なのです。例えばウォーキングをするなら、人通りの少ない時間帯や場所を選んでください。早朝の公園や、自然の多い場所などは、気が散りにくくて良いでしょう。
毎朝30分歩けば太陽の光も浴びれるので一石二鳥です。これを3カ月程度続ければ、成果が出てくるといわれています。何となく気分が落ち込みぎみだったり、寝られないといった症状に悩まされている場合は特に効果的です。


遺伝子5HTTの3つの遺伝子型
○ SS型:脳内のセロトニンが分泌されにくい=幸せを感じにくい
○ SL型:脳内のセロトニンやや分泌されやすい=幸せを感じやすい
○ LL型:脳内のセロトニンがとても分泌されやすい=とても幸せを感じやすい

遺伝子5HTTは、遺伝子型によって脳内のセロトニンの分泌力が違ってきます。アジア人の多くがSS型であることがわかっています。10人のアジア人が検査を受けたとすれば8人くらいがSS型の可能性があります。世界中の人にに比べて悲観的な思考を持っていていて、それが全体の8割りも締めるのですから、被験者が日本人であり日本に住んでいるのであれば、一般的とも言えますね。普段の生活では、自分を悲観的だとは感じにくいかもしれません。(親の立場で言えば、子育ての中で子どもが悲観的と感じにくいかもしれません。)SS型とは対照的にとても楽観的なのがLL型です。ヨーロッパやアメリカの人が多く保有する遺伝子型です。グローバルな視野で解釈するととても分かりやすいですね。そんなLL型を保有する日本人も稀に現れます。もし、被験者がLL型の日本人なのであればアジアという枠組みで考えれば希少性がありますので、ポジティブに受けとって欲しいと思います。もちろんLL型と言っても全く落ち込まないという訳ではありません。傾向として人よりも落ち込みにくく、希少性のある遺伝子型だということです。


遺伝子5HTTの検査結果が「SS型」だった時の解釈
SS型は、5-HTTの2本あるDNAの両方ともが“短い(Short+Short)”であることを示します。このタイプは全体のタイプの約81%と、かなりの多数派に分類されます。遺伝子的には、他の2タイプに比べ最も落ち込みやすいタイプですが、周囲の多くがこの遺伝子型に分類されます。遺伝子タイプが多数派であるため、パートナーの友人や家族もSS型である確率は高くなります。そのため、SS型はパートナーの友人や家族との付き合いの中でも、深く共感し合うことができます。

もし、子どもの日常を観察していて、落ち込みやすいと感じているのなら、それはあなただけでなく、かなり多くの人が同じように我が子に対して感じているはずです。だから、「自分だけじゃなく、みんなも同様に苦しんでいる」と心を切り替えられることが大切です。そして、少しでも楽観的になれれば、81%の遺伝的特性をそのまま引き継いだ人を出し抜いて、成功を勝ち得る確率も高まっていきます。気分の浮き沈みを人のせいにしたり、パートナーにいらいらして当たるということも減らして遺伝子(個性)のファクターだと認識してしまえば、最初は億劫な物事でも、知識やスキルを着実に身に付けていくプロセスで、不安を最小限にして行動に移すことができます。知識やスキルが増えれば、SS型の豊かな感性を発揮する場面も増えていくことでしょう。

人の性格や感性は、様々な脳内神経伝達物質の分泌、伝達、分解などによって複雑に構成されています。そのため、一言に「感性」と言っても、それぞれの脳内機能が私たちの感情や行動をどれくらい支配するかによって、また、イベント(喜怒哀楽を増幅させるきっかけ)の発生によっても大きく変化します。よって、相反する遺伝子検査結果であったとしてもそれは矛盾ではなく、一つ一つが被験者を構成する「ファクター」なのです。この前提を踏まえて、子どもの一つ一つの行動や発言をよくよく観察し、仮説と検証を繰り返していくことが大切なのです。



遺伝子COMTと遺伝子5HTTの結果を並べてみる
お子様の遺伝子検査結果は下記のうちのいずれかに該当するはずです。少しでもシンプルにご理解いただけるようにそれぞれのパターンを書き出します。

[COMT遺伝子の結果 / 5HTT遺伝子の結果]
※感情面にフォーカスしています。

❶ GG型 / SS型
ストレスを感じにくく(立ち直りが早い)幸福感も同時に感じにくい(悲観的)※アジア人では最もスタンダードな組み合わせであり、日本人の典型的な感性を持っている可能性あり

❷ GG型 / SL型
ストレスを感じくく(立ち直りが早い)幸福感は感じやすい(楽観的)

❸ GG型 / LL型
ストレスを感じくく(立ち直りが早い)幸福感は感じやすい(とても楽観的)

❹ AG型 / SS型
ストレスの感じやすさが一般的で、幸福感を感じにくい(悲観的)

❺ AG型 / SL型
ストレスの感じやすさが一般的で、幸福感は感じやすい(楽観的)

❻ AG型 / LL型
ストレスの感じやすさが一般的で、幸福感は感じやすい(とても楽観的)

❼ AA型 / SS型
ストレスを感じやすく、幸福感を感じにくい(悲観的)※最も落ち込みやすく立ち直りが遅い可能性あり

❽ AA型 / SL型
ストレスを感じやすく、幸福感は感じやすい(楽観的)※感情(喜怒哀楽)の幅は広い可能性あり

❾ AA型 / LL型
ストレスを感じやすく、幸福感は感じやすい(とても楽観的)※最も希少性の高い組み合わせであり、アジア人では、独特の感性を持っている可能性あり



--- 最後に ---
如何でしたでしょうか。少しでもお子様への理解が深まり、お役に立てたのであれば幸いです。
私自身も1児の父であるため、無償の愛で息子を包み、育て、誰よりも幸せになってほしいと思っています。しかし、2040年代という未来に大人になるような子どもたちは、COVITがどうだとか言っている私たちの想像を遥かに超える社会で巣立ちます。日本では少子高齢化、教育制度、経済格差などが引き起こす社会変化による危機感は増す中で、今までの概念を常とする「子育て」に光を点すために、これからを生きる子どもたちには際立って優れる才能が複数必要であり、才能に気づき尖らせる環境を与えてあげたいと思っています。主体性や多様性を悪としない考え方や接し方、同調的圧力をかけない言葉遣いなど、親の感覚も研ぎ澄ませなければならないのかもしれません。


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