「真夏のEP大作戦を終えて」 liner notes.
INTRODUCTION
まずは、謝辞を。
リクエストをくれた方々、そしてこの作品に少しでも触れてくれた方々、何にも知らず今これだけを読んでブラウザバックしそうになっているそこの貴方も、全てに対し、感謝いたします。
この企画は知ってる方もいますが、読者参加型企画であり、そもそもリクエストがなければ成り立ちませんでした。本当にありがとうございます。
「読者のみんなと夏の思い出つくりてぇーなー。」
なんて思いつきから始まった企画、「真夏のEP大作戦!」。
この企画は読者の方から、好きな夏ソング・あるいは思い出の夏ソングをリクエストしてもらい、それを題材にしてショートストーリーを書いていくというものでした。
ですが、「普通に一本完結のストーリーを作るのも芸がねぇな」そんな思いつきでオムニバス形式にし、さらに「夏といったら海→海といったら麦わら帽子→麦わら帽子といったらUFOだ!」そんな突拍子もなく、短絡的な発想をしたがためにSFテイストを混ぜようと思い、そんな装飾付けが後に、自分の足を引っ張ることになるとは、夢にも思いませんでした。
「大作の予感がする・・・」
そんなことしか考えていなかったと思います。
これから、そんな苦労の痕を書き記していこうと思います。
1.「BALL BOY MEETS DEVIL GIRL」
題材となる曲は、センチメンタルバスさんの、Sunny Day Sunday。
この曲はイントロが、金属バットが野球ボールを打つ音から始まり、歌詞にもちょくちょく野球に関するワードが散らばっています。
ちなみにリクエストしてくれた方が教えてくれたのですが、この曲、お笑いコンビのティモンディさんのライブ時の出囃子に使われているらしいです。それ聞いてまさにぴったりだなと思ったことを覚えています。
とはいえ、早速、頭を抱えました。
野球やったことないんだよなーって。それで真っ先に思いついたのが「そうだ。主人公を補欠にしちゃえ」ってことでした。あんまり経験のないものに関して取材もなしに書くのはなんかなぁという思いと、単純に大変そうだなという怠りがあり、結局、僕はバントで確実に塁を進ませることに決めました。
補欠の青春物語ということは決まった。次はどう異性体を話に絡めていくか。これはコロナのせいで甲子園が中止になったというニュースがなんとなく頭に浮かび、いい要素を拾えたなという手応えがありましたね。
そこからは、割とすんなりと書けたと思います。
あと、666号のイメージはチェンソーマンのパワーちゃんです。描けば書くほどパワーになっていきました。パワーちゃん可愛いからね、仕方ないね。
早くレゼ編来ないかな。あのパートもボーイ・ミーツ・ガールだし、夏ですよね。
2.「COLD WAR」
題材となる曲はandymoriさんのすごい速さ。
この曲はすごい速さと謳っている通り、曲自体も割と短めで、だけど歌詞を見てみるとただ過ぎ去っていく夏を憂いているというわけではなく、さまざまな要素が絡み合い、それがこの曲の主人公の内心の混線具合とマッチしていて、密度が濃い曲だなという印象でした。
そして、冒頭の歌詞が「きっと世界の終わりもこんなふうに味気ない感じなんだろうな」というワンフレーズが聴き始めから、頭から離れなくて、その時、「異星人も来襲していることだし、戦争かなぁ」なんてことを思いました。
ただ、戦争を一話完結のストーリーで描き切るのは難しいなと。大雑把にやれば味気なくなり、細かく書けば文字数が爆発的に増えるし。
この話は世界観のボリュームをどう縮小させ密度を上げるかみたいのを意識しながら書いていました。
その結果、たどり着いたのが「戦争」という壮大なテーマを「クラス内のいじめ」とリンクさせて、共通点を提示しながら、視点はあくまで男女を追っていくという感じにしました。
書いていて思ったんですが、戦争という言葉を見るとスケールが大きすぎて想像が及びませんが、やってることはいじめも同じなんですよね。
異物の排除と自分の領地と立場の守護。
スケールを小さくするとこんなもんかって思いながら、ああ、だから戦争って終わらないんだって思ったりもしました。
3.「VIRGIN DEFEAT」
題材曲は真心ブラザーズさんのサマー・ヌード。
この曲は僕も好きで、毎夏聴いていたので、なんか「あ、ココ、進研ゼミでやったとこだ!」みたいな気持ちになりましたね。
そんな感じで曲を聴いているとサビの「はしゃぎすぎてる夏の子供さ、」というフレーズが耳に入ってきて「大人が昔を懐かしむ的な感じにしよう」ということだけが決まりました。
あと、サビ前に「神様にもバレないよう、地球の裏側で」というフレーズがあり、不倫か、秘密の恋か。みたいな感じで行こうとイメージが補強されてきて、発想段階ではすぐにまとまりましたね。
ですが、いざ書き始めてみるとなんか違う。
なんか、面白くないなと思い、
最終的には、「ネギトロ巻きが好きな宇宙人」という設定にしたがために、物語の終盤がネギトロだらけになったのは、書いている時、可笑しくて、でもこれはこれでいいかと思い、完成しましたね。
案の定、リクエストしてくださった方には「難産だったんじゃ・・・」と心配されましたね。まぁ、突飛な物語に仕上がったので、仕方ないですね笑
あと、この話は前回の話のキャラを登場させました。
こういう仕掛け?的なことやるの好きなんですよね。多分昔からただの絵本より、とびだす絵本が好きだった影響かもしれない。
4.「NAKED SWIMMER」
題材曲はミツメさんのクラゲ。
正直、この話が一番難産でした。
というのは、元々、楽曲自体を知らなかったのと、何より歌詞がすごい抽象的だった。
「うわ、まずいな」
そう思いました。
そこで頼ったのは、この曲をリクエストしてくださった方の日記でした。やるならとことん精神が働いて、全て読みました。
すると、なんとなくその方の書き方の癖から「この人、すごい私的な文章を書きながらなのに、気つかってるな」という印象像がぼやっと浮かび上がりました。
そうなってくると読んでいる間、「まぁ、でもネットに投稿しているからある程度はね、」という自分と「いや、日記なんだからもっと堂々と書けばいいのに」という自分が、両脇で同時に喋りかけてきて、悶々としながら読み終えたことを覚えています。
てことで、着地したのが「裸のまま書いていけばいいのに」という素朴な感想でした。
だからタイトルは「ネイキッド・スイマー」です。
そこからはすんなりと書けました。
そして、裸で水平線に向かって一心不乱に泳ぐ人の後ろ姿を少女が眺めているみたいな構図が浮かび、物語ができあがりました。
Aパートの独白の感じはエウレカセブン最終回手前、バレエ・メカニックでのアネモネを意識しました。わかる人にだけ伝わればいいです。
あと、歌詞からは「そんな日は稀だから」というフレーズだけを引用し、多用しました。
5.「ALL YOUTH NEED IS KILL !」
題材曲は、フジファブリックさんの若者のすべて。
この話はね、とにかく書いてて楽しかった。はしゃぎすぎて、一万字になるくらい楽しかった。
扱うのがフジファブリックさんのあまりにも有名な曲なので、欲張り癖が働いて、なんかこの曲だけだと勿体無いなと思い始め、ならば、志村さんが亡くなる前の曲をネタとして盛り込もうみたいな感じで作り始めました。
すると、志村さんの没後、椎名林檎さんが「あのタイミングでこの曲歌うのは辛かった」と言っていたインタビュー記事が頭によぎり、それも使おうということで物語の終盤に「ありあまる富」のワンフレーズをサンプリングさせてもらいました。
構成に関してはフジファブリックの楽曲をいくつも盛り込んで一つの物語にしていくということを決めてから、頭の片隅にあったのはOVA作品のフリクリでした。なので「フジファブリック版のフリクリ」を作りました。
いや、ほんと楽しかった。
この企画の制作期間中は、詰まると途中で再度曲かけて、何回も聴き返しもう一度イメージを浮かび上がらしてみたいな作業を繰り返してってが必要だったんですが、この話に関してはまるでありませんでしたね。本当にギターかき鳴らすみたいに勢いで駆け抜けた感じです。
あとテーマに関しては、やはり志村さんを意識したので「死」を念頭に置いて書いていきましたね。タグにもつけてあるのですが「パパゲーノ」という言葉、くくり?があり、それが「死にたいと死にたいと思いながらも、自死以外の選択をとる者」の総称なんですけど、僕自身もこの思想に近くて、なので「死」を恐れるのではなく「死」に対して親しみを持って接する物語があったら、そんな自分も救われるし、またそういった方にも少しは寄り添えるんじゃないかなと思い、書いていました。
6.「再見!」
題材曲はJUDY AND MARYさんのラッキー・プール。
うわ、やっぱジュディマリかっけぇ!と思いながら初めて聴いた時、「永遠なんて分からないけど優しい人になろう」というフレーズが強烈に頭に残って、その時からこの歌詞は絶対に生かそうと思っていました。
この物語で難しかったのはテーマでしたね。
女の子が家庭用のビニールプールにの中で浮かびながら、しみじみ夏の終わりを感じるみたいな話にしても良かったんですけど、やっぱりSFチックな物語なので、それじゃあ作品全体のテーマとの共存が成立しない。この時、「誰がSFにしようって言ったんだよ」と自分に対して腹を立てましたね。
となれば、困ったときはリクエストしてくださった方の分析だ。ということで、noteを覗いてみると投稿数がまず、少ない。どうしようと思って、この方に関してはリクエストをXで受け付けており、そちらの方が圧倒的に投稿数が多い。
そんなことを鑑みて、SNS=承認欲求という少々、強引な紐付けでテーマを決めました。
その時浮かんだのが、「かくれんぼがものすごく得意なんだけど、隠れるのが得意すぎて逆に見つからなくなってしまう」主人公でした。
特技のおかげで目立つけど、その特技自体は隠れること。
そんな矛盾を抱えた子がいたら面白いなと思い、そこからはすんなりと書けました。
OUTRODUCTION
この物語全体のテーマは「異物に対して世界がどう受容していくか」です。なのでマガジンのタイトルを「真夏のEP大作戦」から「星異物」へと変えています。異物(ムギワラ自体)と遺物(ムギワラの使者の母星から疎開してきた生命体)をかけたりもしてます。
僕は幼い頃から、こういう物語がすきでした。たとえばさっきもあげた「エウレカセブン」や「フリクリ」もそうですし、ガンダムだって、結局はニュータイプに対してその他人類がどう反応していくかみたいな物語だと思ってます。
それに「異物に対しての受容課程」は観るのも楽しいのですが、とても大きな社会実験をしているようで、書いているのも楽しい。
人類というものは、当たり前ですが一枚岩ではありません。だからそれぞれに思惑があり、信念がある。そういった人々が有機的に反応、または反発しあって、事態にどう対処していくか、それを考えるのはまるで創造主になった心地があり、とにかく楽しかったです。
また、書いていて思ったのですが「異物を受け入れる」って、すごくミクロな視点で考えると「知らないアーティストの曲を聴くこと」と同じだなと思ったんです。
なんとなくバンド名は耳にしたことあるけど、どんな曲調なんだろうと思考し、耳に飛び込んできた一音が想像と全く違うとする。
となるとその曲は聴者に対して異物ですよね。だけど聴いていくうちになんとなく耳に残るフレーズが増えてきて、意外にもそんなものが好きな曲の一つとなる。つまり、受容していく。その過程って、同じだなーと思ったんです。ま、これは単なる後付けですけど。
ART WORK
SPECIAL THANKS!
track.1 かぎっこさん
track.2 Karekoさん
track.3 🚢さん
track.4 m i m i さん
track.5 memeさん
track.6 ゆれるさん
and…
STORY WRITER : YANAGI SAWA (野凪 爽)
WELCOME!
🌞🛸
つづく?
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