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5/8~5/10 「三日目、雪国からやってきたベーシスト」

5/10 水

その日は正午過ぎから髪を切る予定でしたが寝過ごしてしまい、起きたら午後二時でした。この連休はとにかく予定通り事が進みません。
なのでとりあえずシャワーを浴びて、美容室に今更だと思いつつも、詫びを入れます。
その後、着替えを済ませた僕は星野源を聴きながら待ち合わせ場所の駅へと向かいました。

早くついたのでなにか腹に入れておこうと思い、スパチキを食べたのですがシャツにソースをこぼしてしまいました。(ほんとこの連休はとにかく予定通り…以下略)
食べ終えると連絡が入り、僕は(会うのは2度目)の彼と番狂わせが続くこの連休の最中、無事に合流出来ました。

彼はアースカラーを使った服がよく似合いそうな落ち着いた雰囲気の青年で、北海道から上京してきたバンドマン(ベース担当で今はメンバー探し中らしい)です。
なので
バンドマン
×
ベーシスト
×
名前の雰囲気、
それらを加味して彼をこれからYMOと勝手に名付けることにします。(やったね。ベースなら細野ポジだね!)

そんなYMOと僕はこの日やっていた「呑み屋祭り」という催しに参加しました。
催しの内容は、チケットを先に買い、対象の飲み屋で1杯ずつチケットを使っていくというハシゴが前提のスタイルで、新しいなとちょっと思いました。
ということで、ここからは「何を飲んだか」と「お店の印象」と「話したこと」を1軒ずつ書いていきたいと思います。


一軒目:魚の居酒屋

飲んだもの:ウーロンハイ
おいしかったもの:トロタク巻き
雰囲気:何故か、健康ランドの匂いがした。

ここで話したことで印象に残ってるのは、「こんな女は嫌だ:ガリの違いがわかる女」でした。
なんにせよ会うのは二回目なので、まだ会話は互いに手探り状態です。だから前半はもうほぼ覚えてません。ただお互いに元雪国で暮らしてた同士+カルチャーっ子なのでそんな話をしてたと思います。
そんな中、食べ終えたトロタク巻きの皿の端にガリが残っていて、2人でガリって美味しいよねって話になりました。
その時、頭の中に「こんな女は嫌だ:ガリの違いがわかる女」っていうショートコントみたいのが浮かんで、僕は会話の中に挟み込んで見ました。
するとYMOは笑ってくれて、とりあえずツカミはどうにかなったなと僕は安堵しました。
(こういう自意識が二日目に実感した「嫌われたくない症候群」に繋がってるんだろうな。あー、やだやだ。)


二軒目:炭火の焼き鳥屋

飲んだもの:二軒目もウーロンハイ
おいしかったもの:つくね
雰囲気:顔を覚えられたい店主さんが居た。

お酒が入った僕らの会話はまだまだ意気投合とまでは行かず、冬の日の軽トラックがやっと暖気を始めたぐらいの盛り上がり具合です。
そんな時に僕らが話してたのは「他人の本棚」についてでした。
僕は他人の本棚を見るのが好きです。それはきっと趣味や嗜好の観点から相手がどんな人なのかとあれこれ空想するのが好きだからです。
そのことをYMOに行ってみると彼は見るのはいいけど、見られるのは困ると返しました。理由を訊いてみるとYMOは「裸を見られてるようなものですからね」と、さらっと答えました。
その時、僕は納得せざるを得なくなったのと同時に、僕が思っていたよりもYMOがカルチャーに重心を置いていることを知れて、そんな彼と知り合えてよかったなと改めて思いました。
これからもよろしくね。


三軒目:ネオおでん&串揚げ屋

飲んだもの:多分まだウーロンハイ
おいしかったもの:カマンベールチーズ揚げ
雰囲気:
昭和推しであり、アイドル推しで、コンセプト渋滞してたけど、面白いお店。

まだまだ三杯目。車内は温まってきたけど依然としてフロントガラスの霜は取り切れてない。
そんな僕らは好きな音楽へと話題をシフトさせていきます。
そこで挙げられたのが「#私を構成する42枚」というトピックでした。
これは音楽が好きなTwitter民たちが自分を構成していると思うアルバムを42枚選出し、画像にまとめてツイートするというムーブメントで、ノリはさっき書いた「他人の本棚」と同じものです。
僕らはお互い、ちょっとやってみたいと思いつつも、まだこの波に乗れていませんでした。
それは「めっちゃ好きな曲はあるけど、そのアルバムは対して聴けていないから、それを『自分を構成している42枚』に加えていいのか問題」のせいでした。
昨今、僕もYMOも音楽を聴く時に開くメディアはサブスクばかりです。
そうすると自ずと1曲ばかりを聴くようになり、アルバムを通して聴くという習慣はどうしても薄れていくものです。
改めて、僕らはそこで音楽に対して真摯ではなかったなと思い、そしてそんなことを悩みとして共有できることを僕は嬉しく思いました。
そんなYMOが後日、「#私を構成する42枚」を発表していました。アルバムの内容を知っている人間からすればチョイスに一貫性があり、パーソナリティを察せられる構成になっていて、まさに彼を構成する42枚になっていました。(ちなみに、まだ僕はできてないです)


四軒目:中華屋

飲んだもの:ここで今更のビール
おいしかったもの:餃子
雰囲気:
狭かったけど和気あいあいとしていて、でもそれがうるさく感じなかった。引っ越すならこの街だなと思った。

やっとエンジンをかけて走り出した僕らの軽トラック。
このお店でなんとなく、この人と末永く仲良くできそうだなぁと思ったんですけど、ここでの会話はいつまでたっても思い出せません。
会計を済ませながら「次のお店でこの話の続きじっくりしましょう!」と言い合っていたのに、次のお店着いたら2人ともすっかり忘れていました。なので「大切なものは、目に見えない」この言葉を置いて、ここでの話を締めておきます。

ゴマだれにつける餃子おいしかった。ゆるして。


五軒目:しっぽり飲むのに最適な居酒屋

飲んだもの:日本酒(銘柄は覚えてない)
おいしかったもの:炙りしめ鯖
雰囲気:
テーブルから店主さんに話しかけなければならないので、ろれつが生きているうちに行こうって思った。

北海道から東京にやってきたYMOが今、目指しているのはライターになることらしく、そんな彼の話を訊いているうちに話題は「タイトルってつけるの難しくね?」に流れていきました。
カルチャー系の記事しかり、小説しかり、noteしかり、やはりタイトルは重要になってきます。そしてこれは、目まぐるしく情報が流れる現代社会において、中身よりも重要性が高いかもしれない。YMOと会話していく中で、僕はそんなことを思いました。
僕らを乗せた軽トラックは細雪をワイパーでどかしながら真っ直ぐ続く下り坂を進んでいき、話題はタイトル付けよりも、さらに奥深くの「言葉が持つ性質」についてまで潜っていきました。
ここでいう性質というのは「漢字」と「ひらがな」と「alphabet」と「カタカナ」を見た時に感じる印象の差異についてです。
「漢字」はなんとなく硬派な印象があり、「ひらがな」はやわらかく、「alphabet」はsmartでIntelligenceな印象を受けます。
おそらく多くの人間は活字で何かを発信する時、この三者を使い分けていると思います。
で、あれば「カタカナ」はどうなのか。
そう考えた時、「カタカナ」って自由じゃね?って思ったんです。
それは、アイツらって英語を表記する時にも使えるし、くだけた日本語(例えば流行語とかになる言い回し)にもよく多用されるし、オノマトペにも用いられるからです。
つまり、硬派・やわらかさ・smartと印象が決まってる三者に比べ、表記した時の印象がその言葉の持つ性質に馴染みやすい。
そんな気がしていて、僕は今書いているショートストーリー集のタイトルにも必ずカタカナを使うようにしています。
そのことをYMOに話すと、彼も共感してくれて、とても嬉しかったです。


六軒目:長卓で学生がはしゃぐ居酒屋

飲んだもの:おぼえてない
おいしかったもの:焼きおにぎりだと思う
雰囲気:
奥の長卓で大学生たちがはしゃいでいて、深夜でも活気があった。働いているお兄さんと渋谷の居酒屋のキャッチが冬に着ている服装のタイプで小盛り上がりした。

車の窓ガラスは外気温と車内の気温との差で結露し、車内はすっかり温まりました。
その頃になると、なんとなく互いに終わりの時間を意識しだして、それでもまだまだ話題はつきません。
とはいえ、それぞれの明日があります。なのでこの店がハシゴ旅の終着となりました。
ここでは、「人の話をはなから否定するやつは嫌いだ」という話をしていたと思います。
僕もYMOも他人の悪口を聞くのが好きではありません。それはきっとほとんどの人がそうだと思いますが、僕らはそういった話題を耳にしてしまうとなんというか、くらってしまうんです。
つまり、他人に対して言われてる悪口が自分に言われているように感じてしまうんです。なので会話の中で否定表現が多いと僕らは疲れてしまいます。
だからこそ、僕もYMOも他人の話はまず聴いてみようと、飲み会に誘われたらとりあえず1次会だけでも顔を出してみようと、そんな大人になろうと、誓い合ったところで、その店を出ました。

こうやって振り返ってみると、やはり僕にとってYMOとの出会いはなかなかに貴重だと感じました。
なので、これからもこの関係性を互いのペースで深めていけたらいいなと思います。

いやぁ、ほんと楽しい三連休だった。
課題も見つかったし、いろいろとがんばろう。

おわり


そんな夜に聴くべきだったアルバム











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