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チャット検索は従来の検索と違うやり方で脳をハックしてくるぞ、という話

こんにちは。

Microsoftが自社の検索エンジンである「Bing」にチャット機能を搭載してから、だいたい1か月ほと経ちました。私も即座にウェイトリストに登録し、使えるようになってから毎日使っています。

PCを起動したらまずは天気を調べたり、

ニュースを聞いてみたり、

背景の色が違うのはBingのモードが違うからです。

SNSを巡回して気になったことがあれば、どんどん問いかけて聞いてみます。

チャット検索サービスとしては、今はMicrosoftのBingが限定公開されているほか、Perplexity.aiYOU.comなど、いくつか類似サービスがあります。また近い例では、ウェブブラウザのBraveが、ブラウザ内の検索結果にAIによる結果サマリーを表示しています。

一説によると従来の検索を塗り替えるとも言われていますが、本当なんでしょうか?

いろいろ触ってみたのですが、これらの検索は従来の検索と決定的に違うなと感じた点をひとつだけご紹介します。


従来の検索との圧倒的な違い

使ってみて最も驚いたのは、

検索に使う脳の処理量が圧倒的に少ない

という点です。

もう本当に、これに尽きる!

チャット検索を使えば使うほど、従来の検索(Google検索など)は、思った以上にたくさんの脳の処理量を使用していたんだなということがとてもよくわかります。

なぜ脳の処理量が少ないのか、ちょっと考えてみました。


検索に必要な思考のプロセスが少ない。

図示してみました。例えばあるカメラのスペックと、似たような性能のカメラがあるかどうかが知りたかったとします。

例えばGoogle検索の場合、何か調べたいこと(ここでは、新しいカメラのスペック)があったときに、

「検索クエリを書く」 例)カメラ名 画素数 センサーサイズ

「有益な情報ソースを探す」 例)広告を無視し、メーカーのサイトを探す

「サイトから情報を探す」 例)スペックのページを探し、表を見る

と、3段階で脳を使用しています。

一方でチャット検索の場合は、調べたいことをそのまま入力するだけで(脳をあまり使わず)一定の答えを得ることができます。脳をまったく使わず、思った言葉をそのまま打ち込めば一定の答えが提示されます。

完璧とはいえないが、比較検討のとっかかりにはなる。

「質問文よりも検索クエリのほうが短くて入力が楽」という考え方もあるかもしれませんが、やはり私たちの脳内では「質問文から検索クエリへの変換」が行われているようで、長く使い続けていると、数文字多くても口語で問いかけることが多い気がします。

実際ほとんどの仕事はチャット上で行っているので、我々はチャットで語り掛けることについてかなり慣れているんだな、と感じました。

ただし、注意点もあります。チャット検索ならではの脳の使い方として、「正当性の検証」というプロセスがあることがわかってきました。

すでに多方面で話題になっている通り、チャット検索含む生成AIには精度の問題がつきまといます。誤情報や誤って生成された情報も、しれっと紛れ込んでしまいます。

BingやPerplexity.aiの場合は、情報ソースへのリンクが明示されています。ここがメーカーサイトであれば確度は高いですが、たまに違ったソースが表示されることもあり、その場合は誤解していることも多いです。これを見分けていくことが必要になります。

例えば、以下のようなノウハウが必要になります。

  • ソースが「bing.com」になっている場合は、怪しい。

  • 企業の情報を聞いたとき、ソースが企業ウェブサイト以外になっていると怪しい。

  • 全体的に時間軸に弱い。「今日」が今日じゃなかったり、「直近」が直近じゃなかったりする。

  • Kakaku.comや食べログなど大量の情報が提示されているポータルサイトの場合は、誤って別の個所を引用されるケースがある。

とはいえ、全体としては脳の使用量が非常に少ないと言えます。



検索結果にノイズが少ない

同じ情報を得るにも、ノイズが少ないのが(少なくとも現状では)チャット検索の優れた点です。

例えばChatGPTの月額利用料を調べるときに、

左:Googleで「ChatGPT 利用料」と検索した場合の画面と検索順位トップのサイト
右:Bingチャットで「ChatGPTの月額利用料を教えて」と検索した場合

通常の検索の場合は、先に述べた情報ソースを探す際に、様々な広告やほかの記事、リンクなどが入ってきます。これらはノイズが非常に多く、情報選択の際の負荷になります。厳密には、いままでそんな負荷は感じたことはなかったのに、チャット検索になれてしまうと「ウェブサイトというのはかくも関係ない情報が多いものか……」という感覚に陥ります。

もちろんチャット検索に広告が載ってくる可能性は高いですが(すでにMicrosoftはその方向で検討をしている)、すくなくとも現時点では情報を入手する際のノイズ量は雲泥の差と言えます。

さらにBingでは、次の質問の候補が表示される機能があり、これがさらに脳を甘やかしています。この右下の質問候補をクリックするだけでどんどん情報が表示されていきます。

「それそれ!」みたいな候補が出る。

何というか、「必要な情報だけが、純度高く無限に流れこんでくる」体験と言えそうです。


どんなときにチャット検索は有利か?

そんなチャット検索ですが、以下のようなシチュエーションで特に有効に働くことがわかってきました。

打ち合わせ中

特にリモートの打ち合わせ中は、相手と話しながら裏で情報を検索したり、用語の意味を調べたりすることが多いと思います。それが圧倒的に楽になりました。会話中に気になったことを、そのままBingに投げておけば、数秒後に答えがそこにあるので、会話を途切れさせることなく情報を入手することができます。

へー、リクルートとホンダの時価総額は大体同じなんだ
あいまい検索にも強い。
従来であれば「社名検索」と「情報検索」を別にしていたところ、一気にいける。

イメージとしては、脳の処理量のうち80%ほどを会話に使い、残り20%で情報を入手できる、という感じです。通常の検索の場合はどうしても会話をいったんやめ、検索画面に集中する必要があるので、だいぶ使用感が異なってきます。


資料作成中

資料作成中も同様です。スライドなどを作成しながら「こんな事例あったな」とか「こんなニュースを最近見たな」とかを探してきてくれます。

「あれどうなった?」とか、聞きがち
ちなみにアサヒ飲料の記事の「ことし」は昨年のこと。
ニュースから文字だけをひっぱってきているから時制に弱い。要注意。

資料作成の手を止め、集中力を乱すことなく情報を集められるのはとてもありがたいです。おれたちは今まで資料作成中の調べもののせいで何度となく集中力を途切れさせていたんだ……と気づきます。


2個しかユースケースを提示できませんでしたが、私は勤務中のほとんどの時間、打ち合わせか資料作成しかしていないので、そういう方にとっては非常に便利と言えそうです。


二種類の検索は、異なった方法で脳をハックする

触っていて興味深いのは、従来の検索とチャット検索、まったく別のものに見えて、どちらも脳をハックしてくる感覚があるんですよね。

従来の検索は、無料で情報にたどり着ける代わりに、そこからの興味を引くための様々な誘惑に満ちており、それを振り払いながら目的の情報を探しに行くものでした。情報入手が大変であった一方、関係ないリンクを踏んだり、広告に触れたり、ウェブサイトを見たりして、「ついつい見てしまう目的外の面白いコンテンツ」によって脳をハックするような体験です。

一方でチャット検索はむしろ逆で、先ほども書いた通り、「純粋に欲しかった情報だけが立て続けに流入し続ける」という快感で脳がハックされていきます。

例えるならこんな感じですかね……?

全体としては異なった体験ですが、どちらも脳がハックされていく感覚があるんですよね。とても面白いなと思います。


チャット検索を使い倒せ!

弱点も多いですし、使いこなすには一定のリテラシーが必要になるチャット検索ですが、用途によっては非常に便利なことがわかってきました。

Bingチャットには、「AIを利用したWeb向けCopilot」というキャッチフレーズがついています。Copilot=副操縦士の名のとおり、自分が何かをしている間、平行して何かを調べてくれる、という使い方が最もしっくりくると感じます。

ただ、少なくとも現時点で、チャット検索にはチャット検索ならではの独自のリテラシーが必要になるのは確かです。20年前に我々がGoogle検索を覚えたように、チャットを飼いならして上手に検索する術を、身に着けていきたいですね。

今後の進化が楽しみです。


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