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コツボとシッポ

昨日は新宿西口の京王百貨店でやっていた「ドールハウス展」へ行ってきた。7階の催事場を「鉄道フェスティバル」と分け合って使っていて、なかなかの活気。ハリーポッターっぽい世界感(世界観は誤用なんだっけね)もあれば、三丁目の夕日っぽいのもあったり、コンビニやスーパーで買える食品パッケージの精緻なミニチュアもあったりで見飽きない。

主催者や出展者にはいささか恐縮ながら、わたしは数万円から数十万円するドールハウスを買うつもりはなくて、本棚にちまちま飾れるような小さいものたちをちょこちょこ買う予定だった。会場に着くなり、ほとんどクセでまず豆本を選び、また別のお店でGペンのミニチュアを見つけ、“ペンがあるなら、さっき見かけたインクボトルとプロッターのセットと一緒に置こうかな”と来た道をちょっと戻った。

追加で買ったのはバケツと目覚まし時計。どちらも数百円だったけど、素材が本当っぽくてうれしい。時計なんかは持ち重りがする

手書きの伝票をその場で商品に貼り付けてもらったのを集合レジへ持って行ってお会計。最初、複数のお店の商品をまとめて精算できて便利に感じたけど、最後は会場を出る間際に追加で欲しいものが出てきたので、この場で決済できたら楽なのにと少し思った。デパートあるある。

事前に予約していたテラリウム制作のワークショップも体験してきた。小さなガラス鉢に小石を敷いて、よく湿らせてツナみたいになった土を詰め、苔を2種類選ばせてもらって、金属の小さな棒で押し込んで土に圧着させる。

京王百貨店のオンラインショップでワークショップ参加権を購入した

わたしが選んだのはコツボ苔とシッポ苔。見た目で選んだけど、童話に出てくる同じ村の動物みたいな名前だ。星形チックなコツボを多めに、フサフサのシッポは少なめに。流木や石なども選んで加える。白い小さな石をさらさら敷いて道を作ってもいいのだけど「この感じだと、ないほうがいいかもしれませんね」と先生が言って、わたしもそう思った。

定員2人。この回はマンツーマンだった

先生は本田博太郎の大河ドラマの頃みたいなかっこいい人で、とても穏やかに教えてくれる。流木を置くかどうか考えるときは「植物が好きな人は、流木もお好きじゃないですか?」という言い方で慎重に勧めてくれた。

なんで慎重かというと、ワークショップが始まる前、ブースに来た女の人がテーブルに並べてあった木片を見て「男の人って流木が好きですね」と言ったからだと思う。こういうイベントみたいな、今日この時間まさに何かをやっている最中というときに、ちょっとでも否定的なニュアンスのことをわざわざ言わなくていいけどなあとわたしは思ったりした。

流木は好きなので「好きです」と答えて採用した。1/150サイズのベンチと人間フィギュアは仮に置いてみて選び、鉢と別に袋に入れて持ち帰って設置することに。なぜかベンチを3つもくれる先生。「人間も2つ3つ持っていってください」と言ってくれたので、座ったのと立ったのと2体もらう。選んでいる間に先生が席を外してすぐ戻ってきた。「(この二人は)カップルですか?」「違います、友だちです」と話しながら、わたしはビニール手袋を脱いだり、先生はパッキングをしてくれたり、トキワシノブという植物もお土産に分けてくれたり。

別に友だちとも何とも決めていなかったのに反射的に言ってしまった。1/150なので性別さえよく分からないような感じだけど、わたしの目には2体は、座った57歳ぐらいの女性と、歩いている34歳ぐらいの女性に見える。彼女たちが友だち同士でも恋人同士でもどっちでもいいけど、人間を2つ3つというときに、すかさず男と女を1つずつ選んでカップルにする考えがわたしにはないので、それは否みたかった。でも考えてみたら、先生の目にも女性フィギュア2体に見えていたかもしれない。

遠いところまで会いに来たような感じ

先生はドールハウス制作が本職で、テラリウムは息抜きに作るのだそうだ。だから、ドールハウス作家活動とは別の「路肩人」名義でテラリウムを教えてくれる。「ろかたびと」と読む。“道の真ん中を行かずに路肩に寄りがち”という意味らしい。「妻がつけました。見たときは魯山人みたいでかっこいいと思ったけど、意味を聞いたら、あまりかっこよくなかったです」と言っていた。わたしは魯山人より一閑人を、特に理由はないけど連想していた。立ち上がったとき、先生がすぐそばの女性を手のひらで示して「妻です」。わたしが「名づけ親の」と言ったら「いいでしょ」と返ってきて、名前よりその答え方が好きだった。

先生のドールハウス作品。うに食べたい
これも先生の作品。居酒屋も作るけど、こういうのも作る。廃材を使っていて、トップ画像にも使わせてもらった黒い箱は元・ガイガーカウンター。青く光る部分の周りにはタイプライターのホイールが取り付けてある

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