いとをかし

 さちこです。コロナ禍でスローダウンしていた仕事がじわりじわりと元に戻りつつあって、久しぶりに、あれやって、これやって、あの人にあの仕事を投げて、その間にこれやって…みたいな、頭をフル回転する機会が増えてきました。大変だけど嫌いじゃない、むしろ好きな感覚が久々に戻ってきて、アドレナリンが出ている日々です。
 というわけで今回は仕事関連の話を書きたいなーと思って「職業病」というテーマにしました。書籍の編集、しかも語学の書籍を編集しているため、普段から「言葉」のルールに関してかなり敏感になってしまいました。そんなさちこの普段から気になってしょうがないこと。

こんにちわ

 アウトー!!!これは編集の仕事をする前から嫌で嫌でしょうがなかった「こんちにわ」問題。正しい表記はもちろん、「こんにちは」。

 日本語の表記って、発音と一致しているように見えて、意外と一致していないルールがたくさんある。この挨拶一つとってもそう。
 「今日(こんにち)は、いい天気ですね。」という挨拶の始めの部分が残ったため、「こんにちは」という表記が今でも使われている。この知識があれば、「こんにちわ」なんて表記する人は日本からいなくなる、はず。でも、この情報を知らなければ、「wa」と発音するのに「」なのか?と思うはず。
 日本語では、助詞の「は」と、「わたし」の「わ」は同じ発音をするのに表記が違う。わたし、さちこです!なんて表記するのは、一昔前のギャルだけだ。それも本当は「は」と書くのを知っているけどわざと「わ」と表記している。つまり、日本語ネイティブは同じ発音であるにも関わらず自然と助詞の「は」とそれ以外の「わ」を書き分けることができる。

 何が言いたいかと言うと、「こんにちわ」という表記を目にするたびに、この人は日本語の一番代表的な挨拶「こんにちは」の語源を知らないのかと哀れみに近い気持ちになり、正しく使ってあげて、と悲しくもなる。どうか、どうか、挨拶くらいはきちんと書き表してほしいと思うばかりです。Helloがつづれないのよりもよっぽど重罪。

ら抜き言葉

 「今日帰るの遅くて半沢直樹、見れなかったー。」「昨日はやく帰ったから、8時間も寝れたわあ。」「明日5時に起きれる?」など、この文は全部「ら抜き言葉」と呼ばれるものだ。
 可能形を作った時に元々の活用では「ら」が入るものが脱落してしまうという現象。言葉の乱れだという人もいれば、言葉は常に変化していくものだから、ら抜き言葉はその変化の一つだ、という人もいる。そんなことはわたしにとってはどうでもよくて、これから十数年、何十年かけて文法学者の先生方が調査してくださればいい。

 そんな現象で何が職業病かと言うと、ら抜き言葉を聞くのは全く問題ではなく、自分が発話するときに、ら抜きで話すか、ら入れで話すか、迷ってしまうこと。驚くことに、本当に毎回話すときに(誇張でもなんでもなく)、どっちを使うかという判断をするようになってしまった。こわい。
 会社で話す時は、ら入れ、友達と話す時は、ら抜き、という判断を下すことがほとんど。ら抜き言葉が言葉の乱れだとは1ミリも思っていないが、やっぱり会社で使うのは憚られる。
 「このファイル、見られないんですけど…。」「昨日全然寝られなくって眠いんです〜。」「遅く起きられるから在宅いいんですよね〜。」などなど、冒頭で紹介した動詞の正しい可能形はこちらでございます。会社では基本的にこっちで話す。
 恐ろしいのはぽろっと、ら抜き言葉で話してしまったとき、謎の罪悪感に苛まれる。「うわっ、今緩んでたわ!」とばかりに自責の念。別にら抜き言葉がこれだけ世に浸透している中、乱れだとは思っていない、思っていないけど、日本語を操るものとしていかがなものかと思ってしまう。キモい〜。そんなこと考えながら普段から話してんのかよ〜。はい、悲しいことにそうなんですよね。ら抜き言葉に違和感がある世代、ない世代のジェネレーションギャップも確実に存在するから、会社みたいに幅広い世代が一緒にいる空間は特に気をつけたいなと思って生きています……。

日常にリンクしすぎ

 他にも美術館の解説とかで誤植を見つけると「おおっ!?」ってテンションがあがったり。マッチングアプリでも誤字脱字が多い人とか、表記がおかしい人とか、きちんとした日本語を使えない人とはやりとりできませんでしたあ〜
 あと最近おもしろかったのは昔の電話が「自電話」と呼ばれていたこと。なにかの展示でそれを見つけて、「自」じゃないんだ!?と言ったら「目の付け所そこかよ」とめちゃくちゃ正当なツッコミをされました。
 というわけで、かなり日常に深く根差しているわたしの職業病。ただし、ラジオを聴いていただければおわかりかと思いますが、決してきれいな日本語を話しているわけじゃないっていう説得力のなさ(にっこり)。
 他の職業の人はどんなことが日常と仕事がリンクしちゃうのかなーと結構本気で気になっているのですが、はいるが「テーマ難しくね?」とnoteの神が舞い降りてくるの待ちなので、わたしも楽しみに待っています。

サポートしてもらえたら、はいるとさちこの楽しいことに使わせて頂きます。主に飲酒です。飲酒ですが、何かしらnoteにも還元できるように飲みます。