見出し画像

【こんな人と話した日記#1】児童福祉の領域で働いている人

柴田(@4bata)です。私が「こんな人と話した」と書く日記です。

最初のきっかけ:連絡がきた

以下、すべて本人の確認済み。児童福祉の領域で働いている方から。

ご連絡させていただいたのは、私個人の問題で(業界の問題でもあり、日本の労働者の問題でもあり、21世紀の資本の問題でもあると考えるのですが)、人生に行き詰まっており、東宝映画のオープニングのざばーんという画をバックに演歌でも歌いそうな心情です。私としては、児童虐待領域での心理臨床の仕事は極めて重要で、社会的にも経済的にも大きな意味のある仕事をしていると考えていますし、多大な私財と労力を投じ懸命に研鑽を積み重ね、実績もあげていると思っているのですが、一方でわが暮らしは楽にならず、先を見通せません。これは非常に由々しきことです。一回だけ私の先を見通せない人生を打開するために、ご相談にのっていただけないでしょうか。
(※前後のやりとり省いて、誰かわからないように、一部改変)

「おお、いいですねー」と返事をした。オンラインで話すのは時間調整が大変なので、互いにgoogleスライドに時間があるときに書き込んでいく形式にした。

課題を「対立解消図」でまとめる

対立解消図とは、課題を「あちらを立てればこちらが立たず」のジレンマとしてまとめていく方法。興味ある人は「ザ・ゴール2」を読むと良い。何に困っていますか?と聞いたところ以下。

・職場内で深刻な対立がある
・職場を変えることを考えているが、そもそも心理士は「高学歴ワーキングプア」のため、常勤職がとても少ない
・多くの人が非常勤をかけもちしながら働いているが、私は奨学金の返済があり、専門のトレーニングにも費用がかかるため常勤職でないと難しい
・虐待臨床の常勤職採用を見つけたが、そこで働いている人の話しを聞くと、環境が厳しい

スクリーンショット 2021-08-08 19.15.27

で、いくつか質問して答えてもらった。

Q.仕事の領域、もう少し広げて検討できたりもするんですか?
心理士として働けるのは、福祉領域のほか、教育、医療、産業領域。社会的弱者のエンパワメントや格差構造の改善に関心があるので、できれば教育か福祉領域で働きたい。カウンセリングはやめると腕が鈍るので、他職種で働く場合は細々とオンラインカウンセリングでも続けたい。週2程度のスクールカウンセラーと両立できると理想的。
Q.金銭面の話が解決すれば常勤職である必要はないんですか?
常勤職にこだわる理由の8割は金銭面。児童福祉領域で働くならば、常勤職の方が構造的課題に内部から取り組みやすい点は残り2割の理由。
Q.児童虐待領域の職場環境を改善する役割に特化することはできないだろうか?
児童福祉領域の職場環境や構造的課題に取り組むことは目標の一つ。それで生活できるのであればすぐにでも取り組みたい。今すぐできるとすると、働く人のメンタルケア(グループケア、個人カウンセリング、研修)。それ以外はすぐ使えるスキルはないため、スキル開発がまず必要。キャリアプランの先の目標との位置づけか、日銭を得る仕事と並行してNPOの立ち上げなどを検討するのも良いかもしれない。
Q.4.まったく違う仕事につくことを想定したときに「いい感じに生きる」ことは不可能なのでしょうか?
むしろ、まったく違う仕事に就いてみたい。虐待領域での心理職を休んで、今後のためにしばらくいい感じに生きたい。目標とするキャリアプラン、人生をかけたい望みを考えたときに、「健康な組織」で良い感じに協調して働く経験がしたい(不健康な組織でなんとかやるはもう十分やって、多分もうスペシャリスト)。だが、企業等で雇ってもらえるか?認知的能力、対人関係能力、心身の健康といったポテンシャルはあると思うが、まったく違う仕事とすると、経験知識はゼロ。どうやって職を探したら良いか?経済的利益のみをとにかく追及するような価値観のところでなければいい。

移行プランかなー、となんとなく考える

こういう図を書いてみる。

スクリーンショット 2021-08-08 17.56.47

以下柴田のコメント。

・先の見通しが見えていれば、目の前が大変でもなんとかなる
・最初のステップは、同じ志をもったひとたちとつながることでは?という柴田の案(もうつながってるかも)
・その人達で、どういうステップを踏んでいくかを話す。で、そのステップをどう踏むかは、具体的な方法としての知識があったほうがよくて、ここは「児童虐待領域」の専門知識がなくても、いろんな人が手伝えるはず
・つまり、「同じ志をもったひとたち」の中に、児童虐待領域以外の専門家も加えていくというのが具体的なステップになりそう。普通にやると専門家だけになりそうではある
・どういう風に伝えると、どういう人が興味をもつのか、などの工夫は必要そう。人は自分に全く関係ないことには興味をもたないため
・ブログ書いたりする、私もこのテーマで何かを書いてみるとかもありそう
・ただ、完全に新しいつながりから一緒にやる人を誘うのは大変なので、もう既につながっているけど「この人と一緒にやることは考えてなかった」みたいなほうがよさそう

これに対して再びコメントをもらう。

質問に答える形式で書いてもらった。

Q.割合を変えていく、のイメージわきますか?目の前の対応と、今後のための活動
イメージが湧いてきました。心理士として研鑽を積めそうな、組織としても、とても力のあるクリニックの求人を紹介いただけたので私の目の前の仕事はひとつそれとし(縁あれば。なければまた考える)、並行してお金を得ることを目的としない活動として児童福祉領域の構造的課題に取り組んでいけばいいんだなと思いました。まずは仲間づくりから、ということでは、一緒に考えていただけたらすごくありがたいですし、私もブログ等で発信していくというのはぜひやりたいです。うまくやるには勉強が必要そうですが。
Q.「つながり」にその分野の専門家以外をよんでいくイメージありますか?多分私とかもそうです
これこそ本当にしたいことです。児童福祉の外にいる方に、知ってほしいし、力を貸していただきたいです。児童福祉には外の力が必要ですし、そこで一緒に考えることは、外の方にとっても、自身の生きる力に気付けたり、リソースを強化できる機会になると思うのです。虐待は見えないところで起こり、皆その傷を隠して生きているのですが、厳しい環境を生き抜いてきている人のことは知られるべきだし、知ることは知った人の力になると思います。課題にどう取り組むことができるか知恵を借りたいです。

この次の具体的なアクションが思いつかない

以下、柴田のコメント。

・いろんな情報発信方法を考える必要もありそうですが、それはおいといて
・最終的に、「じゃあちょっと自分の出来ることをしよう」と思ってくれた人は、具体的にどういう行動をとればいいのでしょうか?これが私も分かりません
で、同じように「大変な環境」というものが、国内にもたくさんあって、その中で「自分が本業の仕事とは関係ないけど何かするなら、児童福祉かな」と思ってもらうためにはどうすればいいのか
・ひとつは、自分も過去、似たような環境にいた人、というのはありそうです。そこはわかりやすいけど。

「支援」のイメージを間違えていたかも

googleスライドに書き込んだらメールでおしえてもらう。そのメールに書いてあったコメントを引用する。

児童福祉で働いていると、見えないところで傷ついて、それを隠してなんとか生きている人たちと関わることになり、その支援をする自分たちも苦しい思いをしながら、外の人はそういうことをほとんど知らないから、そこに悲しい気持ちになっていたんだな、ということに気付きました。
話を聞いていただいて、一緒に考えていただけたことが、私はすごく救われる思いがしていて、きっとこういう思いは児童福祉で働いている人は多くの人が共通して持つんじゃないかなと思いました。外の人に知ってもらう、一緒に考えてもらう、助けてもらうは、かなり本質的な課題解決につながるんじゃないかと思いました。

知ることだけで「力になる」ならわかりやすい

私は、なんだか深刻だったり、大変な状態をしったところで、自分に出来ることは限られてるし、最終的な解決(?)まで自分でコミットできないなら、あんまり意味がない、中途半端に関わることはむしろマイナスでは、という感想をもっている。つまり、口だけだったら、関わらないでおこう、という発想。

しかし、逆に児童福祉の現場で働いてる人から「いや、そんなことはなく、知ってもらうだけでも、自分たちの力になるんです」ということであれば、「わかった。知ること、そして、たまに気にすることぐらいならできます」という手伝いならやりやすい。

だから、それで最初のステップはいいのかもしれない。これはかなりの発見だった。

トラウマに関するワークショップを考えてみるのはよさそう

Q:知ることが力になるとして、じゃあ知ってくれた人に何をしてもらうのがいいのでしょう?たとえば、とりあえずtwitterを匿名でいいからつくって、それをフォローするとかでもいいかも
たとえば、来てくれる人にいいことがあるワークショップ(メンタルが元気になるワークとかできます)で、来たついでに紙一枚くらいにまとめた、虐待やトラウマの知識を知ってもらって(研究や日本の現状)、それを知り合い3人に配るか、SNSで広めてもらうとか。たくさんの人に知ってもらって、考えてほしいというのが希望です。知ってくれたり、一緒に考えてくれるだけで力になります。福祉や心理の領域の用語に「トラウマ・インフォームド」という言葉があります。世の中がトラウマについて正しい知識を得ていれば、それはすべての人に生きやすい社会になるという考えです。私たちの体の中には、育ってくるなかで、実は様々な「トラウマ」(事故などだけでなく、より広い概念です)があり、それを知ることは、実は健康な人たちにとっても大きな恩恵があるのです。

トラウマ・インフォームド、はじめて知った。トラウマに関するワークショップとか面白いな。これを考えることにしよう。トラウマのハードルをさげて、みんなで話せるようなやつとか?

どういうことを知って欲しいか?

まったく私にとっては知らないことを教えてもらった。面白い。

・貧困から抜け出すにはソーシャルワーカーによる人的支援より、ただお金を配る方が効果的という実証研究(ルドガー・ブレグマンの本にいっぱい書いてある)
・幼児期に情緒的支援(安定した愛着対象を提供)を受けると、のちの人生の、定職に就く割合が上がり、刑務所に収監される割合が下がるということなどなどを示したアメリカの大規模な実証研究(すごく有名なので調べればすぐ出る)
・ACE研究(小児期逆境体験)アメリカCDCによる大規模研究。喘息、糖尿病、肥満、各種の精神疾患、薬物依存、ギャンブル依存などがすべて小児期逆境体験との関連が強いこと。
つまり、子どもの養育の支援にお金を十分かければ、将来の社会保障費を大幅に減らせる。生保受給者はほとんど(多分例外なく)小児期にトラウマを経験している。

どういうことを聞いて欲しいか?

これもコメントもらった。

・虐待する親を責めないでほしい。たとえそれが虐待死を引き起こした親であっても。虐待してしまうのは、親自身のトラウマによる。フラッシュバック症状の中で子どもに危害を加えてしまう。
・支援者、支援機関を責めないでほしい。現場は大変ななか、必死にやっている。責めるのではなく、状況を知って、どうしたらいいか一緒に考えてほしい。応援してほしい。

「深刻そうな領域」の話でも、当事者がいれば適当な質問をしやすい

この連絡をもらわなければ、私が児童福祉の領域の知識を知ることもなかったり、興味も持たなかっただろう。仮に興味を持ったとしても「自分みたいな詳しくない人が、余計なことを言わない方がいい。しかも、別に真面目な動機があるわけでもないし」みたいな、遠慮もある。テーマが深刻そうだから特に。ただそれだと、

その支援をする自分たちも苦しい思いをしながら、外の人はそういうことをほとんど知らないから、そこに悲しい気持ちになっていたんだな

これは解決しないってことになる。なので、児童福祉に関するなんか面白いワークショップでも考えてみることにしよう。

「この人と話してみたいかも」という方がいたら連絡ください

同じ問題意識の人とつながるのはいいことだし、この方もそれを望んでます。こちらのフォームに入力してください!私が間をつなぎます。

おまけ:こんな人と話したラジオ

ちょっと連絡してみたいなと思っても、まだ応募のハードル高いなと感じた人向け。記事の解説をしつつ、「この記事を書いてる柴田って誰だよ」も音声で別の角度で伝わったら、ハードル下がるかなと思いまして、収録しました。



誰かが書いてたけど、サポートしてもらったらそのお金をだれか別の人のサポートに回すと書いていて、それいいなとおもったのでやります!