最高の結果を出すKPIマネジメント
課題解決に向けた打ち手・施策など目標・目的の達成に向けた様々な活動があります。しかし、それぞれの活動を評価する時になって「どうやって評価しようか」というのを検討しているのが目立っていた。
評価するときになって評価軸を決めることに疑問を持ち、中尾隆一郎 氏の著書である「最高の結果を出すKPIマネジメント」を再読。メンバに展開することも踏まえ、読書記録として残します。
KPIとは?
「KPIってなんだと思いますか?」と聞くと、目標数字と回答されることが多いです。完全に間違ったことではないが、それだけでは足りない。例えば、売上の数字はKPIではなくKGIです。つまり最終的な目標数値はKGIなのです。
KPIのKPの部分、つまりKey Performanceとは事業成功の鍵のことを言います。事業成功の鍵を数値目標で表したものがKPIです。
そうなると、KPIの設定には「何を持って事業成功なのか」を分かっていないと設定できません。
KPIを考える上で3つのことを知っておく必要があります。
KGI (Key Goal Indicator)
CSF (Critical Success Factor)
KPI (Key Performance Indicator)
KGIは先ほどお伝えした通り、最終的な目標数値のことです。
CSFは重要な成功要因、つまり最重要プロセスのことです。
KPIはCSFの目標数値となります。
KGI
KGIが最終的な目標数値なので、関係者で最初に認識を合わせておくことが必要です。最終目標にもかかわらず認識がずれることが意外とよく発生します。大きくは次の2つのポイントにきおつけること
ゴールそのものがずれていないか?
設定した数値がずれていないか?
1つ目のゴールのズレとは、最終ゴールが利益なのか売上なのかなどのズレです。
2つ目の数値のズレとは、最低限の達成数値なのか可能であれば目指したい数値なのかなどです。
この辺りを認識を合わせておかないと「俺の認識と違う」と怒り出す人が出てきたりしますので、明文化して認識を合わせておきましょう。
CSF
KGIの設定と認識合わせができたら、CSFを設定します。KGI達成に向けて実施するプロセスは1つではなくたくさんあるはずです。その中で最も重要なプロセスを1つだけ抽出することが必要となります。重要なプロセスのすべてではなく1つだけというところがポイントとなります。
設定するときのコツとしては自分たちでコントロール可能なプロセスを設定することです。営業組織であれば売上というゴールを目指して、顧客訪問や提案活動などにあたります。顧客訪問や提案活動であれば現場で実践(制御)可能なプロセスのはずです。
KPI
KPIははCSFを数値目標で表したものです。 CSFをどの程度実施すればKGIが達成できるかを表すものです。逆に言えば、KPIが達成されていればKGIが達成されていることになります。
新しいKPIの作り方
KPIの作り方NG例
最初にKPI設定のNG例を挙げておきます。
よくある間違いのとして、取得できる指標でKPIを設定するケースです。
最初にKPIの指標となる候補(データ)を集めていきます。その中からKPI決定します。KPIに設定した指標の現状から、どの程度目標にしたらいいかを決めます。こうして設定したKPIで運用を行い、目標に対する実績をいれていきます。しかし、集められる指標からKPIを設定したので、数値目標を達成してもKGIへの効果が見えてきません。そのため、達成するべきの値だったり、ゴールそのものを変えてしまいKPIの運用が失敗する。
別の失敗事例として、以下のようなケースも見られます。
たくさんのKPIを設定している。
-->実施すべき施策がたくさん出るが、現場でほとんど実践されない。現場でコントロールできないKPIを設定している。
--> KPI達成のための打ち手を立てられず運任せになる。遅行指標をKPIとして設定している。
KPI未達=死亡診断書でどうしようもない。
KPI設定の流れ
KGIと現状の確認
KGIを因数分解
CSFを設定
KPIの設定
KPIの設定ができたら、設定したKPIで運用が可能か、リスク発生時の対策をどうするかなどを検討します。
KGIと現状の確認
最初にKGIを確認して現状とのギャップを確認します。これは組織がどこに目的を置いているかを確認することです。この目的地が関係者間でズレていると話になりません。
ここで認識がずれることなんてないと思うかもしれませんが、組織が大きくなってくると自身が所属している部門に割り振られたことしか見ていない人が出てきます。こうなると関係者間で認識のズレが出てしまうので、組織としての目的地をしっかりと確認することが必要となります。
KGIを因数分解
KGIの因数分解とは、自社のビジネスを数式としてモデル化するイメージです。売上を上げること例にすると、
売上 = 販売数量 X 平均単価
と表現できます。販売数量は利用者数と歩留まり率で表現できるので
売上 = 利用者数 X 歩留まり率 X 平均単価
このように所属する組織において売上(KGI)を因数分解するのがこのステップで実施することです。
CSFの設定
KGIの因数分解した結果から、CSFを設定します。この時、KGIの因数分解結果で定数とみなせるものと変数となるものに分類します。そしてCSFは変数から設定します。
上記の売上の例でいえば、利用者数、歩留まり率、平均単価のそれぞれが定数か変数か分類するところから始めます。
どのようなビジネスモデルや所属している部門の役割にもよりますが、平均単価は顧客が何を買いたいかや営業力で決まると思います。多少のブレはあっても定数とみなしてもよいでしょう。一方で利用者数や歩留まり率はリソース投入やカイゼン活動などで向上させることができそうです。
つまり利用者数や歩留まり率が変数となり、ここから最重要となるものを選びます。
もしリソースに限り、利用者数を増加させるためのアプローチがとりづらいのであれば、歩留まり率がCSFとなる。というような感じです。
KPIの設定
最後にKPIの設定となります。CSFが特定できていればそこから逆算するだけなので簡単な作業です。
先ほどまでと同様に売上の例で考えてみましょう。
ここで顧客への提案するときに1種類を提案するか複数案を提案するかで受注率(歩留まり率)が違うと仮定します。1種類の場合は10%、複数案の場合は33%とします。つまりCSFは「複数案を提案する」ということです。
売上目標を1000万円、平均単価を10万円の場合、「複数案の提案」をどれだけの顧客に実施すればよいか計算すると
複数案の提案回数(顧客数) = 売上 / 平均単価 / 歩留まり率
つまり
複数案の提案回数(顧客数) = 1000万円 / 10万円 / 33%
で求めることができます。ちなみに計算結果は303件となり、KPIは「複数案の提案を303顧客に実施する」となります。
運用性の確認
ここまでの方法でKPIを設定していれば指標としては正しいです。しかし、その指標で運用できるかは別物です。KPIは設定して終わりではなく、その指標を達成するために定期的に達成状況を確認したり、現場が理解する必要があります。それにもかかわらず、数値の取得が困難であったり、現場にとってKPIの理解が難しいものだと十分な効果を得られません。
以下の観点で運用性の確認が必要です。
KPIが変化すればKGIも変化するか(整合性)
KPIの数値は安定的に取得できるか(安定性)
KPI設定のロジックはわかりやすいか(単純性)
リスクと対応策の検討
KPI設定の流れに沿って設定している場合、その指標は先行指標になっていると思います。「複数案の提案を303顧客に実施する」というKPI設定の例でいえば、「期間の半分が過ぎたのに、100顧客にしか実施できていない」などです。この時にとれる行動は
資金を投入する
人を投入する
人も資金もも投入する
何もしない
検討して合意を得るまでには時間がかかってしまうため、事前に考えておく必要があります。考えておくべきポイントは
いつ時点で
どの程度の達成状況だったら
どうするのか?
それは、誰が決めるのか?
超えるべき二つの壁
KPIが従業員のものである。これを理解してCSFをシンプルにし、KPIをわかりやすい数値にすべきと頭で理解しても超えるべき壁があります。一つ目はバカの壁、もう一つは不安の壁です。
これらの壁を乗り越えて設定したKPIを運用することができれば、しっかりと結果が出るでしょう。
バカの壁
CSFをわかりやすくシンプルにした為、「そんなことはわかっている」、「その話の続きが聞きたい」、「こんな簡単な事の見つけるのに時間を掛けているのか?」といった否定的な発言が起こることがあります。
実際には複雑なものから重要なものを一つだけ選択するのはかなり難しいです。しかし、シンプルにしてしまったため、このように言われることがありえます。
このような否定的な発言が発生したら狙い通りうまくいったと心の中でガッツポーズでもしてください。
不安の壁。
複数の要素から一つを選ぶということは不安になります。どれも重要に見えるからです。しかし、それを複数入れてしまうと際限なく増えてしまします。
KPIが複数あると何が問題なのか?つまり、KPは一つに絞らなければ何が起こるのか?
例えば、同時に5つの施策を要望したら、現場は自主的に取捨選択して5つの要望を受けたとしても、2、3個しか実践しません。これの何が問題なのかというと、正しく振り返ることができなくなることです。正確に振り返ることができなければ、次のサイクルを回すときの計画に活用することができません。
通常は単発の活動のためにKPIを設定しているのではなく、継続的な成長のために設定していると思います。しっかりと振り返り次に活用していくためにも、もっとも重要な要素へ絞り込みましょう。
まとめ
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