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傷つけたくないから去る

 生きているだけで誰かを傷つけるこんな私なんて居なくていい。自分のことばを誰かのことばを繰り返し繰り返し反芻して分かったような顔をして、そのくせ誰かを傷つけることに鈍感で想像力の足りない不出来な人間であり続けるなら死んだ方がいい。私などなくていい。読解だけが出来たって人間ではあれない。理性だけがあったって人間ではあれない。

 私は私の言葉が誰かを傷つけることを知らなくて、いつだって尖った爪や牙にも気付けない。恵まれていることに無自覚な人間は無害なようで時折物凄く人を傷つけるが私はそれを大事な人にやってしまった。心に余裕がなかったことを言い訳になんてできない、だって余裕がなかったから取り繕えなかっただけで、根っこがそういう人間であることは事実なのだから。

 上手く理解をして、理性とことばに頼ってやり直せても、想像力のない私がいつかまた誰かを、あなたを、傷つけてしまうことをよく知っている。触れたくない。触れたいほど愛おしい人であればあるほどに、傷つけるのが恐ろしい。

 本当に必要なのは他者理解や共感ではなくて、善悪や思想や価値観のちがいによる弊害を想像力と理性で埋めるのが人間のあるべき姿なのだと思っているけれど、分かっていても理性より感情が先にきてしまう、そうしてまた良からぬことを口にしてしまう、そういう酷い人間だから、あなたにも、誰にも、触れたいけれど触れられない。

 今がこんなにも幸福であるのにこれから先また誰かを傷つけてしまうことを思っただけで憂鬱になる。こんな刹那の幸福さえもまともに受け取れない私を、早く、早く殺して欲しい。

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