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銀河フェニックス物語 <出品集>

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2024年6月の記事一覧

緑の森の闇の向こうに 第9話【創作大賞2024】

* *  迫撃弾を受けたレイモンダリアホテルの消火活動は一段落していた。ビルからは煙が立ち昇り、最上階は黒く焼け落ちている。現場近くにはこげ臭いにおいが漂い、割れたガラスの破片が散乱していた。  警察や消防が、ホテルに残っている人の捜索を続けており、周囲百メートルは立ち入り禁止区域が設けられていた。  規制線の外から、テレビのリポーターが生中継している。  カメラの近くにいるスタッフへ、ダルダが近づいていった。 「二五一四号室が狙われたっていうのは本当か? 俺はその二五一四

緑の森の闇の向こうに 第8話【創作大賞2024】

 こんな時にふざけないでほしい。 「そんなことできるわけ……」  断ろうとしたところで、言葉が途切れた。この無理難題はわたしたちを試している。どれほどの覚悟があるのかを。  ダルダさんはレイターを信頼している。だから十億でも用意すると平気で答えた。NRと対峙する、ということは生半可な気持ちでできることじゃないのだ。これは仕事ではない。普通に考えればこのまま本社へ帰ることが正しい選択だ。レイターはわたしたちを思いとどまらせようとしている。ボディーガードとしては当然だ。  厄病神

緑の森の闇の向こうに 第7話【創作大賞2024】

**  この星は日差しが強すぎる。  電子鞭で打たれた右手を軽くさする。火傷の様なジンジンとした痛みが腹立たしさを増幅した。バカな奴らだ。命まで奪う予定じゃなかったのに。だが、これで、ようやく兄貴がいる本部へ帰れる。  クロノス本社の社員襲撃は成功。 「できた」  提出する前にもう一度読み返す。  本部が用意したのはクロノスの社員を誘拐して交渉するシナリオだった。大事な人質だ、殺すわけにはいかない。慎重になったその隙を突かれた。電子鞭ではじき飛ばされ、目を覚ました時には奴

緑の森の闇の向こうに 第6話【創作大賞2024】

 もう少しで大通りに出るというところだった。前から怪しげな三人組が近づいてきた。 「やべぇな」  レイターがつぶやいた。厄病神が「やばい」というのはどれほど大変なことなのか。バタバタと背後から複数の足音が聞こえた。  気付くと七~八人の男たちに取り囲まれていた。これは『厄病神』の発動だ。  前から歩いてきた男が声を発した。夜なのにサングラスをかけていて顔はよく見えないけれど声は若い。 「クロノスの社員だな。おとなしくついてこい!」  リーダーとおぼしき彼の右手がわたしたち

緑の森の闇の向こうに 第5話【創作大賞2024】

「なあ、レイター、パキールの天然物と栽培物はどう違うのか聞いてくれないか?」 「あんた注文が多いぞ。別料金とるからな」  文句を言いながらもレイターが通訳すると、女性スタッフは三十代ぐらいの男性をテーブルに連れてきた。男性の早口の言葉をレイターが訳す。 「こちらの店長さんによると天然物と栽培物は味も風味も全然違う、って言ってるぜ。最近は天然物はめっきり入らなくなって、この店も基本的には栽培物を出してるそうだ。ただ、きょうは天然物が入ったから、あんたが金を出すなら、天然物と栽培