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芋の凄さをまとめてみた。

このnoteは2020年8月23日に開催した”SDGsリレー生配信”のレポート記事です!10時間の配信中に行われた 10個の企画達。
ライターの方々が感想を交えながら1つ1つ振り返ってくださいます!

何を学び、何を感じたのか。

みなさんもぜひ、あなたにとってのSDGsを思い浮かべながらご覧ください!
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2020年8月23日(日)22:00~23:00話し手:田口一輝(東京大学 農学部/「IMO PROJECT」代表)
この時間のSDGsのテーマ:
1「貧困をなくそう」、2「飢餓をゼロに」、3「すべての人に健康と福祉を」

SDGsリレー生配信の最終枠「芋が世界を救う⁈」についてご紹介するたなかです。
筆者としては「芋」と聞くとアイルランドのジャガイモ飢饉を連想するのですが。。
今回のお話もそれと何かつながりを見つけられるかもしれないと思いながら参加させていただきました。
話し手は東京大学農学部4回生の田口一輝さんでした。
田口さんは「芋の人」としても知られるほど芋についての知識をお持ちで、イモ類の魅力を一人でも多くの人に伝えるために活動する団体「IMO PROJECT」の代表をされています。
今回は同団体が月に1回程度行う「芋ゼミ」の特別編としてお話しくださいました。

芋ゼミ 特別編“芋が世界を救う?!” ~人口と食糧と芋~

今回の「芋ゼミ」の内容としては、食糧問題を取り巻く現状と課題についてお話しされた後、飢餓問題を解決するためのアプローチとして、芋が持つ可能性について言及されていました。

飢餓問題

はじめに、そもそも飢餓問題とは何なのか、ということについてお話しされていました。
飢餓問題は、紛争、異常気象や災害、貧困などをはじめとする複数の問題が密接につながっており、改善には様々な分野からのアプローチが必要だそうです。
日本は比較的飢餓問題に直面する機会が少ない国であり、あまり身近に感じていない人も少なくないかもしれません。
しかし、世界的に見れば飢餓問題は非常に深刻で、次世代に関わってくるものであるため、誰もが意識しなければならないとのことでした。

食糧問題を取り巻く現状

食糧問題を取り巻く現状として、田口さんは以下のようにお話しくださいました。

・現在9人に1人が飢餓状態にある(約8憶人)
・現在5人に1人が隠れた飢餓状態にある(隠れた飢餓:ビタミンやミネラルなど、必要な栄養素が1つでも欠けた状態)
・飢餓蔓延率が最も高いのはアフリカ
・地域飢餓人口が最も多いのはアジア(約5億人)
・アフリカ・アジアで飢餓人口をほぼ網羅している
・飢餓人口は増加傾向

こんなふうに、食糧問題の現状については多くの課題があることが分かりました。
筆者は「隠れた飢餓」という言葉になじみがなく、アジアの飢餓人口の多さについてもこれまで意識したことがなかったため、正直かなり驚きました。
しかしながら、長期的なスパンで見れば確実に飢餓率は減少している(1970年:28%→2015年:11%)そうです。
つまり、人口の増加により絶対数は増加しているものの、その割合については減少を続けているということです。
近い将来世界人口が100億人を超えると言われている今、9人に1人が飢えていて、耕作可能な土地も減少しているという事実を踏まえればもちろん楽観視はできないものの、少しは希望を持つこともできそうです。

なぜ食を守らなければならないか?

「食を守らなければならない」とだけ聞くと、筆者は「飢餓を防ぐためなら当然のこと」と非常に単純に考えてしまったのですが、この直後「飢餓問題が様々な問題と密接に関わりあっている」ことを忘れてはならないということに気付かされました。
というのも、東南アジア地域では農業就業人口率が40%を超える国が多く、アフリカ地域では全人口の60%を超えると言われているそうです。
つまり、農業の生産性と貧困が密接に関わっているため、食を守ることが貧困を防ぐことにつながるといえるのだそうです。
さらに、飢餓や貧困がなくなれば、健康な人が増えるため致死率が低下したり、教育を受けることができるようになったりするため、経済発展や人口増加の抑止などが期待できるとのことでした。
これらのことから、田口さんは「飢餓の撲滅は経済発展や持続可能な社会への出発点」であると考えていらっしゃいました。

ここまでが前半部分の食糧問題を取り巻く現状と課題についてでした。
後半部分では、芋の魅力が明らかになっていきます。

100憶人を支える食

世界中の人々を支える食には、「食糧の均等分配」と「食糧の増産・安定」という2つの大きな軸があり、中でも田口さんが着目したのが後者に分類される伝統的作物(特にイモ類)の見直しだったそうです。
ここでは、かつて行われた「緑の革命」の功罪と絡めて説明されていました。

緑の革命の主な課題としては、

・肥料・農薬の多投が必須なため、持続可能性が問題となること
・高価な農業資材を買うことができるか否かで明暗が分かれるため、貧富の差が拡大すること
・安定した水供給が必須であるため、アフリカが取り残されること
・突如貧困に陥ってしまう可能性があるため、単一作物に頼るリスクを考慮しなければならないこと

などがあるそうです。
また、アフリカ地域の農業の課題としては、

・高価な化学肥料の利用が進まないこと
・土壌が風化して貧栄養な地域が多く、小麦などの栄養価の高い食糧を作るのに適さないこと
・乾燥地帯では水の供給が安定しないこと
・ツェツェバエの生息地域では人力による耕起が主流であること

などがあるため、低コストで低投入な農業の確立、厳しい環境に耐える作物の利用が求められているそうです。
そこで、このような課題を克服すべく田口さんは伝統的作物、特にイモ類に着目したのだそうです。
現代において、雑穀類やバナナ、マメ類、イモ類などの伝統的作物はあまり注目されておらず、まだまだ発展途上な要素も多いものの、これらに秘められたポテンシャルにスポットライトを当てることで、アフリカ版緑の革命「茶色の革命」を起こすことができるのではないかと考えているそうです。

お芋のすごい所 BEST 3

ここから田口さんはイモ類のすごさについて、ランキング形式で紹介してくださいました。

第3位:埋めとけばできる!
手間がとにかくかかりません。
また、温暖地においては周年栽培も可能で、環境変動に対して強い性質を持っています。
さらに、イモ類は地中で育つため、品種改良などにより重さが増しても倒伏の心配もないのです。

第2位:悪環境にも負けない
いわゆる「雑草魂」を持っています。
低肥沃土に耐えうる性質を持ち、乾燥にも強いです。
また、先述した通り倒伏の心配がないため、風や災害にも強いと言えます。

第1位:栄養価が高い
イモ類は穀物としての性質と野菜としての性質の両方を持ち合わせているため、エネルギー源として有能なだけでなく、ミネラルやビタミンが豊富で「隠れた飢餓」にリーチする可能性を秘めていると言えます。
また、このことによって、イモ類の面積当たりの扶養人口は、お米の2倍から5倍であると言われているそうです。

このランキングから、イモ類に秘められた衝撃的なポテンシャルの高さをかなり理解できた気がします。

茶色の革命を起こすには?

では、イモで茶色の革命を起こすにはどうすれば良いのか、田口さんは次のように考えているそうです。

・茎葉部の利用
・ジャガイモ以外のイモ類の全ゲノムの解読
・収穫指数の強化
・栽培技術の開発
・栽培指導
・加工・流通の仕組み

このあたりを見ていると、まだまだイモ類に対して十分にスポットライトが当てられているわけではないということがよく分かりました。
今後の技術の発展に期待したいところです。

食糧問題を取り巻く予想

最後に、食糧問題のこれからの予想について話してくださいました。

食糧問題の課題になることが予想されるもの
・人口増加の伸びが飢餓率低下を超える
・気候変動により赤道付近の農業に被害(もしもSDGsが達成されずに100年後を迎えた場合、気温が数度上昇し、それによって農業は壊滅的な被害を受けることが予想されている)
・気候変動により干ばつ、突発的な飢饉が頻発

食糧問題に対して期待できる予想
・人口の増加は2100年ごろまでに止まる
・アフリカ地域で灌漑整備が進む
・技術革新による生産性向上(遺伝子組み換え、ゲノム編集など)
・マイナークロップの利用によるリスク分散

厳しい現状もありますが、人々の努力しだいで、食糧問題の今後は大きく変わってくるのではないでしょうか。
そのためにも、まずは少しでも多くの人々がこの問題について認識し、今できることを考えることから始めていくことが大切だと感じました。

もっと学びたい方・芋に興味を持ってくれた方へ

田口さんが、もっと学びたい方、芋に興味を持ってくれた方に向けておすすめの書籍をご紹介してくださいました。
興味のある方は参考にしてみてください。

もっと学びたい方へ
(中級編)
「世界から飢餓を終わらせるための30の方法」ハンガーフリーワールド…分かりやすく、田口さんイチオシ
(上級編)
「国際農業開発入門」東京農業大学国際農業開発学科…農業に踏み込んだ話を勉強したい方に
「食料の世界地図」Erik Millstone and Tim Lang…様々な統計情報、指標について詳しく知りたい方に

芋に興味を持ってくれた方へ
(中級編)
「サツマイモの世界、世界のサツマイモ」山川理…田口さんが芋のすごさを感じるきっかけとなった1冊だそうです。
「芋類の栽培と利用」岩間和人…芋に関して詳しく話が載っている

「IMO PROJECT」…年中新歓!社会人歓迎!「東大芋プロジェクト」で検索
https://todaiimoproject.wordpress.com/


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お芋さん

こちらは配信の時のお写真✨おいものポーズです!!

みなさんいかがだったでしょうか?
この記事を読んで、SDGsを考える時間がほんのちょっとでも増えたり、
何かみなさんのアクションに繋がれば嬉しいです(^^)

今回この記事を書いてくださったのは......
立命館アジア太平洋大学の虎ノ助くんでした!!
本当にありがとうございました!

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