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統計検定1級(2021年11月21日)の体験記

初めて投稿いたします。京都で大学院生している者です。

この度、私は統計検定1級に挑戦してきました。修士過程の間、努力してきた成果をぶつけてきました。ここには当日の状況、自己採点結果、試験結果、これまでの勉強過程、今後の目標などを書いていこうと思います。どうぞ、最後まで御一読いただければと思います。

○当日の状況
私は大阪の試験会場でした。某大学の広々とした教室で、コロナ対策のためか前後左右一つずつ以上空けて受験生が座っていました。空席もそれなりにあったので、直前になって怖気付いたか、体調不良か、とにかく申込者と実際の受験者の数はまあまあ差があるかなという感じでした。また、私が確認した限り女性の受験生は1人もおらず、男性しかいませんでした。年齢層も幅広く、大学院生である私のような学生の方もいれば、社会人の方、ご高齢の方までいらっしゃいました。

教室の雰囲気はなんというか「ガチ」でした(笑)。私は試験直前は勉強せずリラックスしたい派なので、教室では本を一切開かず好きな音楽を聴き精神統一に専念していましたが、ほとんどの方は統計学の本や過去問を真剣な表情でじっと眺めていました。やはり、1級ともなると顔つきが違いました。ちなみに、私は過去に2級をCBT方式で受けましたが、その時とは異次元な雰囲気を感じました。

迎えた統計数理の試験本番。解答はご存知の通り完全記述式で、そこそこ分厚い解答冊子と薄い問題冊子が配られました。解答冊子の表面には選択した問題に丸をつける部分があり(統計数理、統計応用ともに90分の試験時間で5問中3問を試験中に選択します)、氏名を書く欄はなく受験番号のみを書く欄がありました。冊子の中にも各ページに受験番号を書かなくてはなりませんでした(これ面倒だったし忘れかけるのでやめてほしい…)。

さて、統計数理が開始しました。ザッと5問全てに目を通したところ、

問1 一様分布と指数分布の特性値→これはもらった
問2 超幾何分布とベイズの定理→まあ、いけるかな?
問3 ポアソン分布とλの信頼区間→これもいける
問4 モーメントの計算→面倒そうだけどゴリ押しでなんとかなりそう
問5 行列と特異値分解→行列苦手だけどこれならいけそう

となり、すごくホッとしました。とりあえず、問1を真っ先に解ききり(約15分)深呼吸。続いて問3を解き、なんか文字が入った二次不等式で変な答えになって焦ったものの時間をかけて修正し完答(約30分)。問2に行き、(2)あたりでおかしな値になり撤退(約10分)。そして腹を括って問4に挑み完答し(約25分)、試験終了10分前にちょうど解き終わりました。

今年は割と簡単な方だったかな、と内心ホッとしつつ試験終了まで計算が多い問1と4の見直しを徹底して行いました。試験直後は、統計数理は確実に受かったと思えました。

そして午後の統計応用(理工学)。解答冊子などについては統計数理と同じなので割愛します。問題冊子は4分野(人文、社会、理工、医療)とあるのでなかなか分厚かったです。

さて、統計応用が開始しました。ザッと問題を見渡したところ、

問1 AICとモデル選択→これはいける
問2 分割ありの実験計画法→やばい、分割ありは聞いてないな…盲点…
問3 プロビットモデルと乱数→乱数の記述わからんし、あと(3)でまたベイズ出てる〜計算めんどいやつやん
問4 決定木→木!?うわ、何も知らん…なんかの本で書いてあったし読めばよかった…
問5 感度特異度とベイズの定理→コロナ関連?(笑) しかしベイズの定理好きやな〜、これはなんとか行けそう

ということで、やばいと思いました。まず、数理っぽい問題が完全になくなっていて、対策していた「時系列分析」や「確率過程(ブラウン運動やポアソン過程など)」、そろそろ来るであろうと予想していた「判別分析」の問題が全くなくて泣きました。それと「作成者どんだけベイズ愛してんねん」と笑ってしまいました。

そんなことを言ってる場合でもなく、とりあえず行けそうな問1を全て解答し(約25分、最後がわからず適当)、次に行けそうな問5を回答しました(約25分、最後はそれっぽい記述を適当に書きました)。さて、あとどれにしよう…と悩んでるのも勿体無かったので、そこそこ対策していた実験計画法の問2を選びました。幸いにも分割実験を知らなくても小問1,2は答えられるものだったのでそこは完璧に行けたかと思います。あとは分割実験を知らないと解けない問題だったので、自分のフィーリングを信じて解答しました(要は適当)。そして解答完了ギリギリで試験終了。これは適当に書いた部分次第では受かり得るし落ち得るなと思いながら帰路につきました。

ここで間違いなく言えることは、理工学の傾向は変わってきていて、数理だけの対策では間に合わないようにしていることです。過去に「理工学は数理だけをやってればいける」といった主旨のことを体験記に書いている人がいましたが、それはもう過去の話です。今となっては(少なくとも2019年以降は)、もうそんなことは起こり得ないだろうと確信しました。過去問(2018年以前のもの)のほとんどが数理と似たようなタイプの問題なので、理工学分野では役に立たなくなるのかなと思います。


○自己採点結果
試験翌日、略解が公開されました。早速私は自己採点をしました。その結果が

統計数理(95〜100%)
問1 (1)○(2)○(3)○(4)○
問3 (1)○(2)(2-1)○(2-2)○(2-3)○(3)○(4)△
問4 (1)○(2)○(3)○(4)○(5)○

統計応用(理工学)(60〜70%)
問1 (1)△(2)○(3)○(4)×
問2 (1)○(2)○(3)×(4)○(5)×(6)△
問5 (1)○(2)○(3)△(4)○(5)△

でした。

数理ワンチャン満点か!?と舞い上がりましたが、問3の記述が怪しい気がしたので満点ではないでしょう。でも答えを全部合わせに行けたのは素直に嬉しかったです。

一方の統計応用。ご覧の通りで、問1(1)は交絡と書いておけばよかったものを無作為化しておらず誤差の独立性が怪しくなるなどと難しく書いてしまったり、問2は(4)が奇跡的に合ってたもののその他の分割実験の問題で無事爆死しました。問5に至っては、特異度を求めるときに正規分布の値を1から引いていないなどのやらかしをしてしまいました。合格水準がわからないためなんとも言えなかったですが、「60%ならギリギリ受かってるだろうけど今年は機械学習者が結構多く見受けられて問4とか完答してるから合格水準上がりそうかな」とも思ってたので不合格と思っておくようにしました。

○試験結果
結果は、統計数理と統計応用(理工学)共に合格していました。そして、統計数理では最優秀成績賞(Sランク)、統計応用では優秀成績賞(Aランク)をいただきました。

統計応用の方は合格すら自信がなかったのでこの結果には嬉しい気持ちと同時に大変驚かされました。最初は数理も応用もとりあえず受かればいいなと思いながら受験したので、このような賞を両方の部門でいただけるとは思ってもいませんでした。

統計数理はおそらく合格水準がかなり上がったかと思います(推定ボーダーライン70%)。一方統計応用の方は難化した2019年度とそんなに変わらないかと思います(推定ボーダーライン55%)。

○勉強過程
私が統計検定1級の勉強を本格的に始めたのが2021年の4月です。それまでも2級の対策だったりで統計学自体には2020年9月あたりから触れていました。

まず、使った参考書(タイトルに多少の誤りあり)(☆はオススメ度)は

・「日本統計学会公式認定 統計1級対応 統計学」(公式本)(☆☆)
・「現代数理統計学の基礎」(著:久保川達也)(☆☆☆☆☆)
・「基礎系数学 確率・統計Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」(東京大学工学教程、緑色の本)(☆☆☆☆)
・「統計学実践ワークブック」(公式本、準1級対応)(☆☆☆)
・「多変量解析入門」(著:小西貞則)(☆☆☆☆☆)
・「過去問(2012〜2019)」(☆☆☆☆☆)

です。これらを頼りに勉強しました。初めは、公式本を中心に基礎事項を固めました。そして、統計応用関連の理論を学ぶために3冊目と5冊目の「確率・統計Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」と「多変量解析入門」を並行して読んでおり、前者は実験計画法や時系列解析、モデル選択などが詳しく書かれており、後者は線形回帰、ridgeやlasso、線形判別、SVMなどについてシンプルにまとめてあるので超おすすめです。これらの本をひたすら試験本番まで何周も読みました。そして、ある程度基礎力が定着したと思った頃(6月ごろだったかな?)に2冊目の「現代数理統計学の基礎」に着手し始めました。これらの中でも特に「現代数理統計学の基礎」はやってて楽しかったです。歯応えのある問題が多く、これを完璧にすれば統計数理ではお釣りが出るぐらいだと思っています(3周ぐらいしました)。そして、7月ごろから統計応用の演習として、4冊目のワークブックを使用していました。

過去問については、まず1回目で年次はランダムに選択し、時間を測って行いました。そして、1回目で間違えたところは解説を熟読し、2週間以上空けてから解き直すようにしていました。3周目は時間制約を大問1つあたり20分までとかなりキツい制限を設けて試験直前に行いました。

私は大学院生なので研究室の活動もあったため100%統計学に時間を投資することは不可能でした。なので、平日は研究やバイトを朝昼夕方までやり夜(深夜)に統計学を勉強していました。特に8月以降の土日のほとんどは暇さえあればフルで統計学の学習に充てていました。かなり無理のあるスケジュールだったとは思いますが、これは自分にとって「統計学の勉強が楽しいと思えたから」できたことだと思っています。たまたま自分には統計学が向いており、たまたまそのような学問に出会えたことが大きな要因でした。

○今後の目標
もちろん、これで統計学を制覇したなどと自惚れるつもりも、統計学の勉強をやめるつもりもありません。今後は、就職先で統計学の知識(特に理工学の素養)を活かせる可能性があるのでその現場で成果を出し、そして統計応用の人文科学、社会科学、医薬生物学にも挑戦します。まだまだ人生の中で統計学と向き合っていく予定ですので、皆さんと一緒に頑張れたらと思います。飽き性な私でも年単位で興味を継続させられる統計学という学問に出会えて本当に嬉しい限りです。

○さいごに
ここまで拙い文章でしたが、私の統計学に対する向き合い方や統計検定1級への対策・目標、こういったものが読者の皆様に伝わっていれば充分です。今後、もし私に余力があれば、2021年統計検定1級の全ての解答・解説(統計応用の全分野含む)、統計数理のオリジナル問題(統計数理の試験対策にお使いください)、その他統計学に関する投稿などをしていく予定ですので、たまに覗いていただければ嬉しいです。

改めまして、ここまでの長い文章を読んでいただきありがとうございました。

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