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数学を学んだから

進路希望調査の記入ミス⁈

私が高校3年生のときの話。私の高校はある大学の附属校で、2年生から文理が分かれます。そして、3年生で大学の志望学部・学科を調査される機会があり、成績等が問題無ければ希望の学部に進学することができます。もちろん、理系を選んだ生徒は理系の、文系を選んだ生徒は文系の学部に行きます。

担任の先生:「は~い。今から希望調査の紙を配るから、自分が行きたい学部・学科を書いて明日までに提出するように」

配布された紙には、三つ学部・学科を書く欄がありました。当時私には二つ行きたいところがあり、三つの欄の内二つはそれを書きました。

私:「残り一つは…、どうしよう?う~ん…。まあ、これでいっか!」

残り一枠は特に行きたいところが無かったので、私は適当に「理工学部・数学科」と書きました。このときの行動が、悲劇の始まりとも知らずに…。

暫くして、担任の先生から電話があったのです。「織田君は理工学部・数学科に決定しました」と。「え!!!数学科なんて行きたくないんだけど???」私は焦って、なぜ数学科に決まったか聞き返しました。

すると、先の希望調査の紙は、上から志望順位が高いという暗黙のニュアンスが含まれていたのだとか!!!つまり「志望度合が高い順から書いていってね」という意図があったそうです。

希望調査の紙

「言えよ!!!!!」と心の底から思いましたし「欄の一番左に1,2,3みたいに番号振っとけ!!!!!」と叫びたくなりました。まあ、私が聞き逃していたのかもしれませんが。

要するに、私が適当に書いた数学科がたまたま一番上だったからですね。結局、一度決定したものを変更できず、私は理工学部数学科に進学する羽目になってしまったのです。

数学科の講義

大学に入学していざ数学科の講義を受けてみると、退屈そのものでした。まず座学しかない。応用化学科や物理学科は実験があって楽しいのですが、数学は座学中心。しかもその内容が難しい…。

教授:「今日は『ハムサンドイッチの定理』の証明をします」

私:「ハムサンドイッチの定理*?食べ物?」
*実はこれ、本当にあります!

それでも、流石に留年するわけにはいきませんよね。だから、ずば抜けて良い成績ではなかったけど、単位は取得しました。けれど、私勉強しながらずっと考えていたことがありました。「これって結局社会で役に立つの?」

私卒業して社会人になってから、自分が学んだことを役立てたかったのです。

「化学や物理なら、社会に役立つってわかる。でも、数学って…。」

そう、私は自分の進路に迷うことになったのです。

大学院でのターニングポイント

しかし、大学4年生になったとき、転機が訪れます。大学の掲示板を見ると、こんなチラシがあったのです。「明治大学大学院 先端数理科学研究科 現象数理学専攻 来年度開講 進学者募集中」なんだこの長ったらしい名前の研究科は?と最初は思いましたが、説明文を読んでみると、「社会に役立つ数学を学べる」とありました。

私:「社会に役立つ数学…。社会に役立つ数学…。」

その日自宅に帰っても、なぜか頭からその言葉が消えませんでした。だって、あんなに数学が役に立たないと思っていたのに、「社会に役立つ数学を学べる…。」私の進路が決まりました。そう、大学院進学です!

そこからはとんとん拍子でした。当時「ビッグデータ」と呼ばれる莫大なデータを分析するビジネスが流行っていました。その分析には「統計学」を使うということだったので、それを学ぶことにしました。


統計学の理論を理解するには数学を使うので、先端数理科学研究科に研究室がありました。統計学は立派な「社会に役立つ数学」なのです。

修了式の様子

私は現在、情報通信系の企業でデータサイエンティスト(蓄積されているデータを分析して価値を見出す仕事)に就いています。無論大学院で学んだことが役に立っています。そんな私が仕事をしていて思うのは、高校のときに意図的ではないものの進学を決めた数学科についてです。あの時数学科を選んでいなかったなら今の自分は無いなと。人生の中でどんな選択をしても、その選択には必ず意味があると私は考えています。


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