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「CDを作りたい」という知人の相談に答える

趣味でビッグバンド(ジャズバンド)をやっている知人から「CDをつくりたいんだけど」と相談があった。まず、ライブハウスで録るかスタジオで録るかで迷っているとのこと……同じ様なことを考えている人が世の中にあと5人はいると思って、知人への回答を note で公開することにしました。市販する場合には更に色々あるのですが、そこは省いています。


ライブハウス or スタジオ

慣れないレコーディングは、何かと緊張するもの。もし、使用頻度の高いハコ(ライブハウス)があるのであれば、そこで録るのが “いつもの調子” への近道です。「多少のミスはそのまま記録として残してOK」であれば、ライブ収録が時間とコストを最低限に抑える方法です(恐らく)。最近は、公演をレコーディングしてくれるライブハウスもあります。しかしながら、PA と Recording とで最適なマイクロフォン・アレンジは異なりますし、片手間で録ることが殆どなので、積極的にオススメはしません。

とはいえ、レコーディング・スタジオと違って録音への制約が多い中、素晴らしい仕事をしてくれる方もいます。「ライブハウス レコーディング 地名」みたいな組み合わせで検索して、ライブハウスのホームページや店長さんのブログをチェックし「良さそうだな」と感じたら、その直感を信じてみるのも良い選択肢です。

ライブハウスに、レコーディング・エンジニアが機材とともに出張する方法もあります。出張費や機材費がかかりますが、よほど遠方でなければ見積は “一式” で済む場合が殆どです。ただし、ライブハウスへの機材搬入、設置、調整に最低でも2時間は必要。撤収はお客さんが退出してから最低でも1時間。つまり、それだけの時間を余分にレンタルする必要があります。公共ホールなら機材設置のためのスペースも十分にあるので、ビッグバンドの演奏に適した音響のホールを借りられるのであれば、この “出張録音” は悪くない選択肢です。

レコーディング・スタジオの利点は、色んな意味で「ノイズがない」こと。救急車が近くを通過しても問題なし、空調の「ゴォォォ……」という暗騒音もなし。そうそう、同じフロアに飲食を備えたライブハウスだと、冷蔵庫や製氷機の電源をOFFにできない可能性が大いにあり、これがまた悩ましいノイズ源。

レコーディング・スタジオなら、予め編成を伝えておけば前もって8割程度は準備してくれるはずなので、スタジオに入って30分もしない内に録り始めることができます。もうひとつの利点は「録った音を(いい音で)すぐに確認できる」こと。これ、出張録音だと難儀することが多いんです。録音用の機材に加え、再生用の機材と環境を準備しなくてはならないので。

思いつくデメリットは、慣れない環境に圧倒されてしまって “いつもの調子” が出ないケース。「音質は良いけど肝心の演奏が……」という展開になる可能性があります。あとは、スタジオにもよりますが総じてライブハウスよりも費用がかかるので、何度も録り直していると演奏よりも費用の心配で頭がいっぱいになってしまうかも知れません。音質重視で、各曲を1~2テイクで終えられるのなら迷わずレコーディング・スタジオです。1時間のアルバムを作るなら、最低でも3時間(つまり、3倍の時間)が必要と見積もってください。5倍あれば心に余裕が生まれます。


CD完成までの流れ

メンバー間で、収録曲の打ち合わせ。CDにするならば、総演奏時間を(多少の余裕をもたせて)70分以内にまとめる。

収録曲のテキスト情報を準備する。一言一句、間違いがないか確認。このテキスト情報は打ち合わせ等で重宝するほか、許諾申請やCDジャケットにもそのまま活用できる。その他、作編曲者や演奏時間といった情報も後々必要になるので、スプレッドシート(Excel等)にまとめておくと良い。

著作物使用許諾関連手続き。JASRAC管理作品については下記URL参照。
https://www.jasrac.or.jp/info/create/index.html

CDジャケットの構想を固める。必要であれば、レコーディング時に写真撮影を手配。メンバーのプロフィール等についても掲載するようであれば準備を進める。また、関係者やスタッフのクレジットもあるので、人名や施設名などを適宜まとめておく。表記についてはデザイン段階で日本語か英語か迷うことが多いので、できれば両方揃えておくと安心。

ライブハウス、スタジオ、ホール、エンジニア等との打ち合わせ。必要に応じて、宿泊場所や食事の手配。打ち合わせ前に、編成、収録曲、演奏順などをわかりやすくまとめておく。イメージしている音があるならば、その盤をエンジニアに渡し聴いてもらうのも手。エンジニアにも作風(得手不得手)があるので、遠慮なく相談する。

ジャケット&盤面デザインの手配。入稿の主流は、Illustrator または PDF 形式なので、入稿データ作成はある程度知識のある人に任せたほうが吉。一括して請け負ってくれるCDプレス業者もある。

マスタリングの手配。レコーディング・エンジニアがマスタリングを行うケースも増えてきたが餅は餅屋で、異なる “耳” が関わった方が概ねいい結果に繋がるので、可能であればマスタリングにも予算を割く。音質云々の前に、プレス業者に入稿できる状態にするのは必須。入稿形式は「DDP」が一般的。CD-R コピーなら、CD-DA(オーディオCD)でも良い。プレス業者を指定しているマスタリング・エンジニアもいる。

CDプレスの手配。「CD プレス」で検索すると多くの業者がヒットする。ケースの種類やブックレットのページ数等によりデザインの工程や工数も変わってくるので、プレス枚数含め検討する。急がないのであれば国内プレスにこだわらず、海外(例えば台湾)プレスの方がコストを抑えられる。1000枚くらいまではコストが殆ど変わらないが、必要以上に作ってしまうと在庫の山を抱えることになる。

……と、思いつくままにまとめました。コーディネート等のご依頼あれば、下記よりお問い合わせください。


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