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スタジオ録音とホール録音の違い

私のレコーディング・エンジニアのキャリアは、株式会社音響ハウスでスタートしました。当初はマイクロフォンの名前も知らず、手にボールペンで書いて覚えたりしたものです。

その後、オーケストラや室内楽をコンサートホールで録音するようになって、スタジオ録音とホール録音との、アプローチの違いを実感することとなります。

例えば、弦楽四重奏を最大6本のマイクロフォンで録るとしましょう(図解がテキトーですみません)。


【1】レコーディング・スタジオで仕事をしているエンジニアは、まずこう考えると思います。

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まず、各楽器の直接音を優先し、スタジオの響きを “何となく” 捉えるために、スタジオの隅などに “何となく” マイクロフォンを置くでしょう……ただし、この何となく設置した2本のマイクロフォンの間隔が広すぎると、空間をねじ曲げたような音になってしまいます。

【2】主にスタジオで仕事をしているけれど、時々ホールで録るエンジニアなら、こんな具合にマイクロフォンを配置するかも知れません。このマイクロフォン・セッティングなら、スタジオでもホールでも通用するでしょう。

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問題は、どのマイクロフォンを Main と考えるか……スタジオで仕事をしていると、意識は楽器の直接音に向かいがちになりますが、聴衆がそんな至近距離で音を聴くことは不自然でもあります。

【3】コンサートホールでの録音経験が多いエンジニアなら、恐らくこんなセッティングから始めるでしょう。スタジオでは主役だったマイクロフォンが脇役にまわり、空間で混ざり合う音を捉えることが優先されます。

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【4】ホールの空間をより感じさせるなら、こんなマイクロフォン・セッティングもありでしょう。しかしながら、スタジオ録音しか経験していないエンジニアは、「こんなセッティングはあり得ない」と思うに違いありません。

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……ざっくりと、だいぶ乱暴に言ってしまうと、「スタジオでは主役だったマイクロフォンが、ホール録音では脇役」であり、これは頭でわかっていても、体験しないと絶対に理解できない視点です。

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