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女同士の友達関係の歌として聴いても面白いー小松未歩「氷の上に立つように」

はじめに

こんにちは、2000年前後のbeing作品の歌詞の解釈について書いている「品川みく」です。

ふとしたことで小松未歩をはじめとしたbeingアーティストたちの曲への愛が一気に湧き出し、この溢れ出す気持ちを言葉にしなければ!という思いで一気に記事を書いています。

私は2000年ごろ10代で、現在は30代。10代のころ好きになって何百回も聴いていた曲も、いま改めて聴くと以前とはだいぶ違った感じに聴こえてきます。私の場合は歌詞の「物語性」に特に着目しており、この曲はいったいどういう物語を描いたものなのか歌詞を解釈していくことが当時からすごく好きでした。20年の人生経験を経て、一つの曲の解釈がどのように変わっていったのか。その変化をお楽しみいただければと思います。

今回は小松未歩「氷の上に立つように」(1998年)について語ります。

ワンコーラスを「コナンの曲」として聴いて楽しい。フルコーラスで小松未歩の世界観を知るともっと楽しい

小松未歩を「コナンの曲の人」として認知している人は結構多いと思います。デビュー曲の「謎」が名探偵コナンのイメージに見事にはまり、いきなり大ブレイクを果たしたのが1997年のこと。「謎」のほかに「氷の上に立つように」「願いごとひとつだけ」「あなたがいるから」と、DEENに楽曲提供した「君がいない夏」の計5曲をコナンのテーマソングとして作っており、そのいずれもがオリコン週間チャート10位以内に入るヒット作となりました。逆に言うと、コナンタイアップ曲以外にはヒット作が少ないのが残念なところですが、熱心な小松未歩ファンの私としては、「コナンの曲の人」としてだけでも小松未歩の話が通じればものすごく嬉しいのです。

さて、「氷の上に立つように」はコナンのエンディングテーマソングとして使われた曲で、新一と蘭をイメージした方がすごく多いと思います。私も当時、まずはそこから入りました。「何もない毎日が一番だというけれど 本当は逃げてる君のいない日々に負けて」というあたり、新一と会えなくなって苦しむ蘭の切ない想いを歌った曲のとしてすごくハマります。

当時、Beingは、アニメタイアップをものすごく上手に活用してCDを売っていました。まず、テーマソングとしてオンエアされる部分は思いっきりそのアニメの世界観に寄せて(解釈できるように)作ります。そして、アニメのテーマソングを何週か流して曲への関心が高まった頃に、幕間のCMの中で、テーマソングには使われていない部分をチラリと見せるのです。すると、この曲全体はいったいどういうものを見せてくれるのだろうと、見事に購買意欲が刺激されて思わずCDを買っちゃうんですよね。

コナンの曲としてワンコーラスを聴いても楽しい。フルコーラスでそのアーティストの世界観を知るともっと楽しい。10代の多感な時期に、本当に、Beingの楽曲には楽しませていただきました。

23年前の解釈:君のようにスリリングな挑戦をしてみたいと願うラブソング

さて、ではいざCDを買ってフルコーラスを聴いた当時中学生の私がこの曲をどう解釈したかというと、夢を追っていなくなった思い人に追いつきたいと願い新しいことにチャレンジしようとするラブソングだと思いました。

幼馴染ですごく仲の良かった男女二人。いつも一緒にいたけれど、少しずつ恋心が芽生えて、恋人同士になりたいと思う頃に、「君」は夢を追いかけて遠くへ行ってしまいます。ちょうど、アニメの新一と蘭のような関係ですね。

「君のいない日々に負けて」「何もない毎日」を送ることに「逃げ」そうになるけれど、でも私だって「君」と同じように、「思い描いてた夢も形にしてみたい」。

「氷の上に立つ」は薄氷を踏む、あるいは英語でon thin iceという意味です。コナンのアニメでも新一も身の危険を感じながらも探偵として黒の組織を追うスリリングな人生を歩んでいますよね。あんな感じで自分も危険を冒してでも、宇宙船にだって飛び乗ってしまうくらいのチャレンジを自分もしてみたい!という思いを歌っているのだと思っていました。

現在の解釈:女友達との友情を描いた歌

当時はコナンのイメージから入って男女のラブソングだと思って聴いていたこの曲も、時が経てばまた違った感じに聴こえてくるのが不思議です。

私が社会人になってすぐの頃、自分自身の夢が実現しそうなところでチャレンジをしていた頃、この曲は「いまの私の状況を歌っているんだ!」と感じるようになりました。

「わずか数行で片付けられた新聞記事にも一気一憂してみるけど」という表現、これは自分のやった仕事が新聞記事に載ったのだと解釈しました。スポーツなのか演劇なのか、あるいは小松未歩のように歌手なのかは分かりませんが、「わずか数行」であっても新聞記事に載るのは凄いことです。でも、自分としてはまだまだそれに満足せず「わずか数行で片付けられた」とする。でも、それでもどのように取り上げられているのかは気になるから「一喜一憂してみる」。「望み続けた場所」(=自分の目指していた仕事や業界)で「生きているのだから」、いつかはトップに立ってやる!という熱意を歌っているのだと思いました。

ちょうどこのとき小松未歩はCD売上としては自己最高の2ndアルバム「未来」へと向かって駆け上がっていく最中です。ふとした偶然から長戸大幸プロデューサーに才能を発掘され、憧れだった世界を一気に自分のものとするシンデレラストーリーを駆け抜ける小松未歩。この「氷の上に立つように」は当時の小松未歩自身の心境を歌っているのではないかと思うとともに、小松未歩ほど華々しくはないものの、自分のやりたかったことを仕事にしようとしているという点では共通していた私にとっても「いまの私の状況を歌っているんだ!」と感じさせてくれました。
つい最近、2021年の10月にプロデューサーの長戸大幸がラジオで小松未歩の「チャンス」制作の裏話を披露したことがありました。この話を聞いてから、いっそう、私は「氷の上に立つように」から長戸プロデューサーの導くままに新しいことにどんどんチャレンジしてみよう!と意欲的に制作に取り組む小松未歩の姿をイメージするようになりました。

さて、そうだとするとこの曲、だんだん、実はラブソングではなかったのでは?と思うようになりました。

この曲、ラブソングだとすると解釈しにくいフレーズがいくつかあります。「前髪を少し短くしただけで生まれ変われちゃう そんな考え方が好きよ」というのは、いったい誰のことを歌っているのでしょう。

ストレートに解釈すれば「前髪を少し短くしただけで生まれ変われちゃう」という考え方を持っているのは「君」であり、そんな「君」のことを歌い手が好きだと言っているのでしょう。だとすると、歌い手は男性視点なのでしょうか。小松未歩が男性視点で歌った歌もありますがこの曲の歌詞はとても女性的です。では女性同性愛を描いたもの? そうした解釈もできますが、私は、歌い手も「君」も女性で、女同士の友情を歌った曲だと解釈するようになりました。

ちなみに、小松未歩に憧れてシンガーソングライターになった大原ゆい子は2018年に音楽番組で「氷の上に立つように」のカバーを披露した際にこの「前髪を少し短くしただけで生まれ変われちゃう」というフレーズがすごく好きで、「よくわかる!」と共感していたと語っていました。20年経ってもプロのアーティストにこの曲が歌い継いがれていることに小松未歩ファンとしては大感激です。さらに2021年にはGIZAの現役シンガーソングライターの植田真梨恵がライブでこの曲をカバーして、私は大変衝撃を受けるのですが…やっぱりこの曲は女同士の共感の1曲なんじゃないかと思います。

「素顔のままでいたいから 内緒よ恋をしたって」の部分はラブソングだとすると誰に語りかけているのか謎なのですが、女同士の友情の曲だとするとスッキリ解釈できます。「君」に対しては「素顔のままでいたいから」「恋をしたって」「内緒」にしておこうということです。そういう友達関係、ありませんか?

おわりに

歌詞の解釈に正解はありません。私の解釈もその一つに過ぎず、どういう解釈をするかは自由ですが、私の場合は、時間を経て同じ曲が違ったものとして聴こえてくるその変化がとても面白いのです。ひとりでもふたりでもこういう話を面白いと思ってくれる人がいたら、ぜひコメントをいただけると嬉しいです。

それでは、また。