見出し画像

いちど恋仲になった幼馴染の門出を迷いながらも応援するーGARNET CROW「Mysterious Eyes」

はじめに

こんにちは、2000年前後のbeing作品の歌詞の解釈について書いている「品川みく」です。

ふとしたことで小松未歩をはじめとしたbeingアーティストたちの曲への愛が一気に湧き出し、この溢れ出す気持ちを言葉にしなければ!という思いで記事を書いています。

私は2000年ごろ10代で、現在は30代。10代のころ好きになって何百回も聴いていた曲も、いま改めて聴くと以前とはだいぶ違った感じに聴こえてきます。私の場合は歌詞の「物語性」に特に着目しており、この曲はいったいどういう物語を描いたものなのか歌詞を解釈していくことが当時からすごく好きでした。20年の人生経験を経て、一つの曲の解釈がどのように変わっていったのか。その変化をお楽しみいただければと思います。

今回は、GARNET CROW「Mysterious Eyes」(2000年、作詞:AZUKI七)を紹介します。

GARNET CROWの歌詞はとっても難解

GARNET CROWのボーカルの中村由利の歌声は女声としてはとても低く中性的なため、男性視点の曲としても女声視点の曲としても楽しめます。
AZUKI七の描く歌詞はとても詩的で独特の世界観(死生観)を持ち、そしてとても難解でした。

心に残るカッコいいフレーズも多いのですが、それらを繋ぎ合わせて1曲全体で一貫したストーリーを思い浮かべるのがものすごく難しい。コナンのテーマソングとして使われたワンフレーズだけでなんとなく思い浮かべたイメージも、フルコーラスを聴くとあっさり裏切られるように感じることもあります。このため、ファンの中でもこの曲はこういう曲なんだとストーリーを語る方は少なかった気がします。

GARNET CROWは「曲先」で制作していることを明らかにしていたこともあり、歌詞に一連のストーリーなんて最初からないのだと解釈するファンもいました。もちろんそういう解釈もできます。けれど、私としてはそれは少し寂しいかなと思い、AZUKI七がきっと思い浮かべたであろうストーリーを解き明かしたいと解釈に挑んだものでした。

21年前の解釈:二人はやり直すの?やり直さないの?どっちなの??

まずは、21年前、中学生だった頃に私がたどり着いたところまで。

この曲は、「幼き日々」とか「色褪せていく二人の記憶の中今僕らは」といった表現から、幼き頃から関係を持っていた二人の物語であることが連想されます。

「幼き日々の 両手に溢れていた小さな a pebble 誰にも見えない宝のように輝いた時間(とき)の中で」というのは幼い頃夢いっぱいに語り遊んだ楽しい時間のことを描いているようです。

しかし、その中で「気がつけば 求めていて 同じじゃない 愛 すれ違う」とあるあたりからは、一度は求める愛の形が違ってすれ違った様をイメージし、このあたりから私は「君と僕」は幼馴染で一度付き合ったけれど、その後別れていた関係、と解釈しました。

で、一度別れていた二人はその後どうなったのか。「抱きしめて I’d like to be in your love」とか「もう二度と迷わないようにその腕を離さないで 傷つけ合うその時も」あたりは、二人がもう一度恋愛関係をやり直すかのように思えます。

一方で、「他の誰かを未来を探していく」とか「you take your way(君は君の道を進んで)」あたりは二人が別々の人生を歩むようにも思えます。

結局、二人はやり直すの? やり直さないの?? どっちなのー?? と悩んで答えを出せなかったのが21年前の私でした。

現在の解釈: この迷いこそが二人の尊い関係性

GARNET CROWはその後2013年まで活動を続け、150を超える曲をリリースします。デビューから解散まで同じメンバーで曲作りを行い、ほぼ変わらないテイストが貫かれたため、楽曲が増えるたびに少しずつ彼らが大事にしているものが理解しやすくなっていきます。

私としては、GARNET CROWを貫く価値観として、「人と人がつくろうとする関係性にはいろんな形があり、その営為は、どれも尊い」というものがあると解釈しています。

その(私が解釈した)価値観の下で「Mysterious Eyes」を読み解くと、まさに「やり直すの? やり直さないの?」という迷いこそがこの二人の関係性を表しているように見えます。

そこで、ちょっと大胆な(?)私のこの曲の解釈をお示ししたいと思います。

それは、「君」はそのあと付き合う相手を見つけて、その人からプロポーズを受けた。けれど「君」にも迷いがあり、本当にこの人と結婚してよいのか「僕」に最後の相談にきたーーというストーリーです。これが正解かは分かりませんが、こう解釈する一応全てのフレーズが矛盾なく一つのストーリーに収まります。

「もう二度と迷わないように その腕を離さないで 傷つけ合うその時も」というのは「僕」が「君」に対して、これから結婚する相手の腕を離さないでと言っているのだと思います。
自分の求める愛の形をさがして、そしてその形が僕と君との間で異なって悩んだけれど、もうこれからは迷わないでその人と生きて、という僕から君へのメッセージなのではないかと。

幼き日々を一緒に過ごし、一度は付き合った二人。恋愛観や価値観の違いが見えていき、一度離れた二人は、「他の誰かを未来を探していく」。

けれど、本当にそれでよいかは迷いがあって、
二人はもう一度幼い頃に行った思い出の海に一緒に行ったりします(海の見える街へゆこうよ 君だけに見えたあの日を誘い出して連れてきて、のあたり)。

きっと幼い頃、たとえば「君」が描いた絵がとても素敵だったりして、「君」の目には世界がどのように見えているのか不思議に思ったのだと思います。僕にとって魅力的で不思議な君の目(=世界観)のことを「Mysterous Eyes」と呼んでいるのだと思います。

けれど、ふたりの求める愛の形は異なり、君とともに生きていくのは難しく、君は今の相手を選んだ方がよいと思う。だけど、そこにはやっぱり迷いがあります。「ただずっと 答えを捜して 迷い込んだ時空(とき)の中で」、迷った末に出した答えが「次の場所へ」「you take your way(君は君の道を進んで)」なのだと。

君を愛するからこそ、別の相手と生きる門出を応援する。これも一つの愛の形。君を送り出す際、僕は君を抱きしめて、別々の人生を生きても君との愛を感じていたい(I’d like to be in your love)と伝えたのですね。

それでもやっぱり君を送り出した後、これで本当によかったのかなぁという迷いもあって、誰にも言わないけど、これからもずっとその迷いの中で生きていくんだろうなあという気持ちがラストのサビて「密やかに繰り返してゆく 迷いの中 I feel so all secret life」と歌われているのだと思います。

君のことは好きだけれど、一緒に生きていくべきは他の人ではないかと思って身を引いたこと。一緒に歩まない道を選んだけれど、でも、もしあのとき一緒に生きることを選んでいればと思うことーーそんな恋、ありませんでしたか。それもきっと一つの「愛の形」なのです。

おわりに

歌詞の解釈に正解はありません。私の解釈もその一つに過ぎず、どういう解釈をするかは自由ですが、私の場合は、時間を経て経験を経て同じ曲が違ったものとして聴こえてくるその変化がとても面白いのです。
ひとりでもふたりでもこういう話を面白いと思ってくれる人がいたら、ぜひコメントをいただけると嬉しいです。

それでは、また。