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読者の勇気へ響く言葉を届ける書き手、藤原梨香さん。

はじめに
初めてのノート投稿、少し緊張しています。この記事はinquireのライティング勉強会の中で書いた記事です。「FastGrow」や「XD」といったメディアでライターとして活躍される藤原梨香さんに取材を行い、書かせていただきました。せっかくなので、今後はnoteを更新するぞという思いも込めて投稿します。

藤原梨香さんの第一印象は、「丁寧で、にぎやかな方」でした。初めてお話した際のやわらかくよく通る声と大きなリアクションが印象に残っています。
今回藤原さんに取材を行い、記事を書くことになりました。「FastGrow」や「XD」といったビジネスメディアでライターとして活躍されている藤原さんが、どんな想いでお仕事をされているのか。取材の中で見えたのは、現場へ足を運び、当事者の想いに真正面から向き合う真摯な姿でした。

可視化されていない声を伝えたい。

ーー藤原さんのキャリアを拝見したところ、テレビ局でアナウンサーをご経験されていますね。事業会社へ転職され編集、2019年に独立されてライターと、「書く」ことへ仕事の軸を移されているように感じました。アナウンサーで「話す」仕事をされていたところから、「書く」仕事へと変わっていった理由はどこにあったのでしょうか。

実はアナウンサーだったときから、報道記者の仕事も兼務していました。むしろ報道記者の仕事の方が多く、取材と原稿作成が全業務の7割ぐらいを占めていたと思います。報道の場合、取材先が前日に決まり、取材後のわずかな時間で書き上げるんです。社へ戻る車内で必死に原稿へ向かっていた日々がなつかしい…(笑)。体力が必要な現場でしたが、取材してなにかをつくることがとても好きでした。そういった意味ではキャリア全体を通して、「取材したことを書いて伝える」という点がしっかりと繋がっています。

ーー「話す」ことから「書く」ことへ転換されたわけではなく、ずっと「書いて伝える」ことを軸にキャリアを重ねられているんですね。藤原さんが書く仕事を通じて、伝えたいことはなんでしょうか。

可視化されていない声を伝えていきたいと思っています。報道記者を経験する中で、直接お話を聞かなければ見えてこない事実があることを実感しました。一般に流通しているストーリーの裏側には、あまり知られていない当事者の声が隠れていることもあります。

ーーなにかそう感じたきっかけがあったのでしょうか。

震災直後に、ある取材を担当したんです。福島県田村市都路町から県内の仮設住宅へ避難し、避難指示解除後再び自宅へ戻られた方たちのインタビューでした。自分の意図に反して町を出なければいけなかった上に、決して快適ではない仮設住宅での暮らし。「きっと皆さん自宅に帰れて嬉しいに違いない」私はそんな単純なイメージをもって、取材へ挑みました。でも実際にお話を聞いてみると、仮設住宅に住んでいたときの方が幸せだったとおっしゃるんです。

ーーなるほど、当事者に話を聞いてみたら、予想と全く異なる声を耳にすることになったんですね。

仮設住宅には、そこで暮らす人にしかわからない繋がりがありました。同じ境遇の人が、同じ場所にいて、励ましあっている。しかし避難指示が解除され、「帰る」選択をする方もいれば「残る」選択をする方もいらっしゃいます。そこで暮らしていた皆さんは離れ離れになってしまったんです。自宅へ戻れた嬉しさよりも繋がりのあった人たちと離れ離れになってしまった悲しさが勝る。
そういった思いを聞いて、自分がいかに安直な考え方にとらわれていたかに気付かされました。当事者の声に耳を傾けることの重要性を心に刻んだ経験です。

ーー確かに、当時メディアで報じられる多くは仮設住宅の住心地の悪さや見通しの立たない避難指示解除への不安だったように記憶しています。藤原さんは当事者の「可視化されていない声」を誰かに伝えることで、達成したいことはありますか。

私自身、誰かの言葉や記事に救われた経験がたくさんあります。なので私が書いた記事も、誰かが勇気を奮ったり、誰かの価値観が変化したりする機会になればいいなと思います。

取材を通して、ワクワクする未来を引き出す。

ーー藤原さんはスタートアップの取材記事を多数書かれているので、ビジネスやテクノロジーの話題について触れることが多いかと思います。もともとテクノロジーやビジネスに興味があったんでしょうか。

正直、あまり関わりのある分野だとは思っていませんでした。取材を重ねるうちに、段々と魅力に気づいていったような感じで、事業会社で得た経験が大きく影響しています。
当時、ASACというインキュベーション施設の企画を受け持っていました。その取材で出会うスタートアップがとにかく魅力的で!自分の中に湧き上がる課題意識をないがしろにせず「ビジネス」をいう手段を通して、理想とする世界に向かっていく。そんなスタートアップの熱意ある姿勢に惚れ込み、この分野の魅力に引き込まれていきました。

ーーテクノロジーやビジネス分野における取材の魅力は、どういう部分にありますか。

その人がめざす世界や、考えもしなかった事業が生まれる場に触れられる瞬間が大好きです。技術の進歩や意外な発想によって、これまで自分では解決できないと思っていた課題が解決される。そんな未来を具体的に想像できたら、とってもワクワクしませんか!

ーーそういった「ワクワクする未来像」を取材で引き出したり、記事で表現したりするときに意識されていることはなんでしょうか。

読者にとっての学びは特に意識しています。気を抜くとすぐに自分の好奇心に従って話を進めてしまうので…(笑)。
読者だったらどんなことが知りたいか。見習うべきポイントや、知りたい点はどこか。別の課題にも応用できるような学びを読み手に提供できれば、社会の課題解決が進むきっかけにもなれるんじゃないかと思っています。そういう意味では、だれかの背中を押したいという想いが、常に根っこにあるのかもしれません。

藤原梨香さん プロフィール
「FastGrow」ライター / 「XD」ライター /「PublicAffairsJP」ライター /「PR Table」ライター、エディター
アナウンサー兼報道記者として、東日本大震災の被災地を中心に500以上の現場を取材。2017年に設立3期目のスタートアップ企業に5人目の社員として参画し、100社以上の情報発信やPR活動に尽力する。2019年10月よりライターとして独立。「一人の勇気が社会を変える原動力になる」をモットーに、社会課題を解決しようとするイノベーターの取材を続けている。

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