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【中小建設業者向け】他業界から転職してきた未経験者が長続きする2つの秘訣とは?

中小建設業者の皆様、このような経験はございませんか?

・久しぶりに入社した新人が3ヶ月以内に辞める
・他業界からきた未経験者が現場に馴染めないで欠席が続いている

建設業界あるあるですが、辞めていく人に対して、
「あいつは現場に合わなかったんだな」
「最近の若者は長続きしないからな」
「すぐやめる奴は他に行ってもすぐに辞めるよ」

このようなことを心のどこかで思っている方は意外に多くいるのではないでしょうか?

今までは正直言ってこれでよかったかもしれませんが、これからはそうはいきません。今までみたいに採用だけに注力して、その後の育成面が何も変わらなければ状況は変わりません。

それでは今回の記事のポイントは以下の通りです。

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・経験者の人材採用が難しくなってきているため未経験者を採用する
・建設現場の同時集合及び早出という商習慣が原因で未経験者が辞める
・スキル習得が属人的でアナログな現場経験以外の方法がない
・元請けからの信頼を継続するためにも社内育成制度が重要になる
・社内教育制度作成を新人と一緒に取り組むことで属人的なスキル習得からおさらばする
・業界未経験者定着のポイントは新人が次の新人のメンター役となること


今回の記事では、新人の離職率が高い理由と、離職率を下げる2つの秘訣についてお伝えします。

|経験者の人材採用が難しくなってきているため未経験者を採用する

私もそうでしたが、これまでの採用は建設業を少しでも経験したことがある人を中心に行っていたと思います。
弊社の場合ですが、経験者のみを対象とした広告文を3ヶ月間掲載して応募がきた人数はなんと、、、、、0です。はい求人会社に数十万円をただであげたのと同じです。
しかし、その会社が悪いのではありません。建設業界の有効求人倍率が他業界に比べて高いため、どの会社も人材を手放さないために試行錯誤しております。だから、求職者もよほどのことがない限り転職をする理由がありません。
そのような状況を一切考えないで、今まで通りの採用方法をしているだけでは、大事な時間とお金が無駄になりますし、採用自体に労力をかけなくなる可能性すらあります。業界内だけを見渡せば人材は不足しているかもしれませんが、コロナの影響を直撃している製造業や飲食業には職を探している層が一定数いることを忘れてはいけません。そして、その層に対して訴求するには今まで通りの採用掲載文ではこないと思うので、未経験者の人に対してもわかりやすい採用条件を懇切丁寧に書き換える必要があります。

|建設現場の同時集合及び早出という商習慣が原因で未経験者が辞める

しかし、ここで問題となるのが未経験の新人を採用した後のことです。期待と不安に胸を膨らませて他業界からきた未経験者がまず初めに度肝を抜かれるのが会社の置き場に早朝集合して1台の車に乗って現場に向かって、渋滞を避けるために6時頃に出発して7時前には現場に到着します。朝礼が始まる8時までは各々が朝飯を食べたりスポーツ新聞を読んだり、モンストをやったりします。昨日飲み過ぎた時は朝寝をしたりもします。そんな中、新人は周りに合わせるように休憩所の端に座ってとりあえずスマホを眺めて、
心の中では、
「なんでこんなに早く来る必要があるの??」
「まだ1時間以上もあるよ」
「もっと寝てられるのに」
などが頭の中をぐるぐる回って、タバコを吸わない新人なら休憩所の中の煙たい空気も耐えかねるかもしれない。その気持ちを言葉に出すのではなく、スマホ上でつぶやきます。
”超眠いから1日作業に耐えられるかわからない” 
”この生活がずっと続くと思うとお先真っ暗” 
”布団が恋しい”
中小建設業者にはなんてことない日常かもしれませんが、新人にとっては未知の習慣であることを理解しましょう。

|スキル習得が属人的でアナログな現場経験以外の方法がない

新人がなんとか習慣に馴染んだとしても、さらに問題になるのが現場作業のスキルを習得する方法です。ほとんど属人的でアナログ以外の方法がないので新人にとってはこれまたお先真っ暗状態になってしまいます。現役で活躍しているベテランの職人さんのほとんどは親方の背中を見ながら育ったと思います。

「俺の背中を見て覚えろ」
「黙って見ていろ」
「見て盗め」
「一人前になるには10年かかるぞ」

このようなことをずっと言われながら、我慢して自分なりに親方の技術や技を盗んで習得した人がほとんどなので、誰かに教えられた経験がないため、誰かに教えることにも慣れていないと思います。長年の現場経験で蓄積した技術なので、それを誰かに教えようとなると、途端にどう教えて良いかわからなくなります。だから、できない新人を見たときに教えるでもなく勝手に覚えれば良いのにと心の中で思っているかもしれません。そして、新人は新人で何も教えてくれなければわかるわけないと思っていることでしょう。忙しい現場作業の中でずっと平行線のままだといつの間にか教える教わるという関係がなし崩し的になります。新人目線でいうならば、忙しい先輩の仕事ぶりを見ていると遠慮して聞くこともできないのです。聞いてこない新人を横目にベテランは聞いてくるまで待てば良いかを思っているかもしれません。

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|元請けからの信頼を継続するためにも社内育成制度が重要になる

私も含めて中小建設業者が苦手なのが、育成領域です。我々建設業者重機や施設などのハード面の投資が得意な方は多いと思いますが、その反面ソフト面に関する知識や経験が少ないのも事実です。ハードは目に見えるけどソフトは見えないからやりたくない、というのが心情かもしれませんが、これからは採用と育成は切っても切れない関係であることを理解しましょう。例えるなら我々下請けと元請けの関係に似ているかもしれません。元請けあっての下請け、下請けあっての元請けと同じですし、採用すれば育成もしますし、育成をするからまた採用をします。その繰り返しで次世代の人材が育つことになります。次世代が育つことで現役世代も活性化する。次世代がいない組織は現役の怠慢につながるので、何とかしても次世代を育てることで継続的な施工ができるので、それが元請けからの信頼の蓄積と継続になります。先ほど言ったように、ソフト面は見えにくいかもしれませんが、人材が辞めない、人材が育っている、組織が活性化している、ということでソフト面の成果を捉えると、ハード面の重機を購入することで新たな現場が施工できると同じ効用があると思えばソフトをハードと同じように注力できると思っております。

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|未経験者定着率向上の秘訣は、新人をまじえて社内育成制度の作成することとと指導役(メンター)役の配置である

なぜ今までこれらが問題になっていなかったかというと、建設業者就業人口が多いので業界内で一定数の転職希望者が常にいたので率先して未経験者を採用する会社があまり多くありませんでしたが、団塊の世代の現役の引退やコロナ禍での転職の先送りなどの理由で経験者の転職が年々減少してきているのも事実です。それを踏まえて業界の外と内を繋げるためにも育成制度が必要になります。

(1)社内教育制度作成を新人と一緒に取り組むことで属人的なスキル習得からおさらばするために現場作業のプロセスを全て言語化する(以下は解体現場の具体例)

ではその育成制度をどのように作成すれば良いかというと、下記の手順で行っていきます。

*作業開始前に朝礼を行って指定の安全日誌に作業内容と安全注意事項の記入
*着工初日に残地と撤去の目印テープの確認ができている
*発生材搬出のための経路を立地(車両待機場所)や建物(余裕敷地の有無)や外構(庭や車庫)から判断する

まずは当たり前の日常作業の流れを作業開始前から終了までを具体的に言語化します。この時に大事なことが網羅的に全て書き出します。書き出した後に取捨選択することで、新人にとって役に立つものになります。この時に網羅的でないと作業と作業の間に抜け落ちる項目があるとそれが新人にとって習得できない作業になってしまいます。何度もお伝えします。ポイントは網羅的です。では次の作業工程に移ります。

(2)言語化したプロセスに新人の視点と意見を取り入れる

ここからは新人の視点と意見がとても大事になります。

*作業開始前に朝礼を行って指定の安全日誌に作業内容と安全注意事項の記入
*着工初日に残地と撤去の目印テープの確認ができている
*発生材搬出のための経路を立地(車両待機場所)や建物(余裕敷地の有無)や外構(庭や車庫)から判断する

こちらの項目を新人に確認してどの言葉がわからないか聞きましょう。

新人「指定の安全日誌?作業内容?安全注意事項ですかね??」
ベテラン「なるほど、その3つですね。ではひとつずつ説明しますね」
新人「お願いします」
ベテラン「指定の安全日誌とは発注者である元請け毎に指定されている用紙です。作業内容とは、解体工事で言えば仮設工事、内装撤去工事、上家解体、基礎解体、外構撤去という項目があってその項目を例えば内装撤去工事なら、天井撤去、壁撤去、床撤去、発生材集積及び積込みという詳細作業に別れます。内装撤去工事の安全注意事項は電動工具の適正使用や保護具の着用などです。」
新人「ありがとうございます」
ベテラン「では次の作業内容に移ります」

新人が疑問に思うことをひとつずつ丁寧に分解と説明を繰り返すことで一連の現場作業が網羅させると思いますので、何よりも大事なことは新人と一緒に取り組むことでしょう。

(3)業界未経験者定着のポイントは新人が次の新人のメンター役となること

育成のための準備ができたとしたら、次の工程は運用になります。この段階でキモとなるのがやはり新人になります。なぜかというと、中小建設業者で10年以上働いているベテランになると自分が新人の時の気持ちを思い出すことはできません。
そのベテランに新人が、

「〇〇さん、この作業ってどうやるのですか?」
「〇〇さん、この荷物ってどこに持っていくのですか?」
「この重機の名前を教えてください」

などを聞いてもベテランは心の中で、

「そんなこともわからないのかよ」

と思っていると、それが表情や態度に出て新人が恐縮する原因になります。そうなると、聞きたいことも聞けずにいると、それが不安の増大に繋がって離職につながることになります。そのようなことを防ぐためにも少し先に入社した新人が入社してくる新人のメンター役を任せるのです。メンター役の新人も社内での役割を与えられることで責任感が出ますし、メンターがいることで新人も何でも質問できるため不安がすぐに解消できます。

メンター役「〇〇さん、現場作業に慣れてきましたか?」
新人「いや〜埃と騒音にまだ慣れません」
メンター役「そうですよね、私も初日で辞めようと思いましたから」
メンター役「ベテランの〇〇さんも昔はよく現場をサボっていたらしいですよ」
新人「えっ??そうなんですか」
新人「最初はみんな同じ何ですね」
メンター役「頑張っていきましょう」

このような会話ができれば離職率も下がるはずです。

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|まとめ

・経験者の人材採用が難しくなってきているため未経験者を採用する
・建設現場の同時集合及び早出という商習慣が原因で未経験者が辞める
・スキル習得が属人的でアナログな現場経験以外の方法がない
・元請けからの信頼を継続するためにも社内育成制度が重要になる
・社内教育制度作成を新人と一緒に取り組むことで属人的なスキル習得からおさらばする
・業界未経験者定着のポイントは新人が次の新人のメンター役となること

最後にまとめとなりますが、これからの建設業はますます経験者の採用が難しくなるから、未経験者の採用が増えることになります。しかし、未経験者を採用しても、商習慣やスキルの習得の問題で早期に退職してしまう現状があるので社内育成制度の作成がとてもとても重要になってきます。ハード面の投資が得意な皆様ということは重々わかっておりますが、ソフト面の投資もハードと同様に重要と思っていただければそれが小さな一歩になることでしょう。そして、運用を継続できる育成制度を構築する秘訣は新人と一緒になって業務を交通整理してわかりやすいマニュアルや教育制度を作成すること、またその制度に未経験者が気軽に相談できるためにも少し先に経験を積んでいる先輩がメンターとなることがこれまた秘訣となります。

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