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SNSに対する執念【技能実習生との日々⑩】


奈良へ行く約束をする

秋のある日、実習生の寮でベトナム料理を食べていた時のこと。

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このフォーが美味しかった。私の好物の揚げ豆腐も用意してくれていた。美味い美味いと褒めちぎっていると・・・。

「キクさん、紅葉が見たいです。京都まで連れて行って下さい」と甘えられた。

「無理、秋の京都の混雑っぷり知らねぇだろ、絶対に嫌だ」と即答。そんなに俺は安くないぞと思わせたものの、私も秋の古都は好きだ。京都の方が近いが、奈良であれば京都ほど混雑もしていないだろう。

それに奈良には鹿がいる。鹿せんべいを持つ実習生が、鹿に追い回されるのも良い思い出になるだろうと私は思った。ちょっと甘やかしすぎかとも思ったが11月の休日、奈良へ連れて行った。

写真撮影タイム開始

奈良に着き興福寺の近くに車を止め歩き出すも歩みの遅いこと遅いこと。紅葉の最盛期で綺麗なこともあるが、写真撮影大会が始まってしまうのだ。

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赤く紅葉した木の下で何枚もポーズを変えアングルを変え写真撮影×人数分。黄色く紅葉した木の下で何枚も・・・(略)。池を見つけると何枚も・・・(略)。

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国宝興福寺の五重塔はチラ見するだけ、奥の藤棚(のような所)で撮影大会×人数分。写真の手前の右側に写っている切り株に座り・・・(略)

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あまりの歩みの遅さ、写真を撮ることがメインであるので私は立ち待ちに疲れ果ててしまっていた。何とか奈良公園(鹿のいる所)に辿り着いて私は茶屋で休むことができたが、【紅葉+鹿=映える写真を撮ることができる】となり実習生の彼女たちは大満足の様子だった。

お前ら何しに来たんだ?

やっとのことで東大寺に着いた頃、

「キクさん、足が痛い、いつ帰る?」と聞いてきた。

「え、大仏見ないの?有名だよ?」と聞いても、足が痛いから歩けないとのことらしい。

つまり、【秋の紅葉で映える写真を撮るため】張り切ってヒールの高い靴を履いてきたようだ。

東大寺南大門を過ぎ、あと少しで日本の歴史に必ず出てくる大仏様だが、それは日本人の感覚でのこと。美しい紅葉の方が彼女たちにとっては【日本文化】なのだ。日本史好きの私にとっては残念ながら大仏殿手前でUターンして帰宅となった。

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帰宅後、FaceBookに次々にアップされるその日の写真はさすがともいうべきものが多かった。凝ったアングルで撮られていたり、落ち葉をさらさらと手から落とす様子をスローで撮っていたり、アイデア満載の写真ばかりであった。

でも

これなら近所の東山植物園でもよかったんじゃないのか?

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