誕生日パーティーをしてもらう【技能実習生との日々⑫】(最終回)
今度ね、火曜日の夜ね
「キクさん、今度ね。火曜日の夜ね、7時に来てね」
ある火曜日の夜、私は実習生の寮で大いに酔っ払っていた。この夜は実習生が私の誕生日パーティーを開いてくれていた。火曜日の夜というのは翌水曜日が工場の定休日だから。
この当日の何日も前から何度も何度も、何人もの実習生が入れ替わり私に伝えに来ていた。
「今度ね、火曜日ね、パーティーね!」
私のために本当に嬉しいことだ。そして実習生の皆も誰でもいいからパーティーがしたいのだろう。私だってそうだ。誰かの誕生日パーティーでワイワイと美味しいベトナム料理を食べ、美味しいビールが飲みたい。
火曜日の夜
当日の夜、さすがに金額が張るのでビールやチューハイやジュースの飲み物は私が買って行った。
この時は鍋料理だった。ベトナムスタイルでテーブルではなく床に次々と皿を並べていく。車座になって食べるのだ。
豚の耳と(調理も床だ)
マンゴーをスライスして
和えてサラダを作る。これ、私の大好物ということをよく覚えていてくれた。
鍋の具材は、豚・キノコ(エノキ)・骨付き鶏・海老。それぞれに胡椒やフライドガーリック、ネギで下味がつけてある。
実習生が準備する間、私といえばネムチュアと揚げ春巻きで杯が進んでいく、ビールが止まらない。
パーティーの始まりです!
皆で鍋の周りにぐるりと座りパーティーの始まり。
何とケーキまで買ってきてくれていた。
いつもと同じで私がベトナム料理を食べる時に感じること。それは食材の味が濃く、しっかりとしているのだ。日本のインスタント食品のように味付け調味料で料理をするのではなく、素材そのものを塩胡椒とチリソースで食べていく。それが本当に美味しい。
実のところ
この日は私の誕生日パーティーではあったが、大いに食べ「モッ・ハイ・バー・ヨー!(1・2・3で乾杯!)」を全員でしつこい程に何度も繰り返していた。そのうちに私はもちろん皆も誰の誕生日なのか誰が主役なのか関係なくなっていた。
でもそうなってからが楽しかった。話す言葉こそ日本語だが、同じものを食べて私も完全に実習生の中に溶け込んでいた。その感覚が実のところ本当に楽しくて心地良いものだった。
お土産
仕事が終わってからのパーティー、夜も遅くなる前に長居もせず帰宅。その代わりお土産をどっさりともらった。
豚の耳とマンゴーのサラダ(ナッツとナンプラーのドレッシング和え)と、
揚げ豆腐とネムチュアで翌日に二次会だ。
本当にみんな、ありがとう!Cảm ơn! 生活指導員という立場ながら、技能実習生に関わる仕事ができて本当に良かった。
余談だが
私が盛大に酔っ払い、ベトナム料理に美味い美味いを大連発していると…。
「ねぇキクさん、私たちは富士山に行きたいです。綺麗な花と富士山のところ。車のお金を出しますから連れていって下さい」と甘えてきた。
そう来たか。よくよく話を聞くと、富士芝桜まつりに行きたいらしい。そりゃ綺麗だろう映えるだろう。奈良に連れて行った時の比じゃないくらいに映えるだろう。そして写真撮影タイムの間、私は更にどれだけ待たされるのであろうか。
私の自家用車はセダンなので、ミニバンを借りるレンタカー代・ガソリン代・高速通行料をざっと計算して人数割りをすると結構な金額になった。実習生も予想以上の金額負担になるようだ。さぁどうなるだろう。
最終回なので
この【技能実習生との日々シリーズ】を読んでもらいありがとうございました。私がこのテーマを書き始めたきっかけは、世間では技能実習生制度の闇の部分ばかりがクローズアップされていたからです。私の勤務先のように実習生の労働力に助けられ、良好な関係を築き、従業員同士でワイワイとやっている企業も間違いなく存在しています。
私の友人の企業は更に福利厚生を厚くしており、実習生に日本の冬を体験させようと半額企業負担、半額引率の日本人負担で毎年スキーに連れて行って楽しんでいます。
実習生が日本で幸せになるか不幸になるかは、実習生の配属先企業が法令順守を徹底させる管理団体に属し、厳しい定期監査を受けていること、そして配属された企業の社風によるところも大きいと私は思っています。
最後に
私はこのテーマを通じて知り合った方々の記事も読むことになりました。そこで感じたことは、私は実習期間だけでなく修了後(帰国後)の先のことも含めて考える必要があること、実習生の将来を考えて過ごす(教えていく)必要があることでした。
私は【日本のお父さん】を自負する以上、それは当たり前に考えなければいけないと思うようになりました、ありがとうございました。