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角由紀子の「ビゲローコンテストチャレンジ」その1

アメリカの大富豪ロバート・ビゲローが主催する死後の世界についての論文コンテスト、2021年8月に締切られ11月1日に結果発表がありました。私、角由紀子は経営戦略コンサルタントで地下クイズ王の鈴木貴博さんと組んで、死後の世界の存在証明にチャレンジしました。

臨死体験のある私と、前世の記憶を持つ鈴木さんはどちらも、個人的な体験から霊魂は存在していると確信しています。不思議サイトの編集長の立場でも臨死体験の情報をたくさん扱ってきたのですが、そこにはこれまであえて触ってこなかった大きな疑問が。

「霊魂って何?死後の世界ってどこにあるの?」

それは私たちの頭の中ではなく、リアルに存在する世界だということの証明にチャレンジしました。結果は残念ながら入賞できませんでしたが、今回、かなり死後の世界の真実に近づけたと思っています。エンタメとはテイストの違う、ガチの霊界に関する論文をお楽しみください。

論文は本文が全部で5つの章から構成されています。ここからが論文の序章および第一章になります。

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最新物理学理論をもとにした霊魂とその存在する場所についての考察とそれを実証する宇宙実験について

角由紀子、鈴木貴博

序論

 先に結論を述べる。最新の物理学の超ひも理論から導かれる帰結として、霊魂は地球の重力に囚われていて宇宙空間には存在していない。生命が誕生できるのはせいぜい国際宇宙ステーションのような地球近傍の宇宙空間までに限定される。そうではない場所、つまり地球からはるか遠く離れた何もない宇宙空間では生命が誕生することはない。このことを本エッセイの前半で理論的に示したうえで、後半でそれを証明する実証可能な宇宙実験を提案する。議論としてはリバースエンジニアリング的に「心霊現象ではこのようなことが起きている。だとすればわれわれが生きているこの世界はこのような形なのではないか?」という結論を現代物理学から導き出していく。

 ではなぜそのような結論に至ったか。著者のひとりは臨死体験をしている。そしてもうひとりは少年時代に前世の記憶を持っていた。それらの体験を通じてふたりとも死後の世界が存在することを確信している。
 臨死体験で自分が死んだときには本当に空中から死んでいる自分の姿を見ることができるのだとわかった。そのあと、この世界ではないところへ移り、遠い先にまばゆい光が見えた。
 前世の記憶の方は、まだ子供のころ、夜、熱が出てうなされるたびに夢で同じ光景を見た。楽しそうな夕暮れ時の記憶が突然暗転して、自分はそこで死ぬ。嫌な夢で見るのがいつも苦痛だった。しかし幸いにして7歳になったころにはその夢を見ることはもうなくなった。
 臨死体験にしても前世の記憶にしても、同じ経験をしている人がこの世界に何万人もいることが後からわかった。体験はよく似ていた。自分の頭の中だけの作り話ではないことは間違いない。
 当事者がいくらそう確信していても、世の中ではそのような体験をしたことがない人の方が多数派だ。だから分別ある多数派の人々からは、わたしたちの心霊体験についての主張は無視されてきた。これは死後の世界を直接体験した人々の共通の人生経験だろう。
 だからわれわれふたりはいわゆる主流派の科学者たちが死後の世界について無視することができないようにする方法ばかり考えてきた。ガリレオがピサの斜塔からふたつの球を落とした実験のように、学者がその結果を無視できないような実験ができないか?コペルニクスの主張のように論理的な思考をする科学者がそれを受け入れざるをえないような証明ができないか?ここ数年間、そんな話を会うたびにいつも議論してきた。
 このエッセイの最大の主張は、そのような実験方法を提案することにある。結果が出れば主流派の科学者たちが霊の存在を認めざるをえないような実験方法がある。ただその実験の問題点は金がかかることだ。だからNASAのような巨額予算を持つ機関がその実験をやってみようと思わない限り、それは誰も試すことができない。
 そしてその実験の成功確率は例えて言えばコロンブスが“大西洋を進めばインドに到達できる”と提案したときの成功確率と同じくらいのリスクがあるとわたしたちは思う。
 もしコロンブスのように勇気のある冒険者が存在し、スペインのイザベル女王のようにそれを後押しするスポンサーが存在すれば、この実験は近い将来実現するかもしれない。それがこのエッセイで主張したい最大のポイントである。
 このエッセイでは科学的に解明できる死後の世界の存在について段階的に論じることになる。前半の1章から3章のパートでは最新の物理学理論が示唆する“死後の世界がある場所”とその物理的特徴について語る。そのうえで4章ではその存在を探知するまったく新しい実験方法について提案する。最後の5章では、その先にある研究テーマについてロードマップとなる仮説を示したい。


1 霊魂とそれが存在する場所、または超ひも理論とダークマター

 筆者のひとりは40年前に大学で物理学を学んでいた。その当時、当然のように浮かんでいた疑問がある。「死後の世界なんていったいどこに存在するんだ?」「そんな世界があれば誰かの手で観測されているはずじゃないか」という疑問だ。多くの科学者が死後の世界を信じていない最大の理由はこの点にある。
 わたしが大学で学んだ当時の理論物理学には霊界の存在する余地は皆無だった。しかし2021年現在の理論物理学ではわれわれの世界のすぐ近くに別次元の世界が存在している可能性を多数派の物理学者が信じている。
 それが21世紀の現代物理学でもっとも注目を集めている超ひも理論だ。
 先にこの章のポイントを紹介しておく。超ひも理論が予言することはこの世界はわれわれの知っている3次元世界だけでなくその外にわれわれからは見えない余剰次元が存在するということだ。そして最新の宇宙論によればこの宇宙には質量はあるがわれわれには見えないダークマターが存在している。
 未知の空間と未知の物質が存在している。そこを探る必要がある。この章はそのことを理解するための導入部である。
 超ひも理論で提唱される余剰次元に死後の魂の世界があると仮定すれば、それがなぜ観測できないのかについても理論を通じて説明できる。そこでまずは超ひも理論の概要を、このエッセイの大半の読者である心霊研究家に理解しやすい形で話そう。
 原子は陽子と中性子と電子でできている。その陽子や中性子はクォークからできている。そしてクォークや光子などこの世界のすべての粒子はこの世界の最小の大きさの一本のひもからできている。10^(-33)cmというプランクスケールの長さのひもが万物の根源だというのが超ひも理論である。

図表1-1_ページ_1

 この小さなひもの振動の違いで、ひもはクォークになったり電子になったり光子になったりと、同じひもなのに違う粒子になる。これが超ひも理論の要旨である。
 物理学界隈で超ひも理論が優位な点は、高度な数学式を通じてその理論が研究者を魅了していることだ。ひもが存在するかどうかは人類の科学力では検知できないが、その数式は美しい。そして理論が予測するさまざまな現象や物質が、その後実際に発見されている。だから科学者は超ひも理論が正しいと考えている。
 超ひも理論登場以前にはわれわれの観測可能な宇宙の中に霊界が存在しうる場所などなかった。
 かつて自分が死んだ時に、ベッドに横たわる自分の死体を空中から眺めた後、突然暗いトンネルを通り、開けた花畑のような場所に到達し、美しい光に包まれた。あの場所はどこなのか?
 今の自分に転生する前にドームのような場所に集められ、そこから自分の新しい母親と父親の生活を眺めていたときの自分はどこにいたのか?
 前世の記憶を持つ少年の中には 1万マイルも離れた場所に住むまったく違った家族の一員として40年後に転生した者がいる。その記憶を引き継いだ物質がDNAではありえないとしたらその物質とは何なのか?
 21世紀の物理学者にはその場所と物質の可能性が思いつく。1995年の第二次超ひも理論革命で登場した通称M理論から導かれるブレーンワールド仮説がそれだ。最新の物理学理論はこのわれわれが住む世界のすぐ近くに、広大な余剰次元空間が存在することを示唆している。
 さらに現代物理学は、その余剰次元世界に存在するであろう霊魂がどのような物質なのかについても手がかりを持っている。
 宇宙はわれわれの知っている通常の物質(その質量比は宇宙全体の質量の5%)以外にダークマター(同、27%)とダークエネルギー(同、68%)で構成されている。つまりわれわれの世界の95%は未知の物質とエネルギーが構成している。3このことは2021年時点で多くの科学者のコンセンサスでもある。
 そして「そのダークマターは何なのか?」「ダークマターはどこに存在しているのか?」という疑問の解決に通じると信じられているのも超ひも理論である。
 クォークや光子など世界の根本的な粒子が一次元のひもからできているとする「超ひも理論」は、1984年、1995年の二度に亘る革命的な理論発展を経て、21世紀に研究が進んだ。2010年代には新たに建設された高エネルギー加速器によってこれまで検証ができなかった素粒子の検出も可能になった。物理学者の究極の目標である素粒子物理学と一般相対論の統合はもう目前まで来ている。
 われわれの世界を構成する原子はさらに電子と原子核に分かれ、原子核を構成する陽子や中性子はさらにクォークに分かれる。素粒子物理学ではこの世界を構成する標準モデルの素粒子は、クォーク、電子、ニュートリノなどの素粒子、そして力を伝える光子などのゲージボソンだとされている。

図表1-1_ページ_2

 図は現在の素粒子物理学で標準モデルとされる、この世界の根源の(つまりそれ以上分割できない)素粒子の一覧だ。超ひも理論ではこれらすべての粒子は同じ一本のひもから生まれていると考えている。
 ここからが超ひも理論の奇妙な性質の話になる。超ひも理論によればこの世界はわれわれが感知しているような3次元空間(時間を加えれば4次元時空)ではなく10次元時空でないといけない(厳密には11次元時空なのだがここでは超ひも理論の初級教科書に書かれているように10次元時空で説明を統一する)。
 ではなぜわれわれは10次元時空を3方向しかない3次元世界だと認識しているのか?
 初期の超ひも理論では縦、横、高さと時間以外の6つの空間次元は原子よりもはるかに小さいプランク長に巻き上げられているから認識できないと考えた。次元が小さすぎてそちらの方向には粒子は進むことができないという理屈だ。
 ところが最近では多くの物理学者はどうやらそれらの次元が意外と大きいかもしれないと考えるようになった。そのきっかけは素粒子物理学上の未解決の大きな難問である階層性問題である。
 階層性問題についてはここでは説明しない。とにかくこの問題を解決できない物理理論は何らかの欠陥を持った理論だと認識してもらえればそれでよい。
 2010年までには超ひも理論を通じてこの階層性問題が解決される条件は①超対称性粒子と呼ばれる予測上の未知の素粒子が存在するか、②ブレーンワールドと呼ばれる余剰次元空間が存在するかのどちらかないしはその両方だというところまでわかってきた。
 それを解明する切り札として、期待されていたのが2010年代に稼働したCERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)である。
 LHCの稼働によって、これまで人類が調べることができなかったウィークスケール(250GeVから1TVのエネルギーレベル)という高エネルギー領域において、未知の新粒子がつぎつぎと発見されることが期待されていた。そして超対称粒子はこのような高エネルギーレベルの粒子である可能性が高いと考えられたことから、LHC稼働後は超対称粒子が発見されるだろうと多くの超ひも理論研究者は期待した。
 理論的に予言されていた新粒子のうち、2011年から2013年にかけての実験を通じてヒッグス粒子の存在が確認されたことは、素粒子物理学史上の重要な成果だった。ヒッグス機構が実在することが確認できたことで、超ひも理論はまたひとつ、実証され前に進むことができた。
 しかし大半の超ひも理論研究者たちの期待に反して超対称性粒子はこれまでひとつも発見されなかったとCERNは発表している。
 それが意味することは、この世界はブレーンワールドである可能性が高いということだ。
 1995年の第二次超ひも理論革命で登場したM理論から生まれたブレーンワールド仮説では、余剰次元は小さく巻き上がっているのではない。そうではなくわれわれの住む世界は3次元のブレーン(膜)に覆われているというのだ。
 われわれの住むこの宇宙は実は10次元時空なのだが、われわれの世界を構成する粒子は3次元のブレーンに囚われてそれ以外の方向には進むことができない。これがブレーンワールド理論の考え方だ。
 われわれは3次元の世界に閉じ込められているが、ブレーンワールドモデルによればそのその外に余剰次元の世界が広がっている。そして後述するようにその空間はとても広い。われわれの世界が何もない世界ではない以上、余剰次元空間もおそらく何もない真空ではない。おそらくわれわれの知らない性質を持った粒子群がそこに存在している。
 一方で図1-1の一覧表に記されているわれわれの知っている粒子は理論的にはひとつの例外を除いてすべてブレーンに捉えられる。超ひも理論的ではブレーンの外に出られる既知の素粒子は重力を伝える重力子だけだ。したがって、余剰次元に存在する粒子は必然的に重力子以外はわれわれにとって未知の粒子ということになる。
 そしてそれら未知の物質はダークマターの有力候補のひとつでもある。
「わかってきた。結論は簡単だ。死後の世界は存在する。死後の世界は余剰次元にあって、霊魂はダークマターなんだ」
とこの段階で断言してもいい。確かに結論だけ知りたければ読者はこの後の章を飛ばして第4章に飛んでもこの小論文が主張する全体像は理解できる。  ただし実は状況はそんなに簡単ではない。死後の世界がどこにあるのかについての議論はここからさらに複雑でかつ、知的好奇心をゆさぶるものになる。
 地球が丸いと信じたコロンブスはインドを目指し大西洋を西に向かった。陸地を見つけたコロンブスに現代の学者たちは言うだろう。
「インドはどこにあるんだ?」
と。
 つまり超ひも理論の物理学者たちに死後の世界が存在することを本当の意味で納得させるためには、それを実証する実験に加えて、さらに精緻な議論が不可欠である。この話はまだまだ先に続くのだ。



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