ヤーレンズって超おもろい。(M-1感想)

M-1グランプリ2023。
クリスマスイブに開催、史上最多8540組がエントリー、おまけに敗者復活戦のシステム改定という、出場者の情報を抜きにしても、何かと話題の多い大会であったことは間違いない。

そんな大会を制し、第19代王者となったのが令和ロマン。

今まで名前は聞いたことがあったが、しっかりネタを見たことはなかった。
今まであんなにヤーレンズとツーマンライブやってたのに!なんで見ようとしなかったの! 
そんな言葉を投げつけながら、過去の私をポカスカ殴りたい気持ちに昨晩からずっと駆られている。

なぜここでヤーレンズの名前が出てくるのかというと、私はヤーレンズのオタクを自負しているからだ。
とはいえ、本当は知識も年月もオタクのレベルには達していないのかもしれない。
昨年敗者復活戦の「ラーメン屋」のネタに魅せられ、うわごとのように「”麺ジャミンバトン スープなラーメン”は天才なんだって!!」と言い続けていたわりには、ライブに足を運んだこともなく、ただYouTubeで過去のネタをこするばかりの1年を過ごした。
今やネットで話題の(?)「法的措置!!」の意味も最近知ったばかりだし、行動だけを見れば、浅くゆるくのいわば“にわか勢”である。

それでも、私はヤーレンズのネタが大好きだ。
小気味よく連続的に訪れる笑い、ボケの多さに裏付けされた広く・深くの圧倒的な知識量、頭の回転の速さが垣間見える無駄のないネタ構成。そこに楢原さんの強烈キャラと出井さんの柔らかくも刺して仕留めるような的確なツッコミ(時々ボケツッコミ)がさらさらと流れていく。
抜かりなくて、温かくて、中身がぎゅっと詰まってて。
「あんまり好きじゃないな」というネタが1つもないコンビは、正直、ヤーレンズが初めてだった。

だからこそ、ヤーレンズもっともっと売れろ!って思ってるし、2024年こそ2人の人生変わってくれ!って思ってる。

前置きが長くなったが、どうしても消えないこの気持ちを、愛をこめて、M-1グランプリお疲れ様の感想文としてしたためたいと思う。


1st ROUND 「引っ越し」


ヤーレンズの賞レースネタは、「こういうことやってみたいんだよね」とテーマ提示する出井さんに対し、楢原さんが「でもこういうことがあるかもよ?」みたいな心配事を投げかける形で始まる(例外もあるかもしれないが、私が知っているものは須らくこの流れなので、あえて断定的な言い方にさせてもらう)。
その心配事に「大丈夫でしょ」と出井さんが返答すると、そこがネタ開始の合図となる。
何度か見たこの流れを決勝舞台の「M」を前にして行う2人を見た時には、さすがに鳥肌が立った。

今回のテーマは「引っ越し」。
出井さんが引っ越してきて、楢原さん演じる強烈大家さんに挨拶に行くという設定だ。
手で電話のポーズを作って受電したあと「なんだ、私の右手かあ」って言いながら電話を切る。その瞬間ドッと沸いた会場。強烈キャラの楢原さん来た…ってそれだけでもうワクワクが止まらなかった。
そこからはちらし寿司を出前でとろうとしたり、ドアを開けてから鍵穴を覗いたり、細かなボケが続く。2人のボケとツッコミの応酬が心地よく、ずっとどこかから笑い声が聞こえる時間が続いた。かくいう私ももちろんずっと笑っていて、腹を抱えて、にやにやしながらそのさまを見ていた。

ヤーレンズだ、最高にヤーレンズすぎると思った。

ボケ数が多すぎて全部に対して言及していたらきりがないため、ここからは、特に好きだった部分だけを箇条書きで抜粋する形にしたい。

・“出井”って漢字でどう書くの?
「出入口の出に…」
「あ、電話の電か」
「それだとデデーーン…僕ネットフリックスじゃないんで」
→出井さんがデデーーンを繰り返す度に笑いが大きくなる。そして、増幅した笑いを「ネットフリックスじゃないんで」というツッコミで回収していくのが気持ちよかった。

・大家さん、“おんな のこ”っていうらしい
「あっひどい!おばさんのくせに女の子って言うの?みたいな!んんっ!しゃがんで立つ!」
「おお、どうしました?」
→シンプルだけどなんかすごく面白かった。マヂラブのつり革のネタみたいな、確実なおもろさのある動きにシンプルなツッコミが入るタイプの笑い。この笑い、とても好き。

・“おんな のこ”さんって漢字でどう書くの?
(おんな、は恩人の恩に奈良県の奈、らしい)
「おんな のこなんでしょ?のこはどういう字なんですか?」
「残り物の残」
「ざん?!ざん1文字でのこ?!!」
→恩奈残。どれも馴染みの薄い漢字ではなく、すぐにフルネーム表記が連想できるのがよかった。苗字と名前を同じボケ内でまとめるのではなく、別パートのボケとして処理していたことも理解のしやすさに繋がっていたのかもしれない。

・中島みゆき、ファイトが短すぎ問題
子どもの頃から名前のせいで馬鹿にされてきたけど負けなかった残ちゃん。
中島みゆきの「ファイト」を歌い出すも、とにかくファイトが短い。
「戦わない奴らが笑うだろう~ファイッ」
そこから連想ゲーム的に始まる猪木ネタ。プロレス好き出た~と思いつつ、一方で若い子には伝わってないかもなとも思いつつ。
でも、ファイッが確実にはまっていたので、難なくクリアという感じがした。
連想ゲーム的に飛んでいく笑いはやっぱり勢いがあるよね。好きです。

・ステゴロ
「ゴスペラーズで誰が好き?」
「話すことないならいいよ」
「私はドラム」
「いねえよ、全員ステゴロ」
→ステゴロは「得物(武器)を持たずに素手で行う喧嘩・殴り合い」という意味だそうな。ゴスペラーズは殴り合わないけど、武器(楽器)を持たないという意味では合ってる。アーティストの持つ楽器を武器ととらえ、それを持たないアカペラ勢=ステゴロとするその感性こそ私がヤーレンズを好きな所以だなと思った。

総括としては、松本さんが講評で仰っていた「どれかのボケが必ず誰かに刺さる」というような表現がそのまましっくりくるネタだったなという感じ。
審査員の面々が一人たりとも被らず、それぞれ違うボケについて言及していたのが興味深かった。
手数の多さと対象とする人のレンジの広さ。
私が好きなヤーレンズの笑いは、そういう要素でできていたんだと初めて知った。
圧巻で感服の1st ROUND。
松本さんの点数がにやけてしまうくらい高かった1st ROUND。
多少のひいき目はあれど、「この人たちが最終決戦に行かずして誰が行く」私はこのネタでそんなことを感じた。


2nd ROUND(最終決戦) 「ラーメン屋」


シンプルに、昨年の敗者復活戦を思い出した。
初めてお目にかかったはずなのに、これだけの力があって、なんで準決勝敗退だったんだろうって悔しい気持ちになったあの時。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』と掛けた「麺ジャミン・バトン スープなラーメン」というワードを生み出し、ラーメン屋の成り立ちとネタ構成にまでその要素を散りばめる。
突ける穴なんてない、抜かりのないそのネタに、今度は決勝の、しかも最終決戦の舞台で出会うことができた、ただただそれが嬉しかった。

ネタに関しては、昨年よりも観る側にとって易しいものになっていたなという印象。
冒頭で明らかにヤバいラーメン屋な感じが出ていたり、元ネタのベンジャミン・バトンの説明が加えられていたり。ボケの効力を増すための細工がいくつも加えられているなと思った。

でも、説明がくどくなることもなく、冗長な感じが出るでもなく。
持ち時間全てが無駄なく使われていて、ネタ終了一発目に「え、もう終わっちゃったの?」って言ってしまうくらい、ずっと笑いっぱなしだった。
やっぱすげえな、ヤーレンズ。大好きだわ。
そう思うしかない最終決戦だった。


冒頭でも言ったように、今回の優勝は令和ロマン。
ヤーレンズはあと一歩のところで準優勝という形になった。
令和ロマンの漫才は奥行きがあって面白いなと思ったから、優勝という結果に何の文句もない。
なんなら、すごい人見っけちゃった、これからいろんな漫才見たいなって期待に胸を躍らせたりもしている。
でも、令和ロマンとヤーレンズの票差が1票という僅差だったという事実に対しては、とにかく悔しいという気持ちが拭い切れない。
全然本人じゃないのに、なぜだか自分事のように悔しい。たった1年彼らの漫才に触れただけなのに、ものすごく悔しい。
きっと、オタクってそういう生き物なのだ。
何年推してるかとか、どれだけ深く推しを愛でたかなんて関係なくて、自分がすごいと思った、自分が大好きだと思った人にはてっぺんを取ってほしいって思うものなのだ。

M-1グランプリ2023は間違いなく、ヤーレンズの人気が爆発するきっかけになるだろう。
それでもまた、もう一度、来年の大会でメラメラと静かな闘志を燃やすヤーレンズに会えることを楽しみにしたい。


P.S. 私のしょうもないエントリなんなより大好きなヤーレンズのネタを見てください!!
百聞は一見にしかず!!超おもろいぞ!!

【1st ROUND】

【2nd ROUND(最終決戦)】


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