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地域ものがたるアンバサダー7月レポート:越前海岸の木桶醤油

地域ものがたるアンバサダーとして2回めの福井訪問。今回は7月23日、24日と泊まりで越前海岸にお邪魔します。

1日目 ジオリブ公開講座、地元づくしのランチ
2日目 越前海岸巡り、岩尾醤油醸造さんへ

1日目、福井の食に驚愕のジオリブ講座@越前海岸

早朝のサンダーバードは運転手さんが琵琶湖の観光案内をしてくださり、素敵な移動時間となりました。

福井駅と言えばのフォトスポット笑

福井駅からは他のアンバサダーさんと一緒に車移動。40分ぐらいで海が見えてきました。めっちゃキレイ。そして、海岸がゴツゴツ。岩でいっぱい。アンバサダーになってから、少しでも地質について知ろうとはしているのですが、なにせ元の知識が少なく、岩としかわからない涙 これからがんばります涙

この辺りの六角形の岩は柱状節理というと知りました。
世界三大柱状節理の一つ、東尋坊までは車で20分!

初日は我らが美食地質学のマグマ学者巽先生と越前海岸盛り上げ隊の皆さんとのジオリブ講座。その前には地元の方々が作ってくださったランチをいただきました。びっくりするぐらい美味しい手作り料理たち。早起きして作ってくださった松平さん、お母さんたち、本当にありがとうございます!

アブラギリというツヤツヤの葉っぱで包んだ葉寿司。
なんと金時豆入り!
イカのへしこ、こごみの胡麻和え、お麩のからしあえ、など
お店ではなかなか食べられないメニュー!
福井名物、もみわかめ!磯の香りがたまりません
お酒の瓶に入れて保存するのがローカルの常識!
福井と言えばの厚揚げ。しいたけの出汁が染みた精進仕様。
美味しかった
大豆の製粉所、豆乳アイスクリーム屋ごーる堂を経営されている堂下さんお手製の呉汁。
大豆の粉を入れたお味噌汁やお吸い物に浮かぶ大豆の泡はふわふわでまるでカプチーノの味わい


食後はジオリブ講座。
巽先生とフードディレクター佐々木京美さんの対談は目からウロコの連続でした。精進料理の影響、黒ぼく土という地層に由来する大豆、そばの栽培、そして、多種多様なへしこカルチャー、、、
福井の食、奥が深すぎます。
地元の生産者さんのお話も、地に足がついていて郷土愛にあふれていました。



歴史をつなぐ、木桶醤油作り@岩尾醤油醸造所

翌日は越前海岸各地にお邪魔しました。
私たちがお邪魔したのは、明治7年からお醤油を作っている岩尾醤油醸造所さん。

笑顔の素敵な岩尾さん(左から2番目)と地域ものがたるアンバサダーたち
主にお一人で作業されています。

味噌と同じく、毎日なんとなく使っている醤油。でも、とっても奥が深いんです。岩尾さんが説明してくださるのですが、クイズあり、テイスティングありで、オー!へええ!ほおお!という声が止まらない私。

テイスティング中。
扇のような形のチガミに岩、チガミイワが屋号です

以下、アップデートできたお醤油知識です。
北陸の醤油はちょっと甘い
甘い醤油といえば九州だけかと思っていましたが、日本海側もお醤油は若干甘めが好まれるそうです。たしかにテイスティングのお醤油がほんのり甘い!昨晩の刺身醤油も、ん?となるくらい甘めでした!

甘め醤油となったはっきりした理由は不明ですが、お魚と合わせるときに少し甘めの方が美味しく感じるから、ということのようです。なるほど。

丸大豆で醤油を作ると1/3は油となってしまう
なんとなく丸大豆の方が美味しくなるのでは、と思っていたけれど、大豆にそんなにも油が含まれていたとは!もともとの醤油製造に丸大豆が使われていなかったのにはちゃんと理由があるんですね。思い込みは危険。

海水と醤油、醤油の方が塩分濃度が高い?
醤油と塩分は永遠のテーマ。血圧上がる!といつもセットとなってしまいがちなお醤油。たしかに海水の塩分濃度は約3%、醤油は15%程度と大きな差が。。。

海水よりも塩分が含まれるのに、しょっぱく感じにくい醤油。この味の感じ方の理由は、原材料に使われる穀類が塩味、塩化ナトリウムの味を感じにくくしてくれるからだそうです。たしかに、塩だけの海水と大豆や麦の旨味たっぷりのお醤油、違うのには納得です。

そして、このイメージから高血圧の原因として目の敵にされることが多い醤油の塩分。ただ、思っているよりも料理として完成したものに含まれている塩分は少ないのです。加工食品やお菓子の方が高い!
例えばラーメン一杯の塩分は約6g(成人女性におすすめされている1日の塩分量は7.5gなので、ほぼ1日分です)。

一方小さじ1(6g)の醤油に含まれる塩分は0.9g。炒めものなどの味付けに使う程度ならそこまで気にする必要はないことがわかります。これも、思い込み禁止の良い例ですね。

醤油の香りは縦横無尽!
作業場にもほんのり香る独特の香り。香ばしいような、懐かしいような木桶醤油の香りを調査したところ、なんと300種類以上の香りが抽出できたそうです。列挙すると
・パイナップル、イチゴ、バナナ、リンゴなどフルーツの香り
・バラ、ヒヤシンス、桃の花など花の香り
・松茸、バニラなど個性のある香り

天国みたいな香りのラインナップ!
甘い香りがベースで、うっとりするような松茸、スパイシーさもあるバニラなど、言われてみれば、といった香りもあってびっくりです。


ただ、あまりにも多様性がありすぎて、お醤油の香りや味についてはまだまだわからないことが多いそうです。身近だと思っていたお醤油、本当に奥が深いです。

火入れ日報。細かいデータがびっしり書きいれられていました。

材料を混ぜて発酵させれば完了する味噌と、発酵後に圧搾といって絞り、さらに絞り、さらに火入れもする醤油は全く似て非なるところがあることがよくわかりました。

味噌に比べると、小規模製造のメリットが少ない醤油。それでも岩尾さんが続けていらっしゃる理由の一つが次の部屋に、、、、

ドドン!
大迫力の木桶、押し寄せる暴力的な香りにうっとりです


ドアの向こうは木桶の部屋。見上げる大きさの木桶が並ぶ様子に他のアンバサダーからもおもわず歓声が上がっていました。広々とした部屋には大柄で知られる我らが巽先生の背丈ほどもある醤油の木桶が16桶並んでいます。

見るからに歴史を感じられる木桶
常在菌の働きで表面が徐々に変化していきます。
ちなみに、味噌の桶の表面は変化がありません。
違うタイプの微生物が働いていることがうかがえます。

立派な木の梁、土壁という、微生物に優しい環境で、その一部が白くなっているのは、発酵を促す微生物が住み着いているから。もろみ(絞る前の醤油)の香りが充満し、耳を澄ますともろみ発酵の際に発生する気泡が弾ける音も聞こえて来る特別空間。まさに五感が刺激される感覚を味わえました。
この蔵自体が醤油作りのために進化を続けていることがわかります。

作業がしやすいように、蔵の中は桶の口の高さに床が作られ、岩尾さんの作業場となっています。先代から伝わってきた木桶はなんと100歳越え。現在同じサイズの木桶を1から作ることは大変難しくなってしまいました。

重たい!すべる!いい匂い!

そして、今回特別に通常は体験不可な、もろみをかき混ぜる作業を体験させて頂けました。夏は発酵が盛んになるので、毎日のようにかき混ぜないといけないそうです。

2メートル以上ある木製の櫂を木桶に入れて全体をかき混ぜるのですが、これが、見た目よりも本当に大変。もろみはだいぶ粘度が高く、両腕に負荷を感じます。なにより、足元が大変滑りやすくなっているので、力が入りにくい、、、これは、本当に危ない。蔵はもちろん冷房などないことを考えると、この蔵で毎日作業されている岩尾さんの体力に尊敬の念しか湧いてきません。

ハイリスクハイリターンの北前船ビジネス!

醤油や味噌といった醸造蔵は地域の歴史を伝えるタイムカプセル。岩尾醸造さんも初代は魚の売買や船での運搬の仕事をされていたのが、事業を安定させるために醸造の仕事を始めたそう。その頃はもっと海沿いで醸造をされていたようです。
越前海岸にある醸造蔵はもともと海運関連のお仕事をしていた歴史のところが多く、ハイリスクな北前船と比較的安定した商売である醸造は相性が良かったことがうかがえますね。

お土産にはミニサイズもあります。
美味しい!かわいい!使いやすい!


貴重な文化遺産とも言える木桶を使ったお醤油。全体の醤油生産量に占める割合は1%以下とも言われています。ヅケにぴったりなほんのり甘めのコクがあるお醤油。旅が終わっても楽しい時間が味わえます。

こちらから通販も可能です。
毎日の食卓に越前の風を!


我らが巽先生、なんだか遠近感が笑

カニだけじゃない、越前海岸。海も歴史も食べ物も満喫させていただけました。8月は敦賀市にお邪魔します。


現在準備中のオンライン料理教室に必要な照明などの機器購入にに当てさせていただきます! 購入後のレポートもお楽しみに!