見出し画像

子供の頃よく行っていた水族館に、10年ぶりくらいに行った話。

世は三連休に浮き足立つ、この時分(終わった夜更けにこれを書いているわけだが)僕は、ちょうど三連休が空けると大学が始まることもあり、ふと思いついて、水族館に行くことにした。

子供の頃はとにかくその場所が好きで、親に毎週のようにせがんで、近くはない(車で40分くらいかな)水族館に連れてきてもらっていた。

クリスマスもそこで過ごしていたくらいだ。クリスマスになると、画像の大水槽にサンタが泳ぐのだ。今考えると、酸素ボンベを背負ったサンタは非常にシュールだが、子供心には凄くワクワクしたのを覚えている。

もう、車にも乗れるようになってしまったが、なんとなく電車とバスを乗り継いで、水族館へ向かった。乗り合わせが悪くて、1時間くらいかかったが、別に気になりはしなかった。

いざ着いてみると、懐かしの門構えが僕を出迎えてくれた。やはり10年も経つと、寂れたような、元々こんなもんだったような、タイムスリップしたかのような、妙な気分になった。

元々、そんなに大きな水族館ではない。しかし、僕が住む街では唯一の水族館だから、それなりに賑わっている。

まず、ハッとしたのは、僕にチケット料金が必要ということだった。この水族館は、高校生以下は無料で入れるので、お金を払うなど、子供の頃は考えたこともなかった。

なんだか、チケット売り場の受け取り口の下の部分に貼ってあるポスターの高さだった目線が、受付に座るおばさんを見下ろせるまで伸びたことが、ここにいると悲しかった。

いざ、館内に入ると、まず少し顔を顰めてしまった。磯臭いのだ。子供の頃に感じた「あ、ここの匂いだ」という記憶の中のものよりも、随分強く感じた。時勢的にマスクをしているのにそう感じたなら、かなりだと思う。実際には、元々こんなもんで、忘れてしまっているのか、それとも、実際に海の生物達や海水の匂いの染み付きが濃くなったのかは、もう僕には確かめようがない。

匂いを気にして、マスクの位置を意味もなく正すと、直ぐにメインの大水槽の前に出る。その前に、明らかに10年前はなかった液晶製の「マスクをつけてください」だの「写真撮影OKです」などの注意提示があって、その下に水族館のインスタのQRまであったもんだから、苦笑いを浮かべてしまった。どこもかしこも、時代の波には乗っていかないといけないらしい。

大水槽の前に立ち、思い出すのは、今でも覚えているお気に入りの魚の存在だった。その魚は、変なやつで、広い水槽の左端の岩場でずーっとこちらを向いているのだ。

引っ越してきたばかりで、友達が少なかった子供の頃の僕には、それがなんだか話しかけてくれているようで、その魚にずっと語り掛けていたのを覚えている。

すっと、左端に足を運んで、立ち止まるけれど、姿はない。一応、大水槽に一通り目を凝らしてみても、どこにもそいつはいなかった。

当たり前だ。10年経っているのだ。いるはずも無い。けれど、無性に悲しかった。悲しんだところで、なんの意味もないけど、悲しかった。10年足を運ばなかったやつが何をと言われるかもしれないが。

それから展示をぐるっと見て回った。この時の僕は、三連休の初日だというのを忘れていたので、平日だというのに走り回る子どもに苦笑しているような親子連れが多いのに首を傾げていたけれど、子供なんて水族館に来て騒がないわけが無いと、微笑ましく共生の気持ちを持ちながら、館内を歩いた。懐かしく綺麗なクラゲに、地元の海の生物。ナマコを触れたコーナーがコロナのせいか封鎖されていたり、そんなことはあったけれど、概ね記憶通りの館内だった。

うまく撮れた気がしたクラゲ達

ぐるっと一周して、大水槽の前に戻って、置かれた1人用ソファに腰かけて、ぼんやり水槽を眺める。サンタが泳いでいた水槽である。

ぼんやりと当時のことを思い出すと、この大水槽の前に泊まったこともあったのだ。泊まりツアーみたいなものが年に一回存在して(今もあるのかは分からない)餌やりを体験してみたり、大水槽の前に布団を敷いて眠ったり。こっそりと、深夜にこっそり眠る大人の群れから抜け出して見て回った水槽の美しさは、今でも覚えている。

走り回って転ける子供を見て、こんな時があったと思う。世界の理解度が足りない子供の時に、見えなかったものがよく見えるようになった今、それは幸せなことなのだろうか。

水族館の前の大きな道路に即した場所にある、ラブホテルを見て「お城がある!行ってみたい!」といって、両親が微妙な顔をしていた理由を理解した今と、子供の頃に見た水槽の美しさだけは、変わっていないと信じたいと、それだけは強く思った。

何が言いたいんだっけ。たまには、子供の頃に好きだったこととかしたら楽しいよ?って話だ。皆でドッチボールとか、ファイアトルネードの練習とか、もう一回しようぜ。

ま、こんなこと言っても、今から寝て起きたら眠い目擦って退屈な大学の授業受けてんだけどね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?