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アウターワールドDLC2感想文

エリダノスの話をしよう

1)エリダノス殺人事件とは

宇宙トンデモディストピア救済RPGことアウターワールドのDLC第2弾、著名な女優:ハルシオン・ヘレンが何者かにより殺害された。その殺人事件の解決をなぜか引き受けることになった宇宙の便利屋こと主人公。寄生虫の脅威がチラつくリゾート施設にて、この難事件を解決しろ!

▲だいたいこれを見れば分かる 面白そうすぎるPV(Twitterのプロモーションでこれが流れてきて「たのしそう!」の勢いでDLCセットを購入した)

2)注意点

推理ゲームだと思って挑むと肩透かしを食らうのでそれだけは本当に注意。
購入前に「どのくらい気合入れて挑めばいいのか」を掴むため 軽く下調べをした結果「ちょっとボリューム増やせばこれ一本で推理ゲーム作れるレベル」という偽報に釣られ、メモを取りながら挑み……いろいろが徒労に終わった。
この前評判がなければ「アウターワールドらしい斜に構えた探偵ごっこ」として素直に受け止めたと思うので、ミステリとしては期待するな!が楽しむコツ。

ミステリっぽいことをやるパロディ作品として見るとミステリのお約束をバカにしていて面白い、マジで。あとロケーションが綺麗で楽しい。

※※※以下本編の楽しみを損なうネタバレを含むためご注意ください

3)こんな推理モノがあるか!

真面目にミステリ作品と向き合ったのは久々だったので、自分の推理のラインを記録しておこうと思う。
…の前に、エリダノスの推理ゲームとしてダメダメな部分について軽く紹介したい
(アウタワ的には魅力だと思っている、「このゲームに推理要素とか期待してるの?」みたいな嘲笑が聞こえるし、意味わからん褒め方するファンに騙されただけでアウタワは こういう定石を逆手にとってバカにしてくるゲームなので)

①PVで「誰もが容疑者」の歌詞とともにNPCを含む5人の人物の顔が映されるが、うち4人はそもそも犯人として指名できない
→いきなりヤバい。このPVのせいでホテルマンを筆頭に、全NPCを疑ってかかっていたのでマジで最悪だったし犯人あてパートで唖然とした

②シナリオを進めるほど容疑者が消去法で消えていく
→これが伝わるのか分からないが「ふしぎ刑事」を思い出す、推理のいらない展開だった(犯人?の存在もめちゃくちゃふしぎ刑事的)(令和のふしぎ刑事と呼んでいるが、マイナーゲー×マイナーゲーなので誰にも伝わらなそう)(ふしぎ刑事のネタバレに配慮しているふわっとした記述)

③メタ推理だと「こいつしかいない」犯人
→すべてのNPCを殺害できるゲームなので、物語が詰まないように犯人は殺せない人物になってる…と思うと一瞬でこいつだ…と分かってしまうし、案の定終盤の主要人物は殺害できない2名になる
(オープンワールドミステリの定番ネタとしてありそう、とりあえず殴ってみて不死属性付いてたから犯人!みたいな)

④推理パートでは主人公が疑問点を挙げるが、解決パートで犯人に対し答え合わせができない
→疑問点は解消しないか、納得のいかないその場で生えたような設定で誤魔化される。ただ冷製に考えると科学技術の発達した社会でミステリをやるのがそもそも無理があるのかもしれない(主人公とかホログラムで完璧な変装が出来るわけだし)

⑤ノックスの十戒破戒録【突如現れるヘレンの双子】
→一応これは「見た目より大食い」「別人のようになる時がある」「ヘレンの部屋にあらゆるアイテムがセットで存在する」などちゃんと構成的には伏線があるのがいやらしいところ(実際私もヘレンもう一人いる説を推理に組み込んでたけど、顔が全く同じの双子はアンフェアすぎるだろと思った)。
ただアウタワのことなので 敢えて十戒を破りまくってミステリファンを不快にさせてやるぜ!が狙いの可能性もあるな、とこの記事を書くためにノックス十戒を眺めて思った。
(個人的にはノックス十戒に縛られすぎて 手当り次第に暴れるミスオタも嫌いなので何とも)

要人を殺しても、スピークチャレンジでいくらでも誤魔化せる世界観で殺人事件を取り扱うのはシュールギャグだし、あの世界観なら他殺に見せかけるのは犯人に仕立て上げたい相手に不利益を被せたい場合のみで、クリーチャーによる殺害に見せかけるなり、死体は宇宙空間に投げ捨てるなりする計画立てた方がよさそうだよな、と思う。

「役を奪おうと、殺すまではいかなくとも毒を盛ったスペンサー」「癇癪を起して彼女の頭部を殴ってしまったホルコム」「加害の意志で麻薬を嗅がせた上、死んだと誤認し遺棄した預言者」など、真犯人以外の人物が一歩間違えば犯人だろみたいな加害をヘレンに与えていたのがめちゃくちゃ新鮮で面白かった。
真犯人はルドヴィコだけどトドメ刺さなかっただけでお前らさあ…みたいな、放置しててもいつか殺されていそう、ヘレン。

あとそもそも何で主人公なんかに探偵の依頼が舞い込んだか?の答えが「バカに事件を誤認させて適当な犯人をでっち上げさせるため」なのは、構成が上手いな…と感心した。
十戒の件といい、かなり意識的にミステリを茶化していると思う。マジで、他の何を信じてもいいけどこれを良作ミステリとして勧めてくる奴だけは信じるな(説得150)

出てくる数字はとにかくクソバカ

こういうところからも「真面目に推理させるゲーム作るわけないじゃ〜ん」みたいな気概を感じる

4)名探偵 皆を集めて「さて」と言い

せっかくなので私の当時の推理メモを整理して残す、こんなにいろいろ考えてたのに全部無駄だったんだ…と笑い飛ばしてほしい

【メイン武器】
①ダイイングメッセージは偽装
②ダイイングメッセージが指す人間は白寄り、ダイイングメッセージの話題を積極的に出す人間は黒寄り

ヘレンの手元に残された「B」の文字は(そもそもダイイングメッセージは疑うのが定石だが)書き順が一般的なものと異なっている。わざわざそう受け取れるカットを挟んだということは、「ヘレンはこういう書き順で書く」と判断するよりは「このダイイングメッセージは死後作られた偽装メッセージ」と捉えるのが普通
→ということはダイイングメッセージが指す人物は、真犯人が犯人として仕立て上げたいダミーの人物である(バーディー・ホルコム)
→これで怪しいのがスペンサーだった(主人公がダイイングメッセージの話題を出す前にダイイングメッセージに触れる/この情報、どのラインまで知れているのか全く分からんが…)

【ヘレンは2人いる】
ハゲのところで聞けるヘレンの行動や、ヘレンの映画での活躍を模した犯行などから「2人目のヘレン」が見えてくる(あるいは後者は「熱心なヘレンファンorアンチ」の行動に見える)
→ただそんな存在が急に出てくるのがあまりにアンフェアなので、何がヘレンなら納得するか…と考えた結果、「顔が隠れている女性」「ヘレン(?)の死体に加工をすることが可能」「事件の極秘情報までアクセスできる」と、都合のいい設定で固められたグッドナイト医師だった
手ごろな女性を殺害しそれをヘレンとして診断するとか、仮死状態を経た上で協力者である検死官となり替わって手ごろな死体を用意するとか、ヘレンは死んだものという前提でヘレンが動いていることに理由を付けるなら適任だろう。
また主人公が見舞われるヘレンを模した人物(?)からの接触は明らかに主人公を監視している向きがあるため、主人公の行動を把握できる人物=スキャニングマシン(グッドナイト医師から貰える)に探知機が付けられている可能性等を考える
→グッドナイト医師もヘレンも犯人指定できなくて終わった

自分の思っていた「ヘレンが2人いる」を成立させるキーはグッドナイト医師だったんだけど、そういうギミック一切なく普通にヘレンが2人いたな…

5)ここが好きだよエリダノス

マップがめちゃくちゃ分かりやすい(移動は単調で面倒くさい)

リゾート施設らしく、ホテルを中心としてエリア分けがとてもしっかりしているので非常に遊びやすい

明るく見た目が楽しいロケーションが多く、探索していて飽きない

特に本編からリッツォのセンスが大好きだったので、リッツォまわりの施設やアイテムの美しさにはテンション上がった「リッツォのファンでよかったー!!」

リッツォ、さいこー!

スペクトラム武器もめっちゃいい(サーストザッパーのコーラカスタム!)

ひたすらターミナルを読まされたゴルゴンとは一転して会話メイン、推理のために真面目な選択肢を選ぶのも、興味の赴くままに皮肉選択肢を選ぶのも楽しい

正直人の命がバンバン奪われている世界で、大女優とはいえたかが一人殺されたくらいで~みたいなところはあるので、こんな状況なのにも関わらず割とコンパニオンに緊張感無くて明るいのがいい

好きだった皮肉会話
ヘレンが死んだので傷心の元恋人ホルコムに交際を申し込もうかな!とい女性に対して「デートで(ヘレンが主演の映画)を観るのはどう?」と提案するやつ
NPCの「ラプティドンのエロ本が存在するなんて知らなかったな」もエリダノスかな、センスがめちゃくちゃ好き(個人的にはマンティクイーン!であってほしい)

怖い刑事と優しい刑事の選択肢も好きだった。この時はホルコムを詰問するためフィリックスを連れてたけど「こいつには無理だろ…」と思いながらエリーに頼んだ。仲間が会話に絡んでくるのは 楽しい!

6)納得のいかないリッツォの顛末

・ハルシオンを救う方法の一環として、寄生虫漬けの酒の流通を目論む一方で、リッツォを嗅ぎ回るヘレンの殺害を目論むルドヴィコ
・寄生虫バラマキ計画に気付くも妹を殺され リッツォの裏を暴く過程で殺人を犯したヘレン
この2人のどちらにつく?という選択肢はフィニアスと評議会どっちにつく?くらい悩む価値が無いというか、ルーにつく可能性ある?

「でも倫理的にヘレンがやった殺人は過剰だよね~」で誤魔化せるもんじゃないだろルーの所業は
ルー、これが悪人としての振舞いではなく、ハルシオンの未来を考えた結果なのがまた救いようがないバカで最悪

アウタワは選択を迫られる場面が多いが、両者の言い分に納得でき妥協点を探れるものと、こんなしょうもない分岐作る意味ある?みたいなものとの差が激しすぎる(これでヘレンとルーの協力ルートがあったら本当にごめん)(そんなもんがあったら笑う)。

というわけで普通にヘレンルートを完遂した感想が
・ラスボス戦が大型クリーチャーなのはいいと思う、バトルステージの構成も相まって別ゲーのようだった/撃破後に気付いたがハッキングでダメージ与えられるのもなんかバカゲーで好き
・白骨死体にルドヴィコと書かれていたのには笑った(そんな一瞬で白骨死体になるわけないだろ!)
・ホルコム(ヘレンの妹と交際していた)とヘレンが試しに交際してみて、そして双子ではあるが別人であることを意識して別れた、というエピローグがなんか好き。双子の人格尊重
・リッツォが落ちぶれたことが明記され、なぜ他の企業はやらかしてもノーダメージなのに私が大好きなリッツォだけこんな目にあわなければならないんだ…?という怒りに支配される

そんなわけねーだろ!!

というわけで分岐から再挑戦、今度はルーの所業を茶化しながらもルーの見方をすることを表明(なんかエリーがダウナーな肯定コメント返していて笑った)し、ヘレンを始末する。そうして迎えた最終盤
ルドヴィコはヘレンルートとまったく同じ流れで寄生虫の母に食われた。何でだよ…

ここまでいいところがないのか?というくらい選ぶ価値が無いルドヴィコルート
選んだ瞬間ほとんどのサブクエが失敗扱いになり、ほとんどのエリダノスの住人から攻撃される対象になり、エリダノスは滅茶苦茶になる。
その上ルーと一緒に寄生虫による支配のトップに座れるなんてこともなく、普通にルーは見たことある死に方をする。エピローグでリッツォは凋落する(これ評議会ルートなら権威を保てるのかな…)。
ちなみに寄生虫エンドはみんながスマイルしててちょっとおもしろい(ホルコムのテキストが好き)。

リッツォ、さいこー!!

本編中からリッツォが好きだった PVを見てリッツォが舞台だ!とワクワクした…なんでリッツォファンだけがこんな目に合わないといけないんだよ!何でルドヴィコと一緒に寄生虫でハルシオンを支配することができないんだよ!!(ルーの目標が支配ではなくて労働力の向上だからかな…)

こんなに こんなに最高なのに…

なぜこんなにリッツォは報われないのか、リッツォを好きになることはそれ自体が罪なのか?ルドヴィコルートを選ぶメリットはないのか!?の答えは「宇宙船の自室に寄生虫幼体が居つく」

ちょっとおもしろい



おわり

7)細々とした話

首から生える寄生虫と、寄生虫の影響で模られるイカレスマイルのインパクトは不気味すぎて最強!

寄生虫が例によって本編のマンティス幼体の使いまわしなので(というかマンティス別カラーもいた?)、寄生虫の母の羽化について考えてしまう

サブクエの一環「A2号室の鍵」が見つからない、ホテルマンの発言から本当に隅々探した際に見つけられるのか…?と迷路に潜り込んだりエリダノスの隅々を探した(これ自体は楽しかった)
自分のプレイ時期がモンハンの発売と被っており、Twitterで「モンハンは疑問点呟くだけで攻略法がリプライされる」みたいな事を言われていたが、こちとら「A2号室の鍵」をTwitterで調べても「どこ?」みたいな情報しか出てこないので そのギャップで笑ってた
攻略サイトにも載っていない、海外の情報サイトでもヒットしてこない、ただ今のタイミングで調べたら解法が攻略サイトに載っていたが、これやってなかった?現地はめちゃくちゃ調べてたはずだけど…

諸々の理由から「ミステリファンの遊ぶエリダノス実況」を見たくて仕方ない …いるのか?日本のミスオタ兼アウタワファン…

8)グッドナイト医師とかいう女

(エリーに見ていたこの世界で一番自由で無軌道な女の幻覚最終段階)
この人が検死医になった理由や、小気味いい不謹慎トークがめちゃくちゃ面白かった。好き。

元々はビザンチウムで医者をやっていたが、ビザンチウムの管理体制(ガーゼ1枚申請するのにも面倒な手順を踏まなければならない/はこの人談だったかエリー談だったか忘れた)に嫌気が差して検死医に転向
検死医ライフをとってもエンジョイしてます!!みたいな楽しく仕事しているのが伝わってくるところが好き、ターミナルのテキストまで楽しそうだから凄いよ。劣悪な労働環境が支配するのアウタワ世界で、前向きに仕事に取り組んでいる人は希少

はねっかえりで自分の出自すべて捨てたエリーと比べて、医者の立場に身を置きつつも開き直って自分の居場所を居ついているグッドナイト医師の方が器用だな…と思った

「人体って血みどろの摩訶不思議と血管の歓喜の宝庫だから」
「検死に転向したら患者がうるさくないのでサイコー!」
「検死中はただでさえ食欲をそそられるのに食べ物の話してるから集中できなくて」
とヤバい発言がポンポン出てくるあたり、大好き
(最後のは「死体見てるときに食べ物の話するんじゃねえ」を皮肉で釘刺した可能性もあるけど、他の発言見る限りマジで検死中に「肉じゃん!おなかすくー!」って思ってそうなので好き)(まあ…制作会社が制作会社だし…)
この人有能なのがまたいいよなあ、と思う。エリダノスで間違いなく一番すきな登場人物です。というか、他がクセありすぎる。

そんな感じ
エリダノス、本当に楽しかった…。

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