見出し画像

(ゲームレビュー)「OMORIはそんなに怖くないのでホラーが苦手でも楽しめる」は詐欺

6/17にめでたくニンテンドーSwitch版が発売となったホラーRPG、OMORI(オモリ)。存在は知っていたもののゲーム情報を仕入れたりは一切していなかったが、丁度6/17に「週末徹夜でゲームがしたい」という欲求が湧き、その時丁度一番ホットなゲームだったので購入した。Steam版で。

絶対にSwitch版を買った方がいい

この風格

GWに遊んだOneShotなどは正直「Steamで遊べる環境があるなら絶対にSteam版を買え」と言いたい、ゲームハードがゲームの魅力を補強する作品だが、OMORIの面白さはハードに依存しない。なのでSteam版のメリットはあまりない。

Switch版を買った方がいい理由として
・追加要素がある
→好きになった仲間キャラがボス化するイベントが追加されてることを後から知った
・スクショや共有が楽
・特にセールで安くなったりはしていない
→Switch版買わせたいのだから当然である
などが挙げられる。

私は自分のミスによりデータを一度ぶっ飛ばしてしまった。ゲームプレイ中にHDDとのコネクタに足を引っかけるバカにSteam版は向いてないので絶対にSwitch版を買った方がいいが、あたまのいいひとはそもそもSwitch版発売に合わせてSteam版など買わないので杞憂である。
賢者ならSwitch版を選べ。

(それでも愚者の道を選ぶのであれば)
Steam版のメリットとして、結構実績の数が多く凝っているのでそれを楽しめる人にはいいと思う。まあ時限実績やら択一実績が多くてムカつくので一長一短なんだけど。

思っていたゲームと違う

おもり

パッケージを見てまず感じるのは「心理ストレスを題材にしたぼんやり怖いホラーなのかな?」という感触。実際私は精神的に重たいアドベンチャーゲームをサクッと遊ぶつもりで購入した。
実態は割とがっつりRPGだし、ホラー要素は結構直球だった。

レビューで「OMORIはそんなに怖くないのでホラーが苦手でも遊べるよ!」といった趣旨の文句を見たことがあるが、ホラー苦手ならやらない方がいいくらいには怖い。

PVもがっつりホラー要素を意識している
ドットゲーなのにリアル調の人間の身体を歪めた画像が出てくるし、ジャンプスケアめいたものもある。不意打ちやランダムのギミックも存在する。そういったホラー演出は特殊なルートでのみ出てくるものではない。全ルートに必ず挿入される。怖い!
「SAWはもはやギャグだから怖いのが苦手な人でも楽しめるホラー映画だよ!」みたいな発言くらい信用しない方がいい。

ではホラーゲームとしてはどうか。

かわいい

このゲームのプレイ時間の大半を担うのは、MOTHERやアンダーテールをリスペクトした、ポップでぬるいコメディで優しく可愛くヘンテコなRPGパートだ。
こういった系統のインディーゲームは市場にありふれているので、プレイヤーも「ああ…こういう系ね」と肌感で分かるだろうが、やっててだんだんと「ボリュームが思っていたより大きい」ことに気付く。ホラーRPGって聞いたんだけどまあいいかとぼんやりRPG部分を遊んでいるが、いつまでもセーブ画面に「プロローグ」と表示され続ける。いつまでプロローグやらされるの???

私はアンダーテールのよさ、勧めやすさ、遊びやすさの一因として「1周のプレイ時間がサックリしている(初見8時間程度?)」ことを挙げている。アンテはいつでもオススメ。
OMORIはこの手のRPGとしては異例の大ボリュームを誇る。1周25~30時間くらいが目安。大まかなルート分岐がプロローグ直後であるため両ルート遊ぶと50時間くらいになると思う。
そしてその大部分がホラー要素とは程遠い、上記のRPGパートなので、ホラー要素を期待するなら別のゲームを遊んだほうがいい。

このパッケージに惹かれて買った人が1周30時間を覚悟するか?

ストーリーラインも「行方不明になった友人を場当たり的に探す中で主人公のトラウマや過去の事件が判明していく」の一本のみという漢気全開のスタイルで、正直30時間を牽引できる内容ではない。
この「場当たり的」が本当に「場当たり的」で、「〇〇の方角に友達の靴が落ちていた」「××地方に名探偵がいるらしい!」とかもない。マジで適当に探しているだけ。思い切りがよすぎて逆に感動する。

どういうゲームか分かればおもしろい

スペース元カレとは一体なんなのか?にこにことは何か?

OMORIはつまらないゲームなのか?と言われれば「それは違う」と主張したい。

人を選ぶ歪な構造のゲームだが、その歪さは「やりたいこと全部詰め込みました!!!!」という、プレイヤーの方向性を検討せずに引き算を極力抑えた故にできたものではないか?と思う。
そして遊んでいてひしひし伝わってくるその情熱は好ましい。

実際【MOTHERやアンダーテール系統のRPG】としてはかなり高水準の仕上がりである。

豊富な隠しボス

地球を倒せ!

充実のアイテム種類・モンスター図鑑
特にモンスター図鑑は主人公+αによるコメントが添えられており、読んでいて楽しい仕上がりになっている。モンスター種類も多いし変なデザインでいい。グラフィック差分も多い(後述の「感情」により変化する)。
装備アイテムの種類がめちゃくちゃ多彩なのもいい(クエストの報酬が大体装備品)。

キャラクターを活かしたフィールドアクション
先頭キャラクター4人にそれぞれ応じたアクションが設定されており、フィールドのギミックを解いていく。
またキャラクター入れ替え時にはその入れかえキャラ2人を撮影したチェキが表示される。これがとてもかわいい。
A→Bの交代とB→Aの交代は違う画像が用意されており つまり16種類ある。かわいい。

やる気(バトルポイント的なもの)消費で使える「畳みかけ」技が強力
「畳みかけ」ではパーティの資産はまったく消耗しないため、稼ぎ作業をストレスなく行える。例として「全体攻撃」や「ハート(HP)+ジュース(MP)回復」を通常攻撃の追加行動として行える。稼ぎ好きにはとてもたまらない。
というかHP・MP資産の回復サイクルが非常に好み。アイテム以外でMP回復手段のあるゲーム、大好き。魔術師キャラの「HPを削ってMPを回復する」技がとてもお気に入り。
>強い単体の敵を檻から解き放ってしまい急遽連戦を強いられるシチュエーションがあって、そこで「いかにアイテム資産を使わずに安定して乗り切るか」考えて戦っていたのがこのゲームで一番楽しかった

感情による三竦み
怒り(攻撃力が上がり防御力が下がる諸刃状態)→悲しみ(ダメージの一部をMPが肩代わりする防御特化)→喜び(会心率が上がり命中率が下がる)→怒り…のそれぞれに特色のある三竦みが出来上がっている。
属性相性はRPGの定番だが、このゲームの戦闘の面白さは「相手に弱点属性を押し付けられる」ことにある。
ちなみに戦闘後の入手経験値は相手が「怒り」だと大きく、金は「喜び」だと大きく設定されており 稼ぎを視野に入れても戦略性に寄与している。
これによりプレイヤーごとに攻略の特色が出るのが面白いところ。私は相手にいらいらを押し付けて 鈍足戦士をにこにこアタッカーにするのが好き。

ダンジョンは可愛く、探索し甲斐もあり、RPG部分はかなり楽しい。
……ちなみにゲームの構成的に「RPGパート」には2種類を交互に遊ぶ後世になっており、前述の好きな要素はすべて片方のパートに集約されている。もう片方のパートを遊んでいる時は「RPGパートやりたいな…」と思いながらやってる!(切り替わりに前兆や確認がないのが悪いと思う)(目標設定が薄いゲームなので順路か寄り道か判断のつかないままパートが移行する)

・RPGを30時間やる覚悟がある
・ホラー描写に耐性がある
・キュートでコメディチックなのが好き
・それらの要素がバラバラになってても気にしない
人にオススメ!!つまり、かなり人を選ぶと思う。

ちなみに私は「鬱ホラーアドベンチャーを6時間程度で遊びたかった」ので何もかも違った。

あと公式サイトが凝ってるので見てほしい。

雑多なゲーム感想文

※以下ネタバレを含む既プレイヤー向けの感想





ナイスキャラ

「生きにくさを抱える人に捧げる」と標榜する作品は「生きにくさを抱える」人には寄り添ってくれない…みたいな話を思い出した。
主人公には4年間の引きこもりから引き上げてくれるケルという素晴らしい友人がいるが、多くの人間にケルのような都合のいい隣人は存在しない。
ひきこもりの過去を持っていたり、社会との断絶に苦しんでいる人は、よけいに「自分が助けてもらえることは無い」という絶望を受けると思う。

主人公・オーブリー・バジル、他不良連中の置かれている家庭環境からするとヒロケル兄弟は「この物語にいてはいけない」存在だとすら感じる。この2人が幼馴染だったら世の引きこもりの70%は解決するでしょと思う。

ハッピーホームデザイナー

実際そういう要素をどこまで本格的に作品に落とし込もうとしたのかが見えてこないので、製作者インタビューとか読みたいなと思った。
スイートハートの舞台での「キャラクターの死をコメディにする姿勢」が、自殺や引きこもりなどナイーブなテーマを扱うゲームとしては信じられない。一方で「オモリのRPGパートが一番楽しいように設計している」というのは、サニーの置かれている現実と妄想の立ち位置をうまくゲームの構成に反映させているな…と感じた。
(余談)ゲーム制作者の語りで好きなのがDDLCに対するサルバト氏で、ゲームを見ながら意図などを語る配信の書き起こしを読ませていただいた。
「喧嘩している女の子2人からどちらの肩を持つか詰められて、第三者の女の子に助けを求めるのが最適解になる」というシーンに「現実的には最悪の選択肢だ」と補足していたのが印象的だった。
既プレイ者で読んだことない方がいればぜひ。

とこしえにねむれ

スイートハートにフラれたスペース彼氏に対して、ヒロが「カセットテープを処分する」行動に出るのが、「恋人の自殺をきっかけに1年引きこもり、4年墓参りに行けなかった男の発想」でめちゃくちゃ好き。
ケルがテープを無理やりかけるのが、ヒロを救ったのがケルの行動であることと重なるのもいい。

大体分かる通りヒロが好きだが、この舞台だったら「優しくて万能だった兄の変わり果てた姿」を見たかった。ヒロが・・・でケルもバジル/オーブリー並みにダメージを受けている設定のOMORIが見たかった。この話収束する?

好きな畳みかけは
ケル→ヒロ
ヒロ→(任意)
オーブリー→ヒロで(ヒロ強火の方?)
ケル→ヒロは最速全体攻撃というだけで強いのに攻撃力ダウンのデバフを撒けるのが強すぎないか?と思うし(ヒロ→微笑む・ケル→通常攻撃で先手2段階下げられるの、強いよ)雑魚戦ではとにかく打ち得。
ヒロからの畳みかけは覚えやすいのがいい。ジュース回復が付いてくるのヤバすぎる。
私はにこにこオーブリーを酷使する戦略を軸にしていたのでオーブリー→ヒロには欲しい要素の全てが入っている。嬉しい。

この通りなのでラストリゾートでかなりやる気を失った

実績の話

体感0.8%

ペットロックにクソゲー!こんなクソゲーやる奴いるの??と文句を言っていたのに取得率6.5%なのが信じられなかった。
ウサちゃん駆除は6.2%…ペットロックの方が苦しくない?
スイハの映画がその上をいく5%だった。これは納得(まったく面白くないため)。
好きな実績嫌いな実績あるが、「わざと負ける実績」があるのは嫌だった。弱い相手に工夫してわざと負ける系でもなく、まあ勝っても負けても…な相手にこの実績がついてる 酷い

四季実績とか

これは冬が端なので何も考えないと冬になる+装備の有用性の反映もあると思うけど

スイートハートが自分と結婚するとか言い出した時一気に好感度が上がったが、ケルとオーブリーから即座に水を差されて笑った

クソガキ!!

自分との結婚はスイートハート様の場合最適解だと思う…。
ヒロくん、アメリカ人で15歳で170㎝はそんないうほどでも…じゃないか?

WTF値の存在を知って 初見でかけちがいの歌のFUN値イベントを引きトラウマになった身としては身構えたが、どうやら最小値だったっぽい。(初見は最小値固定?)

スペース元カレが好き。メンヘラで攻撃的な二重人格男、最高。3.5時間遊んだデータが飛んだ時、一時は「もう動画と攻略サイトでいいか」と思ったが、データ復活させて遊ぼうと思ったのはスぺ彼のおかげだ。
元旦那のボロ雑巾みたいな見た目も好き。
スペースボーイ船長の内面はあんな感じではなく、現実世界のスイハファンのエンジェル兄を見て「スぺボがこういう設定だったらおもしろいかも!」とサニーが感じたのか?と思うとけっこうおもしろい。
船長は元々ああいうキャラで、近所に船長っぽい喋り方するスイハのファンがいる!みたいな流れかもしれないが。

サニーパートの作りが、午前午後が分かれた上で時限連続イベントが多いこと、メインを進めると時間がどう進むのか不明なこと、戦闘の存在価値がないこと…あたりが肌に合わなかった。残り2日からは攻略を見ながらやったが、それでも1日目で取り逃していたイベントは進行不可になっている。毎日午前午後全施設を回る想定なのか?おつかいやバジルの救出などのタスクを抱えながら?
そんな中攻略情報に載っていないケルと墓地で話すイベントや、ケルとヒロの背比べを見れるとうれしい。

夢で切り刻んでたせいだ!

ただオモリとしてナイフを振り回していたのが、サニーになった瞬間「ヤバいサイコパス」扱いされる作劇は好き。あそこの不良の反応めっちゃ好き。
オモリパートの戦闘が楽しいからオモリパートだけやりたいな~とプレイヤーが思ってしまうのも、「自分の世界にこもる誘惑」とリンクしていると思う。

ボスラッシュなど、RPGとしてオモリパートが魅力的である一方 オモリパートにはホラー演出特盛でバッドエンドしかないのがな~と文句は言っているが、その意図は上手いと思う。その上でRPGパートが楽しすぎるのが話をややこしくしている。

「標準偏差を求めよ」をセンター試験ぶりに見た。私はベクトルから逃げるため独学でセンター統計を勉強した人間だけど、一般的にどうなんだ?実況動画のここまとめを見たい。

バジルとサニーが共犯者であること、日本のオタクは「一緒に死体を埋めた共犯者」という関係性が好きで、同じ秘密を共有する後ろ暗い強固な繋がりに魅力を感じるのか?と分析している。
ところで私は、あの時は強い絆で共犯者になったのに崩壊する関係が大好きで、この2人はそれだった。
バジルの理想としては、サニーのことが大好きで、サニーを助けることができると思ってマリの自殺を偽装し、その後辛いことがあってもサニーと支え合っていける想定だったのだろうが、サニーに梯子を外されてしまい破綻した感じ。

サニーとバジルにはそれぞれ複雑に思うところがあるものの、ヒロの思い悩みが単に「マリが自殺した」だけではなく「もしかしてマリの自殺は俺が原因なのでは?」によるものなのを思うと、許せねえ!と思う。

ところで殴打による死亡を自殺に偽装するのは無理があるため、親は全部分かった上で「娘の自殺」として処理したのかもしれない。
息子が娘を殺害したのと、娘が自殺するのではどちらがマシなのかな…みたいなことを考えてしまう。
自殺、かなり死体が・・・なので「なにか」が抽象的なマリなのはうわー!という感じ。

あのメンバー構成、マリが死んだらそりゃ崩壊するよな…と思った。特にオーブリーは繋がりが消えそう。
イジメは肯定されるべきではないが、オーブリー目線でバジルを敵視するのも仕方がないので、オーブリーのことは結構同情寄りで見ていた。
こういうこと考えていると「廃人になったヒロと人間が変わったケルを見たかった」がぶり返す。
アンテの派生みたいな感じで マリが生きててヒロが死んでるアナザーがありそう。

ヒロがパジャマ姿なの、現実世界で寝たきりなのか…?とか邪推しており、現実世界の彼を知った時にショックを受ける覚悟はしていたのにまったくそんなことはなかった。何のイメージ?

総括するとサニーが逃避する裏でバジルが自殺するエンディングが好きかもしれない。バジルの苦しみが「自責の念+祖母の死+サニーの引越し+イジメによる精神苦」と底知れないところが好き。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?